プロローグ
重く、黒く澱んだ雲が太陽の光をかき消し、昼か夜か判断がつきにくい。そんな気候の中、落ち葉や根っこで凹凸した地面を歩く一人の少女がいた。
高貴なドレスも纏い、華奢だった。とてもこんな所にいるとは思えなかった。そしてその少女の顔からは決意と罪悪感が迸っていた。
やがて歩くと、濃霧が辺りを包み、視界が狭まった。だが少女はなおも迷いなく細い足を働かせていた。
「──────」
目の前にうっすらと、何かが認識できる。近づいてみると、翡翠色の宝玉を咥えた竜頭の石像だった。
片方の角は折れて、石自体も相当『遥か昔』の物だ。
少女は翡翠色の宝玉に手を当てた。
「──感じる」
目を閉じ、安堵の表情を見せる。
「私は君の光が無いと生きていけない。 でも、これは私の意思じゃない様な気もする」
目を開け、大きく息を吸い覚悟を決める。
「たとえ仕組まれた運命だとしても、私は君に会いたい。 結んだ約束を一緒に果たしたい。 だから私は──」
翡翠色の宝玉に当てた手に魔力が集中し、宝玉に注ぎ込まれる。その瞬間大気が揺れ、落ち葉は舞い、周りの木々は根から放り出される。黒く重い雲は少女を中心に埋まるを形成する。
「──罪を犯します」
そして、少女は力尽きた。