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黎明のサンライト  作者: 陽月ウツキ
SANLIGHT OF DAWN
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第6話 異風の町

 

 ミレトス王国の城壁の門を通った先に広がる、広大な草原地帯を、コンパスを片手に握るウィルフィードについて行く様にレイアとシアリィは足を運ぶ。 碧竜のメダは周囲の状況確認としてその三人の上空を飛び回っている。



 出発してからまだそんなに時間は経っていない時に、ボルドー色の髪振り乱して、レイアは心底怠そうな表情で言った。



「なぁ。 あとどんくらいで着くんだ? 周り一面草だらけで気が狂いそうだぜ……」



 ウィルフィードは足を止めずに顔だけ後ろに向くと、



「二回野宿して到着する予定だ。 食料はメダが森から狩って来てくれる」



「ええー! 野宿!? やったー!」



 シアリィは嬉しさで、滅茶苦茶な舞を踊る。 その舞を見たレイアは意味が分からず、不思議に思う。



「何がそんなに嬉しいんだ?」



「だって、野宿だよ!? 一度してみたかったんだよねぇー。 でも王女だからとかでできなかったんだよ。 野宿バンザイ! 野宿バンザイ!」



「へぇー。 世界には変わった奴もいるもんだな」



 棒読みのレイアは空を見る。 じっと時間を忘れて見てしまう程に澄み切った天色の空に碧色の肌のメダが良く目立つ。



「ていうか、メダに乗って行けば良いじゃん」



 なんとしても歩きたく無いレイアは空っぽの脳をフル回転させる。



「メダは一人乗りだ。 三人も乗れ無いし、一人一人連れて往復させるのも無理がある」



「なんだか乗り物扱いされてる気分だ」



 上からメダの声が聞こえる微かに聞こえた。



「ともかく頑張って歩け、レイア。 シアリィ様がこんなに張り切ってるんだぞ」



「あぁい」



「もう様はいらないわよ。 照れくさかったし」



 そうして三人は草原を歩き続け、マカミノクニを目指す。







 ***







「あぁぁー。 何が野宿バンザイよ。 腰は痛いし、髪はボサボサだし、服は汚れるし!」



 二回目の野宿を終え、再び歩く三人の内、シアリィは寝癖まみれの銀髪を更にくしゃくしゃにして嘆いている。



「だから言ったろ。 野宿で喜ぶ奴がおかしいぜ」



 そう言うは目の下にくっきりとしたクマをつけるレイアだ。 二人は共に地面で寝てた為、一日中歩いていた疲労が抜け切れていなかった。



 しかし、ウィルフィードはその二人を置いてくスピードで歩いて行く。



「ウィル。 お前は疲れてないのか? 置いてかないでくれー」



「俺は地面の上で寝る事に慣れてるだけだ。 それより、ウィル?」



「ああ、ウィルフィードって長いから、ウィルだ。 良いでしょ? メダだってそう呼んでるし」



「別に構わないが」



「あっ! じゃあ私も」



 と、急に姿勢を戻し、手を挙げるシアリィ。 そこで会話は途切れ、沈黙の中ただ歩く作業が始まった。



 何十分か経つと、ウィルフィードが沈黙を破って二人にとって嬉しい報告をする。



「マカミを囲う城壁が見えてきた。 もうすぐだぞ」



 その言葉にうつうつとしていた二人の表情がみるみる晴れてきた。



「よし! 頑張ろう。 今までないくらい頑張ろう」



「うへへ……。 マカミのベットはどんくらい柔らかいかな……」



 胸を張りながら大袈裟に歩くレイアと、よだれを垂らして、何かを触る仕草をするシアリィ。 それを背に感じながら、ホッとするウィルフィード。



 そして遂にマカミの大手門と呼ばれる付近まで来た。 大手門にいる、レイアの持つ槍の二倍程長い槍を持ち、薄い装甲を纏った軍人二人が出迎えてくれた。



「ミレトス王国より来た、ウィルフィードだ。 便りは届いているはずだ」



「ええ。 お待ちしておりました。 ウィルフィード殿とその一行殿。 どうぞお通りください」



 そう言い、大手門を開くと目の前に橋があり、その奥に民家が所狭しと立っていて、そこから突き出た黒と白の変わった城が特徴的で印象深かった。



 レイアもその光景に、



「ミレトスと違って、ずいぶん変わった町だなぁ」



「でも、なんか、何とも言えない感じがすごく素敵ね」



「ええ。 趣のある町ですね」



 橋を渡り二度目の大手門を潜り抜けると、二人の少女がこちらに近づいて来る。 その内身長の高い方が話しかけてきた。



「ようこそ、マカミノクニへ。 私はこの国の右将軍を務めるリン・クシナダです。 そちらは妹で左将軍のランです。 以後お見知りおきを」



「私はミレトス王国より参りました、ウィルフィードです」



「私はシアリィ! よろしくね」



「レイアっす」



 それぞれの紹介が終わると、艶やかな黒い長い髪を櫛で一纏めにし、瑠璃色で花柄の着物がよく似合うリンが口を開く。



「さて、早速お城へ案内します。 どうぞついて来てください」



 そう言い、歩くリンとランの後ろを三人と一匹は街並みを眺めながら進んで行く。



「しかし、本当に独特な町だ。 まるで無防備だ」



 独り言のつもりが、ランに聞かれたらしく、ツインテールを揺らしながらこちらへ来て大きな黒い瞳でウィルフィードを覗く。



「ふっふーん。 無防備だと思うじゃないですかー。 でも、歩いていて何か気づきません?」



 ウィルフィードはその問いかけに考量する。 自分の足元を見て、リンの背を見て、街並みを観察し、ミレトス王国と比べる。



「道が複雑……? 城へ一直線じゃないのか?」



 ミレトスは城壁にある門を潜ると、城へと直結している長い一本道があるが、ここマカミノクニは何度も何度も右に行っては、左に行ってはを繰り返している。



「せいかーい。 この国は敵に攻めにくいように作られているんだよ。 他にもさっき橋を渡ったからわかると思うけど、城下町の周りは水なんだー。 それも敵の進行を妨げる工夫だよ。 面白いでしょ。 まぁ、うちらからしたら普通だけどね」



 小さい胸を張り、自慢げな顔をする。 そしてその後ランはシアリィと「銀髪かわいいー」、「ツインテールもかわいいよぉ」などと容姿の話に夢中になる。



 やっと城の近くまで来たと思ったら、長い階段が幾度もあって城内部に入るまで結構な時間を要した。 それも敵の進行を妨げる工夫だろうなとウィルフィードは思った。



 レイアがもはや死人の顔になった頃ようやく中に入れた。



「今日はもう遅いので、話はまた明日にしましょう。 夕飯やお風呂、布団の用意もできているのでゆっくりと旅の疲れを落としてください」


なんだか、ようやくそれっぽくなってる気がします。

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