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第一話 アンデット

 アンデット。下級魔物に分類される生きた死体。体からは腐臭が漂い、生気は感じられない。

 自分を作った術者の命令を聞くだけの傀儡。

 

 そんなものに自分はなってしまったのだと告げられた。しかし、信じられないにしても否定する気は起きなかった。そもそも、崖から落ちて無事な筈がない。

 

 それに、もう一つ。体がほとんど動かない。ベットは角度がつけられており、正面にはローブを羽織った魔族の女性がいる。

 初めは彼女の妖艶さに釘付けになっているのかと思った。眼を逸らせないのだ。いや、違う。首を回すことも眼球を動かすことすら出来なかった。

 次に、声だ。視界にその魔族を捉えた時点で叫んでいたはずだ。しかし、それは声にならない叫びだった。

 彼女の声を聞き、意思疎通が出来ると分かって、話をしようと思った。ここはどこか。自分は死んだのではないのか、貴女は誰なのか。無駄だった。俺の声帯や舌は動かなかった。


「君が今実感しているように、アンデットは自分で身体を動かすことはできない。」

「どころか、アンデットは本来自分の意思持たない。アンデットは死体に魔石を埋め込み、そこに術者が魔力を吹き込む事で動かすからね。」

 

 彼女はそう言いながら、壁に掛けていた長い木の杖を振るった。

 その時、ピクリとも動かなかった俺の右腕は滑らかに動き出した。

 本当に自分のものではないみたいだ。

 今気づいたが、感覚がなかった。それもそのはずか。身体は死んでいるのだろうし。


 ……ん? でもそれっておかしくないか?なんで死んでるのに俺には意思があるんだ?さっき彼女もアンデットに自分の意思は無いって言っていたのに。

 

 思考の沼に沈んでいると、彼女が虚空を彷徨っていた俺の手を握った。半身浸かっていた沼から引っ張り出された。しかし、驚きはしなかった。触られた感触はなかったからだ。彼女の手が冷たいのか温かいのかは分からない。

 

<驚いた。意外と冷静なんだね。普通、受け入れられないよ。アンデットになったなんてさ>

 もし、声が出てるならそれこそ絶叫してるだろう。

 彼女が触れたと思ったら、頭に直接思考が流れ込んで来たんだ。

<アンデットになった事よりも直接魂に話しかけられて驚くのか。君はもう私の眷属なんだ。魔力を通しての念話が出来ないはずないだろう?>

 なるほど。眷属とはそういうものなのか。

 もう思考回路は焼け切れたんだろう。深く考えず納得することができた。

<いいね。君のその順応性の高さは気に入ったよ>

<さて、君のさっきの疑問に答えようか。なぜ死んでアンデットになったのに、君の魂は生きているかってことをさ>


 そう。おそらく俺は死んだ。そして、アンデットになった。そこまでは自然と納得できた。

 だが、そうなるとこの自意識がある事は不自然であるのではないか?アンデットとは、彼女も言っていたが、意思を持たない人形のようなものだ。

 自分が、死してなお魂が残り続ける、特異な存在であるとも思えない。

<そうだね。君自身は特別でもなんでもないよ。死んだときの君の状態がそうだったって話さ>

 

 俺は最期の記憶を探る。だが、思い出せるのは満月とそれを穿つような切り立った崖の影のみだ。


<やっぱり記憶の混濁があるね。それも仕方ないよ。記憶は本来、生きてる脳に保存されるものだからね。それこそ文字通り()()()()()()()()()()()()()()じゃないと今の君は思い出せないよ>

<まあ、いいさ。私のほうから説明させてもらうよ。君が崖からこの「魔霧の森」に落ちきて、私が駆けつけた時には君は死んでいなかった。いや、君の魂だけは生きていた、と言おうか>

 魂だけ生きてる……!?

 身体や脳が死ねば魂も死ぬのではないのか?

<いいや、魂ってのは人の身体を巡る魔素。魔力の素だね。それに宿るんだ>

<君は、人が死ぬと21gほど軽くなるって話を知っているかな?あれは世間では魂の重さだとか、発汗だとか言われてるけど。あれは魂を構成していた魔素が崩壊して空気中に還元されるからなんだ>


なるほど。俺は死後、その魔素が崩壊する前に運良く貴女に見つけられ、アンデットとして復活出来たわけだ。


殆ど、説明するだけになってしまいました。

すいません。次の話も殆ど設定の説明になりそうです。後書きと三話目の前書きに簡単なまとめを載せますので、飛ばしてもらっても構いません。

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