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花のない花瓶

作者: 春風 月葉

 その瞳はどんな宝石よりも輝いていると誰かが言った。私は自分の目玉をくり抜きたくなった。その白い肌は雪のようだと誰かが言った。私は自分の皮を引き剥がしたくなった。誰かが言った。その髪は夜より深い黒をしていると誰かが言った。私は紙を毟り取りたくなった。

 私は自分の容姿が嫌いだ。周囲の人間が私の容姿を認めるほど、私は自分を嫌っていく。彼らは私のことを美術品か何かだとしか思っていないのだろう。美しい、美しいと口にする彼らの言葉は一度だって私に向いていたことはない。

 私は空っぽだ。例え私の容姿を全ての人が認めたとしても、その中にある私のことなど誰も見てすらいないのだろう。

 今日も私は椅子に座り彼らを眺める。この濁った瞳も、彼らには宝石のように見えるのだろう。日の光を知らぬ青白い肌、光沢のない長すぎる黒髪、自分では着ることもできない洋服、値段も知らない装飾品。

 何もかもがそこにはあるようで、けれどもそこには何もない。あるのは空の器だけ。美しい器、悲しい器、どれだけ綺麗に繕っても中身がなければ器にすらなりきれないというのに。

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