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6、これ、なんなの?

 鉄は熱いうちに打てという。多分、そういうこと何だろう。いや、そうであって欲しいと思いたい。命の危険を感じながら、そんな事を考えてしまうのは自分が弱み証拠に違いない。なんせ剣を合わせながら、そんな弱音を吐いているのだから……。


 スキヤキは自分目掛けて振り下ろされる剣を必死で弾く。感覚として剣の軌道は読める。うっすらと闇夜に映る、剣の煌めき……ではなく、敵の視線、筋肉の動き、呼吸の音、それら全てを情報にして読む。


 そこまでしてスキヤキは防戦一方だ。技量の差だ。さらに昼間はっきりとした事だが、彼は長期戦に向かない。普通にいなしてだらだら出来るなら話は別だが、そうではない。


 スキヤキの前髪がはらりと落ちる。次はどこだ? 右下から。

 そこで剣が跳ねるのか?


 あー、これで剣より弓の方が得意と言っているのはひどい話だ。おっと、今度は左脚だ。避ける、紙一重で避けようなんて思ってない。結果的に紙一重でしか避けられていないのだ。


 じり貧だ。スキヤキが少しでも何か読み間違えるか、動き間違えるかしたら終わる。短期決戦しかない。


 力を抜いて、脳ミソをフル回転させるイメージを持つ。完全に最初の相手の動作から動きを予測するんだ。相手の何が一番最初に動く、そう脚、いや、目だ。暗くてはっきり見えなくても見えるんだ。視線の動く先。そうスキヤキの右手を見ている。脚が前に出るのがわかる。そうだ。彼の動きを誘っているんだ。反射的に動いてしまう、彼の右手の動きから、彼が一番守りにくい位置を特定して斬り込んでくるつもりなんだ。


 そう、さっきからそうだったじゃないか。後の先を取るつもりで、彼女に取られ続けているんだ!


 スキヤキは大きく飛び下がる。距離を取って、今度は自分から動く。


 安全に、確実に勝とうとしてると負ける。自分より力あるものに勝つには安全なんて求めたら駄目なんだ。いや、勝つとか負けるとか考えてはいけない。そんなものは自分の力を削ぐ。ただ敵にこの刀で、全てを斬ることをだけ求める。


 スキヤキは、ただ真っ直ぐ、ただ最短で相手を仕留める剣筋を描き出すんだ。必要な力を必要なだけ降り斬る。日本刀を振り上げ、身体を前に出すのと同時に、敵の首筋に降ろす。


 美しい軌跡は闇夜に描き出せた。火花がひとつ。そして、剣を叩き斬った。折れた剣の先がスキヤキの首筋に当たる。


「まだまだだけど、最後の一撃はよい」


 冷や汗をかいているのがわかる。その声に少しの安心と、恐怖を感じながら。


「これ、なんなの? 」


「まだまだ強くなれるって事さ。あんたは無敵じゃない。あんたより強い奴はいくらでもいる。で、そんな時にどうすればいいかは体験しとかないとだろ? あんたはだいたい覚悟が足りない。いつでも用心しとけば負けないと思っているだろ? 違うのさ、強さってのはそんな事じゃない」


「優しい師匠ですねえ、アールマティ。常々思ってるけど、何が目的なの? 」


「自由に生きたいんだろ? 楽しく生きたいんだろ? 才能だけでどうにかなると思ってるの? 」


「ふぅ。楽しく生きたいですよ。その為に生きてる」


「あたしも楽しく生きたいのさ。だからあんたを鍛えてる」


 ああ、美しく、悩ましい、苦しくなる笑顔だ。スキヤキは心に誓う。この女にだけは惚れてはいけない、俺の人生が終わる、と。



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