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第9話 俺達とダンジョンの宝箱

「ロナ、後ろ見てみろ」

「……ん? あ、宝箱だ!」



 気づいてすぐに、ロナは子供のようにはしゃいでその宝箱へ駆けていった。宝箱の色は銀色。この色によって入ってる中身が決まるというが、銀色はどうだったか、俺は知らない。


 ただ、例のあの宝箱とは違うので、とりあえず俺の呪いを引き寄せる呪いの効果は発動しなかったようだ。



「開けていい?」

「ああ、いいぜ」

「開けるね!」



 俺もロナと同じ位置に着くと、ロナは目を輝かせながらそう聞いてきた。簡単に返事をしてやると同時に彼女はその箱の蓋を勢いよく開ける。


 中に入っていたのはロナの手のひらくらいの大きさがある六個程の研磨・加工済みの緑色の宝石と、一枚の羊皮紙の札。札はどう見ても例の『能力の札』だ。



「わぁ、綺麗!」

「君の方がきれ……」

「能力の札もあるよ⁉︎ これどうしよっか……って、ごめん、なんか言おうとした? 遮っちゃった」

「イヤ。俺も同じこと言おうとしてたトコ」

「そっか!」



 チッ、まあいい。今のは引いてしまった俺の負けだ。失敗したことは忘れようじゃないか。



「で、これどうする?」

「俺はただ敵を俺と互角にしただけ。頑張ったのはロナだ。だからそれは先にロナが確かめるといい」

「私はザンがしたことの方が大きいと思うけどな。でもザンがそういうならお言葉に甘えて」



 ロナは『能力の札』を自分の額に当てた。しばらくしてから少しだけ首を横に振ると、その札を俺に渡してくる。


 昨日、俺が『強制互角』を手に入れた後、札の紋様は消え去った。しかし今ロナが渡してきたものは消えていない。どうやら取得しなかったようだ。



「これは商人に適性があるザンが持ってた方がいいよ」

「そうなの?」

「そうなの」

「わかった」



 ロナから渡された札を俺の額につける。はっ……⁉︎ 美少女の額につけたものを俺が⁉︎  これは間接……なんていうんだろう。とにかく何かやましいことしてる気分になった……!


 若干の無意味な罪悪感に苛まれながら、俺は自分の頭の中に浮かんできた文字と向き合う。



<能力の札・・・『宝具理解』>


-----

『宝具理解』


 視界に入っている対象が宝具であった場合、その価値と利用方法を知ることができる。この能力はこの能力を強く意識することで発動することができる。

-----


<この能力を習得しますか?>



 本来、いい目を待っている商人だったら宝具に限らずなんでも調べることができるため、この能力はそれら腕利きの商人の目より劣っているといえる。


 ロナの見立てだとボスはBランクだったらしいし、この程度のものしか出ないのもうなずける。しかしこれは有って損するものではない。特に俺は今後、パンドラの箱を開ける商売を始める可能性がまだ十分にあるんだ。宝具の中身を鑑定できたら便利だろう。



「確かに俺向きだな。お言葉に甘えて、俺が取得してもいいかな?」

「いいとも!」

「悪いな」



 俺は『宝具理解』を習得した。これだけ呪われていても戦闘に使わない能力ならまともに覚えられる。不幸中の幸いというべきだろうか。こんな俺でも少し成長できたのは嬉しい。



「よし、じゃあ帰ろう。さっさと石を換金して宿と飯を確保するんだ」

「宝箱と一緒に出てきた魔法陣に触れればあの木の手前に戻れると思う。……でもその前に一つ気になることがあるんだけど」

「ん? なに?」



 ロナが俺の鞄を指さした。



「その光ってる線、なに?」

「え? 光ってる?」



 鞄を背中から下ろして確認してみると、確かにその中から真横に向かって謎の紫色の光の線が出現していた。その光はこのボスの部屋の壁の一点に向かって放たれている。


 この光はどうやら、俺のパンドラの箱に入っていた物の一つ、手乗りサイズの狂った羅針盤が発しているようだった。その羅針盤を取り出して様子を見ると、いままで狂っていたはずの針が光と同じ方向をしっかりと向いているのが確認できた。



「怪しすぎるな……」

「それ持ってきてたんだ。大半の荷物は宿屋さんに預けたのに」

「ああ、戦いで使うものかもしれないし、一応宝具だろうから自分で管理しておこうと思って持ってきたんだ。まさかこうなるとは……」

「さっきの能力で調べてみようよ」

「それもそうだな」



 俺は謎の羅針盤を『宝具理解』を意識しながら眺めた。頭の中に能力などと同じような説明文が浮かんでくる。



-----

『秘宝の羅針盤 ラボス』<宝具>


 ダンジョンに隠された部屋や宝箱が存在していた場合、その場所を針と光で指し示す。

----



 なるほど。つまり、この光の先には隠された部屋か宝が確実にあるってことか。



「と、いうわけだ。どうする?」

「単にお宝ならいいけど、隠し部屋って大抵はダンジョンの真のボスが居て、かなり手強いらしいよ?」

「……ああ、本来ならな」

「うん、本来ならね! ザンがいるから大丈夫かも、行ってみようよ!」

「そうこなくては」



 というわけで、俺とロナは光が指すこのボスの部屋の壁に近寄った。そこには、土と岩でできた壁の色より、ほんの少しだけ濃い目の茶色で描かれた手のひらサイズの魔法陣があった。こんなの、普通にダンジョン攻略していたら気がつける訳がない。



「普通、隠し部屋ってこんなに簡単に見つかるものじゃないらしいんだけどね?」

「だろうな」

「ザンと居るとたくさん凄い体験できて楽しいね!」

「そ、そう? ふっふっふ……ま、俺だからな」



 急に褒められたからびっくりした。照れるじゃないか。いや、俺自身が褒められたわけじゃないのかもしれないけど。


 とりあえず、試しに茶色い魔法陣を手で押してみた。どうやら発動方法はそれで正解だったようで、いきなり、それも一瞬で目の前の壁が通路状にくり抜かれる。その通路の先には濃い紫色をした光の塊があった。


 こんな俺でも即座に理解した。理解せざるを得なかった。その光に飛び込んだ先にとてつもなく強い何かがいることは。


 ……だが、気にする必要はない。そいつがどんなに強くても、どうせ俺と互角になるんだ。勇気を持ってこの光に飛び込むだけ。それだけでいい。

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