表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/133

第46話 紳士 vs. 大物狩り 前編

「つい昨日です。私がターゲットを()る準備をしていた時のこと。あの『リキオウ』を持ってノコノコと歩いている竜族の少女が目に入ったんですよね。そしてその隣に居たのが貴方だった」



 ロナは昨日、《大物狩り》が出ることを店主に教えてもらってからは、ずっとリキオウを外していた。今もそうだ。


 そして、俺と『リキオウ』を付けた彼女が並んで歩いていたタイミングといえば食事の前後だけ……。


 そういえばロナは、レストランから出た時「視線を感じる」と言っていたか。

 俺はそれを大食いした結果、目立ったからだろうと結論づけたが……その視線こそがコイツのものだったのかもしれない。



「そのあと、ややあって……なんと貴方は仕留める予定だったターゲットと話し始めたではありませんか! しかも、あまり人気のない場所、つまりここに元々手にかける予定だった人間全員を集めてくれるという! そして今日、あなた方は約束通りここに来た。しかも先程の『リキオウ』を持つ少女というオマケまで参加した。好機、好機ですよ! これを好機と言わずなんというのです! 神は私に、貴方というヤケに顔の広く都合のいい人間をお恵みをくださったのです!」



 勝手に盗み見して、勝手に盗み聞きして、勝手に襲ってきて、勝手に自己解釈してやがる。


 俺が居たこと。ただそれだけのことがこの盗人(ぬすっと)にチャンスをやってしまったことは事実のようだが、それに対してウダウダと反省し続けても意味はない。対応も予測もできるわけがないからな。

 

 ……俺がこの事態を招いた、それを自覚させることでコイツが見たかったのはこれだろうか?

 なら見せてやるよ、紳士の演技をな。



「お……俺が……⁉︎ 俺が……全部……ッ⁉︎」」

「違う、ザンくんは、悪く……ないっ……! うっ……」

「そ、そうなのですっ……!」

「わ、私も……わた……ハァハァ……私が勝手に……付いてきただけだからっ……ザンは……」

「おや、こんなにも女性に庇ってもらえるとは。羨ましいですね」



 うーん、それは俺もそう思う。紳士であるからこその人望だな。


 こうして味方すら騙すのは気が引けるが、そこはクールに割り切らなければ。



「ちが……おれが……俺が……っ……! そ、そうだ……おい、《大物狩り》……っ!」

「なんです?」

「う……こ、これを……みろ……」



 俺は『シューノ』から、『ハムン』と『バイルド』をついに取り出した。

 そして弓銃は相手に見せびらかすように持ち、盾は俺の手から離し、前に差し出すように放る。


 気分の悪いフリをしつつ取り出すのは難しかったが、これで自然な形で準備ができたことになるな。



「おや、いいですね。二つとも宝具! そしてその皮袋も。いえ、よく見たら帽子もですか。やはり貴方は神が与えてくださった使いなのでは……?」

「まだ……ある……」

「ほう?」

「……お、おま……マジかよ……」



 俺は空いた手で、『トレジア』『ラボス』『バイルトン』『フォルテット』『メディメス』そして未使用の札二枚を取り出し、『シューノ』もベルトから外して、それらを『バイルド』と同じように放った。



「お、おお! すごいですよ! 貴方、私の能力で見るにステージ星1つの雑魚でしょう? なのに、よくこんなにたくさんの宝具を隠し持ってましたねぇ! これを、私に……?」

「あ、あ。この、帽子も含めて……全部くれてやる。お、俺の……命も、だ。……だか、ら、頼む……他の……五人は……む、無傷で逃してやって……くれ!」



 俺は全身を苦しそうにプルプルさせながら、正座のような姿勢をとった。そして両手を上げる。



「だ、だめっ……ザン……! んぅ」

「ふざ、ける……なよっ! わ、我々のために、ど、どうして君が……!」

「オレ達……お、お前に迷惑かけて……なのに、なのに……なんでだよ……なんでお前は……」

「本物のお人好しなのでしょうね。あの時も、貴方は率先して少女を助けていた」

「その、通りだ。俺は、紳士で……。だ、だから。た、たの……むっ!」



 「頼む」の「む」に合わせて俺は身体を前に倒しつつ、ゆっくりと二回、タイミングをずらして『ハムン』の引き金を引いた。

 光の矢が《大物狩り》の顔面に向かって二発飛んでいく。



「……! なるほど、雑魚なりに考えた、詭弁からの不意打ちですか。よくやりますね、ステータスに差がありすぎて無意味ですが」



 奴は最初の一発目を短槍で弾いた。



「ん? 何か……なんです?」



 二発撃たれたのは見ていたはずだ。

 だが、その二発目は空中で俺が静止させた。


 《大物狩り》は数秒、その止まった一本を(いぶか)しげに注視する。

 これがジェントルマンのミスディレクション殺法ってな。ま、この数秒で俺のやりたかったことは全部済んだぜ。


 俺は『バイルト』を勢いよく飛ばした。

 飛ばされた丸盾は、《大物狩り》の足元を狙う。



「おおっと? いや、なぜ魔力が使え……だが、どちらにせよその私にその程度の威力は……ッたぁあァアアア⁉︎」



 ちなみにヒットさせたのは、向こう(ずね)だ。

 ローブで見えないから、背の高さからなんとなく割り出したが……当たったようだな、二つの意味で。


 ふっふっふ、これは痛いぜ!

 なんせ、俺だってそこに硬いものをぶつけられたら、涙目になるだろうからな。

 同じステータスになってるなら、尚更。



「おぁお……イッ……くぅあ……⁉︎」

「おっと、こりゃあ悪かった。わざわざジェントルに渡してやったつもりだったんだがな」

「な、なぜ? なにが……? 何を……?」

「さぁな。それより次こそはちゃんと受け取ってくれよ?」



 俺は止めていた光の矢を動かし、フードを狙う。

 《大物狩り》は混乱しながらも、咄嗟にそれを槍で再びガードした。ただ、その動きには残念ながら先程までの俊敏さはカケラもない。


 頭を防ぐ相手に対し、俺は光の矢を方向転換させ、いまだに生まれたてのシカの魔物のように震えて痛みを堪えている脚……そのふともも辺りを突き刺さした。



「ぐっ⁉︎」



 そして、これこそが本命。

 俺は『バイルトン』を巨大化させながら改めて顔面を狙って飛ばした。








いやぁ、申し訳ないです。

今日も投稿遅れました……。

出来立てほやほやのお話はいかがでしたか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ