目覚め。
「…どこだここ?」
うっすらと目を開けると、目の前には瓦解した廃墟が見えた。天井に穴が空き、壁にはひびが入っている。どちらにせよ、この状態で雨風を凌ぐという本来の目的を達成することは不可能だろう。少し歩いてみようと思った瞬間、自分の体が自由に動かないことに気づいた。
「…手錠? 鎖? 拘束具か」
手と足に、本来なら奴隷が付けているような厳重な拘束具が嵌めてある。よく見ると、鎖や錠前には非常に細かい紋様のようなものが彫ってあり、まるで魔法陣のようだ。しかも、この拘束具は、周囲の崩壊した環境に不釣り合いなほどきれいだった。普通なら、天井が崩壊している時点で雨が入り、徐々に腐食されていくはずだ。ところが、腐食どころか埃をかぶっている様子もない。明らかに異常である。
…とにかく、できる範囲で情報収集をしよう。
周りを見渡す。すると、白骨死体があった。風や年月により、半分ほど風化して崩れ去っているが、頭部は人間のものだと判別できる。
「…なんで、廃墟に遺体が? 普通なら跡形もないはずだ」
ふと、疑問を口にしたところ、声が聞こえた。
《回答します。その人物の名前はレイス=ドワルゴーン。種族は人間族であり、ドワルゴーン男爵家の次男です。性格は温厚かつ深慮深いものです。総合的な身体能力はレベル18ですが、魔法技術はレベル50とかなり高いです。なお、得意属性は炎と岩で、風属性もレベル20程度ですが、習得しています。以上のことから、危険度は低いとみなします。その理由としては、身体能力の低さにあり、汎用性に欠けます。次に、貴族社会における彼の発言権及び影響力に関してですが……》
「ちょ、ちょっと待った! 少し待ってくれ…」
《…了解しました。必要最低限の機能を残し、スリープモードに移行します》
「いや、そこまではしなくていい…」
《……冷静になられたら、声をかけてください》
「あ、ありがとう…」
…今の声はなんだ? どこから聞こえてきた? …いや、そんなことより、もっと重要なことがある。それを質問してから考えよう。
「……え〜っと、聞こえるかな? 質問したいことがあるんだけど…」
《はい。なんでしょうか?》
「現状を把握したい。まず、ここはどこで、私は誰だ?」
《回答します。現在地は座標にしてX:3054000 Y:3000000 Z:1200000、正式名称は、全能なる覇の居城。あなたはその主にして、最高責任者。名前は……》
「…紅夜の女王、エクシア=レイ=アールデウス」
たぶん次も投稿する。