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第24話 俺達と猪のボス

 それから俺達は三つの部屋を通り、熱っした鉄のように真っ赤なパンクボア、鉄のパンクボアに乗っている武装した猪頭の小人群、最初からパンパンに膨らんでいて宙に浮いていたパンクボアを、ロナの新しい術技や魔法の実験台にしながら倒していった。

 

 ダンジョンには何かしらのテーマがあるのかもしれない。例えば昨日のダンジョンは骨と鳥系だった。そして今回は膨らむこと、猪、金属の三点だろうか。

 まあ、俺が片っ端からステータスを互角にしていってるから、それがわかったところで攻略に影響はないんだが。


 とにかくそうこうして、俺達は通常のボスの部屋にたどり着いたが……。



「……でっかいな」

「うん」



 そこに居たのは、全身真っ白で、毛一本一本に金属のような光沢が走り、身体中から電撃のようなものを発している一軒家ほどの大きさがある猪系の魔物。それが一体。牙の真っ直ぐさからして、おそらくまたパンクボアとやらの変異種だろう。



「プギィィイイイイ!」

「鳴き声もでかいな! 耳が張り裂けそうだぜ」

「Aランクくらいかな……?」

「ま、だとしても、もう弱くなってるはずだ」



 白い猪は今までのパンクボア達と同じく、身体を膨らませながら牙を飛ばそうときてきた。しかし、もちろん大したことは起こらない。大きな目がキョトンとなっている。



「風波斬!」

「プギョ⁉︎」



 その隙にロナはその場から攻撃をした。風と魔力でできた飛ぶ刃はその巨体に傷をつけた……が、皮膚がもとから頑丈なのか、身体が大きいが故かわからないが、初めて、一撃で倒すまでに至らなかった。



「むむ……」

「薄々わかってたが、身体がデカいと俺と互角にしてもその強みはある程度残っちまうな」

「効いてるだけマシだよ」

「フゴゴゴゴ……」



 白くて大きいパンクボアは牙を生やして膨らむのは諦めたのか、片前脚を地面にこすり、こちらに駆けてくるような素振りを見せた。

 ロナは慌てて俺を庇うように前に立ち、深く剣を構える。案の定、その白い巨体は突進してきた。



「疾風斬・改!」



 おそらく<月光風斬>を除いて今ロナが放てる一番火力の高い技を発動しながら、ロナは猪を迎え撃つ。

 一方で俺は彼女の邪魔にならぬよう少し離れ、いつでも光の矢で援護射撃できるよう準備をしておく。



「はあああああ!」

「プゴォ!」



 ロナは突進を真っ向からは受けず、猪と正面衝突する少し前に横にズレ、側面から疾風を纏った緑の刃を巨大な首元あたりへタックルするように突き立てた。

 あっけなく猪は横転し、しばらくビクビクと体を震わせた後、動きを止める。



「ふぅ……はぁ……よし!」

「クールだったぜ」



 特に何もしなかった俺はロナの元に駆け寄った。彼女は猪の首元に突き刺した剣を引き抜きながら、俺に微笑みかける。



「ふふ、ありがと!」



 にこりと笑うロナの頬や手の甲には焦げ跡が付いていた。あの猪は常に電撃を帯びていたため、接触した時に軽く火傷してしまったのだろう。


 昨日できた切り傷が竜族の自然治癒力によってかほとんど消えかかっているため、この火傷も明日には治り明後日には跡も無くなるだろうが……ジェントルな俺としては心が痛むほど気になる。

 気がつけば口が勝手に動いていた。



「あー……大丈夫か? その火傷」

「え? 火傷なんかしてる?」

「頬と手だ」

「んー……あ、ほんとだ。このくらいなんともないよ」

「まあ、そうだがな。ただ俺としてはロナのようなレディが……」

「む。そんなこと言ったって魔物と戦う以上怪我はするし、そもそも私は前衛をはるのが仕事だもん、ザンの力がなかったら本当はもっともっと傷を負ってるんだよ、気にしすぎだよ」

「……そうだな。心配しすぎた」

「でも、ありがとねっ」



 こうなる展開はわかっていたが、止められなかった。紳士はやっぱり難しいな、一筋縄じゃいかない。……いや、俺が足りないのは割り切るって考え方か。

 一人脳内で悶々としているところで、光の塊が視界に入ってくる。それは猪が元いた場所に集まって宝箱と出口を作り出した。



「……ロナ、宝箱が出てきたみたいだ。後ろに」

「ん? あ、ほんとだ! 今回は金色だね」



 俺とロナは宝箱に近寄った。ついでに道中で手に入れた銅の宝箱も隣にならべてみる。宝箱自体の大きさは一緒のようだ。というより、色が違うだけで刻まれてる模様も形も変わらない。昨日の銀の宝箱やパンドラの箱もそんな感じだったか。



「ここでなら開けても大丈夫かな」

「ああ、そうだな。……あっ」



 ここで、俺はあるものに気がついた。



「どしたの?」

「いや、羅針盤……『ラボス』がまた反応していてな」



 そう、羅針盤は再び床の一部に向かって光を差していたのだ。


 ……思えばその光の色がさっきの廊下の時とは違う。あの時は橙色で、今回は紫色だ。昨日のボスの時も今と同じ紫色だった気がするから、隠されてるモノの種類によって変わるのだろうか。


 『宝具理解』で見た時はそこまでわからなかったな。……ダンジョンの地図のバツ印の詳細も地図に直接書かれていたから把握できたが、能力内では詳しく説明はされなかったし、能力もやはり、完璧というわけではないか。



「ボスの部屋で光ったってことは、また隠し部屋かな? なら、宝箱の中身みた後で行こう」

「俺は良いが、疲れてないか?」

「全然!」



 なんとも頼もしい返事だ。とりあえず隠し部屋をちゃんと見つける前に、ロナの言う通り気になって仕方がないお宝の箱達を開けてしまうとしようか。

 

 銅の宝箱には何かの金属の円柱が三本だけ入っていた。それだけだ。心配していた罠のようなものは銅の宝箱からは作動しなかった。


 そして金の宝箱には白い水晶なようなモノが塊で一つと、オデコに当てたら能力や術技が得られる札と同じ材質でできた、三角形の紙が一枚あった。



「また札か……? でもなんか違うよな」

「そだね、とりあえず鑑定してみてよ」

「ああ」



 ま、完璧でなくても便利なのはたしかだ。今までと同じく『宝具理解』を使ってその紙を調べてみた。



-----

「能力上昇のカード」(宝具)


 進化することができる能力を、一つだけ強制的に一段階上げることができる。額に当てて思考することで使用できる。

-----



 なんと。なるほど、そんなものもあるのか。使い方によってだいぶ有用かもしれない。ロナにもこのカードのことを教えた。



「なるほどぉ。すごく……便利なのかな?」

「ああ、単純だが強力だな。これをどう使うかは帰ってからクレバーに、ゆっくり考えようぜ」

「だね! よし、そうと決まれば隠し部屋いこ!」



 金属の円柱、水晶の塊、上昇のカードを俺の鞄にしまってから、二人で羅針盤の指す光のもとに来た。

 銅の宝箱と同様に他とは模様の違うブロックで封をされていたので、指輪で操作してそれらをどかす。全て取り除いたところで、その下に光の塊が現れた。



「よし……今日は一緒に入ってみよ」

「これ踏んだら入れるんだろう? 同時に踏むってことか」

「そうそう」

「なるほど、やってみるか」



 俺とロナは同時にその光の塊に足を突っ込んだ。

 昨日の隠し部屋に入室した時同様、目の前が光に包まれる。

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