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第70話 俺達と展示された剣

「まずこの目の前の剣だが、土属性の術技やら魔法やらを極大アップする。で、さらに土属性の技に防御力が低下する効果を追加できるみたいだな。追加効果の効力は使った技の魔力次第だ」

「なるほどぉ……」



 ま、要するに、この「アルダンテ」とやらは土属性で攻撃すればするほど相手を(もろ)くできる特性を持つ剣ってことだ。

 なるほど、なるほど、これで五千万……か。

 参考に覚えておこう。



「じゃあ、これは!」



 満足できたのか、ロナは再びニコニコとした嬉しそうな表情に戻ると、俺の肩を優しく引っ張りながら「アルダンテ」の隣にあった薄い黄緑色の剣を指差した。

 

 ……ああ、いい。

 こういうボディタッチを含んで女の子からのねだられるっていうのは、とてもいい。

 


「あー。追い風の剣リョスキー、五千五百万ベルか。それは風属性を極大アップして、さらに風属性の技に使った魔力の一部が速度上昇の魔法として自分に返ってくるみたいだな」

「ふむふむ。……あ、あれ可愛い形だね! あれは?」

焔兎(えんと)の剣パイビット、四千五百万ベル。あれは火属性の極大強化に、この剣を使った火属性の技の射程距離を倍にするんだとさ」

「なら、それは……」

延刻(えんこく)の剣 ディレイン……三千万ベルか。お、これは中々良さそうだ。属性強化はないが、剣自体に術技を五回まで溜められて、溜めた術技は後で好きな時に撃てる効果がある」

「ほほぉ……!」

 


 それからも、俺はロナが気になった剣を次々と鑑定していった。


 静かにするという美術館のマナーこそ守っているが、今の彼女はまるで、玩具屋に来た子供みたいにワクワクし続けている。


 もしかしたらそのうち、食事の他に美術館での宝具観察が趣味として新しく増えるかもしれない。


 うん、その趣味は俺も大歓迎だ。俺が紳士的に活躍できるからな。

 レディに教えを請われ、かっこよく優しく教授する……そんな紳士らしいエスコートが存分にできるだろう。

 デートの口実も増えるってもんだぜ! ふっふっふ……。



「あっ、これ……!」

「どうした? ああ、これか!」



 十数本目にロナが立ち止まったその台座には、見覚えがある剣が飾られていた。

 淡い水色のシンプルな装飾、「四つ身の剣 フォルテット」だ。

 魔力を込めたら四つに分身する、あの。


 こうして自分達の持つ宝具が展示品として置かれていると、妙というか、くすぐったいというか、ヘンテコな気分になるな。



「値段は八百万ベルだって」

「八桁を切るのか、そうか……いまのところ最安値だな?」

「うん、こんな気はしてたけどなんかちょっと残念だね」

「ああ」



 さっき『光属性特大(・・)アップ、魔力を込めたら(あかり)になる』っていうランタンみたいな性能の剣があったが、それは九百万ベルだった。


 それに負けてるってのはなんか悲しいぜ……。

 まあ、大抵の武器系の宝具にある属性強化がない上に、肝心の効果もどう使ったらいいかわかりにくいもんな。


 俺らも元々あんまり使えない宝具だって認識だったし……これが妥当なんだろう。いや、まあ、八百万も十分高額なんだが。


 一応は心の中で、あの大物狩りと戦う際にそこそこ役に立ったというフォローをしておこう。



「あれ? 次もフォルテットみたいだよ」



 次の台座に目を向けたロナはそう言った。

 たしかに、今目の前にあるモノとほぼ同一のものが飾られている。



「これが安いのって、たくさん見つかるからってのもありうるな」

「うん、そだね」



 そんなことを言いながら、俺達は二本目のフォルテットの台座を通り過ぎようとした。同じならわざわざ見る必要はない。


 と、考えていたんだが……なんとも言えない違和感が俺に付き纏ってきた。思わず、少し過ぎたところで立ち止まってしまった。



「ど、どしたの?」

「いや……なんかおかしい」

「そなの……?」



 同じものが複数展示されているのはこいつだけじゃない。

 さっきも『水・氷属性超大アップ、水・氷属性の技の魔力軽減』って効果の千七百万ベルの剣が、そっくり二本あった。


 その剣の場合、二つの台座がくっつけるように並べておいてあったハズだ。ならばなぜ、このフォルテットは一つずつ離して置いてあるのだろうか?


 それに……こう、一本目や俺達が所持しているものより、二本目の方がツヤがあるというか、豪華に見えるというか、そんな気がしてならない。


 まあいい。ごちゃごちゃ考えないで名前と値段を見て仕舞うのがスマートだろう。

 俺は二本目のフォルテットらしき剣の前にきちんと立ち、ケースの中を眺めた。



 そして説明書きの札には、


 『四つ身の剣フォルテット 八千八百万ベル

【申し訳ありませんが、本展示品は本館サービスの鑑定・案内人では内容をお伝えすることができません】』


 ……と書かれていた。



 札の表現からしても、あからさまに普通の『フォルテット』とは扱いが違う……。値段なんて十一倍で、なんならここまで見てきた剣の中で最高額だ。


 やっぱり名前は同じだし、違和感はあれど見た目も一緒だが……一体なんなんだこれは。



「あれ、本当におかしかったね? 何が私達のと違うんだろ、これ……?」

「とりあえず鑑定してみるしかないよな」



 兎にも角にも、俺の脳に映った内容はこうなっていた。



-----

「四つ身の剣 フォルテット【??】」(宝具)


 魔力を40消費することで、所持者が解除するか一定時間が経つまで、この剣は四つに分裂する。



=??=


・閲覧不可

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