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第28話 俺と彼女の大成長 前編

 ダンジョンから戻ってきた俺達は昼食をとりに海鮮レストランに入店していた。ランチタイムを少し過ぎてしまったため、人は少なめだ。


 ロナは席についてから、クリクリっとしたその黄色い宝石のような(まなこ)で、俺のことをジッと見つめている。



「……ほ、ほんとにいいの? お昼ご飯もお夕飯もごちそうしてくれるって……。なんで?」

「なに、ロナは今日たっぷり魔力使って疲れてるだろうからな。ジェントルに労ってやろうと思ったまでさ。素晴らしい宝具の獲得や、たくさん成長したことへのお祝いも兼ねてるぜ」

「そ、そっかぁ。なんか悪いなぁ……」

「なに、紳士からレディへのプレゼントだ。気にせずたっぷり食べてくれ」



 本当は今朝の半裸を見てしまったハプニングに対するお詫びなんだが、本人がもう気にしてないなら正直に言う必要は無いだろう。

 ……今だから紳士でなく一人の青年として思える、非ッ常に良いものを見た、と。



「じゃあ、ご厚意に甘えようかな! でも、今日はなんかいつもより食べれそうな気がするの、それでもだいじょうぶ?」

「ああ、ああ。微塵も遠慮する必要なんてないさ。お互いカツカツだった一昨日とは違うんだ。そうだ、あの時満足させきれなかったお詫びの意味も付け加えよう」

「ふふふ、わかった。ありがとう!」



 ……い、いつもより多い、か。予算は五万ベルくらいのつもりでいたがこの一食で十万ベルは使ってしまいそうな様子だな。だがいい、ロナのこの嬉しそうな笑顔だけで値千金だ。


 ロナはさっそく店員さんを捕まえ、メニュー表片手に大量の注文をしている。

 一昨日から見ている限りでは、彼女はメニューの中にあるものを片っ端から頼むのではなく、好きなものを何皿も、興味を持ったものを数皿試してみるという嗜み方をとっているようだ。


 今回、彼女が頼んだものは、魚介スープ三人前、魚介リゾット三人前、スリー・マーという魚の串焼き十本、ホーターシェルという貝のバター焼き八枚、ギガントサーモンの丸ごと釜焼き、ピーマンの魚肉詰一皿、ムルシェルという貝のトマト煮一皿、アクアキャンサーの酒蒸し一皿、キングトゥナという巨大魚の尾の肉の唐揚げ二皿。さらにこれでまだ足りなければ追加注文(おかわり)するつもりらしい。


 一方で俺は、パンとスープとギガントサーモンの切り身のフライ、数種のシェルのサラダだ。……それぞれ適量で。


 まず俺の分が全て届き、その後からロナの分が次から次へと運ばれてくる。

 店の中は、客や店員問わずかなり騒ぎになっており、『あんな大食い初めて見た』『あんな可愛らしい女の子が……?』といった戸惑いの声があちこちから聞こえる。


 思い返せば、一昨日、ロナと一緒になってから食事時は毎回周囲からこんな反応があった。今になって気になるようになったのは心に余裕が出てきたからか。……いや、このくらいで狼狽(うろた)えていたら紳士が廃る。精進しなければ。


 ちなみに、ロナは慣れてるのか、それともとにかく食事優先なのか、全然気にしていない。たくましいぜ。



「おいひい……おいひい……」

「ははは、よかったなぁ」



 なにより、この食べてる時の幸せそうな顔。この顔が今の俺にとって最大の癒しかもしれない。



「……あむっ! あむあむ、ごくん。はぁ……しあわせ♡」

「喉つっかえたり、骨が刺さったりしないようにな」

「ふんふん。……んぐ⁉︎」

「だ、大丈夫か⁉︎」



 言ってる側から喉に詰まったのだろうか。俺は立ち上がってロナの介抱をしようとした。……が、その直後に彼女は目をパチクリさせながらなぜか懐からカードを取り出した。どうやら喉じゃなくてステータスの方に何かあったようだ。


 そしてそれを見て驚愕したかのような表情を浮かべると、二度見し、首を傾げ、食器を置いて俺の方を見る。



「ごくん。な、なんかすごいことになっちゃった……」

「どうしたんだ、そんな驚いて」

「今、何故か新しい能力が手に入ったんだけど、それが手に入れた瞬間に一段階、二段回って一瞬で二つも進化したの」

「なに……?」

「ほら、これ。この『食魔補給・Ⅲ』ってやつなんだけど」



 たしかにステータスカードの表記には、その能力が現れていた。いや、そもそもこの一覧、全体的に一昨日見せてもらった時と比べまるで別人のもののようになっている。今増えた能力だけじゃなくて、その全体が気になるな……。よし、良い機会だ。



「そんなこともあるのか。……なぁ、ロナ。もし良かったらついでだ、食事している間に、ロナのステータスを二日ぶりに確認してもいいだろうか?」

「ん、わかった! どうぞ」

「レディ、お借りするぜ」


 

 ロナはそのままステータスカードを俺に手渡し、食事を再開した。俺は改めてロナの大きく変わったステータスカードを眺める。



-----

ロナ・ドシランテ

☆2 Lv.33

適正:剣士・武闘家・パラディン

<無所属/-ランク>

魔力量:365/365

攻撃:186 防御:139 速さ:93 魔力強度:46

魔法:[フレアータ][トルネーチ][ライト][ハドル]

 ◆:[ハドルオン=バイゼン]

術技:<魔力斬り><波動斬り><火炎斬><疾風斬・改>

   <風波斬><光白斬><光波斬>

 ◆:<月光風斬>

能力:『剣術・3』『武術・1』『風属性強化・Ⅰ』

   『風属性節約・Ⅰ』『食魔補給・Ⅲ』『魔貯蓄・Ⅰ』

   『嗅ぎ上手』『食料見分』

称号:【竜の血筋】【竜の誇り】【ジャイアントキリング】

   【攻略者】【究極魔法習得者】【究極術技習得者】

   【大食嬢】【究極大器晩成】

-----



 たった二日でこうも変わる人間も中々いないだろう。特にレベルなんて昨日星二つに成ったばかりなのに、もう33まで上がっている。

 具体的にどれほど変わったか頭の中で計算しようと思ったその時、何故かロナが俺の前で手のひらをヒラヒラさせ始めた。

 


「ん? どうしたんだ?」

「ね、ねぇザン。なんか、『魔貯蓄』っていうの増えてない?」

「ああ、あるぜ」

「そっか、やっぱり……それも今増えたんだよ」

「マジで? また増えたのか、すごいな」



 まさか俺が確認している最中にも能力が増えるとは。ロナは今、ステータスが成長期ってやつなのかもしれない。【究極大器晩成】がうまく働いているんだろう。



「どうしよ、なんか自分が怖くなって……こわくてお腹減ってきた。まだ全部届いてないけど追加注文いいかな……?」

「あ、ああ。好きなだけいいぜ、残さなきゃな」

「それだけは大丈夫!」



 そう言ってロナはまた一皿たいらげたあと、店員さんを呼んだ。 

 ……まあ、【食いしん坊】って称号だったものが【大食嬢】ってのに進化しているのも頷けるよな。

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