彷徨いの「僕」と、別世界の「何か」。
「ーーー、ーーーーーー。ーー ーーーー ー ーー......」
妹が、泣きながら僕に何かを言っている。でも、聞こえない。「大丈夫」って伝えたいのに、口が動かない。必死に口を動かそうとする。最後に、最期に、一言だけでも、伝えたいのだ。
「......ー、ーーー」
何とか、声を出せた、と思う。妹が、びっくりしたような反応をしたのがわかった。
「ーーーー、ーーー、ーーーーーー......」
必死に言葉を紡ぐ。そして、最期に、笑って......。
ーー気がついたら、僕は、ふわふわと浮いていた。
......何だこれ。
少し困惑ながら、辺りを見渡してみる。すると、「何か」がいることがわかった。どんなのかはわからない。でも、確かに「いる」。
「やあ」
......喋れるのか。
「君は、死んだ」
そんなことは知ってる。
「だから、異世界に生まれ変わらせてあげるよ」
どうしてそうなった。
「「君が、気に入ったからさ」」
いつの間にか、声が二つになっていた。
「「どんな困難があろうとも、君は逃げない。いや。僕らが逃げさせない。見事に試練を突破したら、ご褒美として、世界の理すらも凌駕する奇跡を、君に授けよう」」
......それは、僕を、生き返らせるのも可能なのか?
「「ふふふ。どんな奇跡なのかは、君しだい。破滅への道を進むのか、世界を照らす光となるのかは、すべては君の選択次第なのさ。楽しませてくれることを願っているよ。失望させないでくれよ......」」
言いたいことを言うと、「何かたち」はするりと消えてしまった。そして、ふわふわと浮いていたのがピタリと止まり、物凄い勢いで落下し始めた。
......ああ、拒否権なんてないんだな。
そう思った瞬間、パチンと言う音と共に、意識が途切れた。