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4、お嬢さん、お待たせしましたね。

 転げ落ちた首と、その横にひざまずくアラグノール。彼が見上げる女性こそ、自分の救世主だと同じ赤髪の女性は見つめている。


「貴女がアールマティ……様……」


「名前は? 」


「私はエンティ……です」


「長い間苦しかった事、アラグノールから聞いている」


「とんでもない」


「アータルの民が苦しい思いをする時代は終りだ」


 そう言って、アールマティはエンティの縄を外す。エンティは現在に蘇った伝説の女性を見る。


 アータル族が世界を駆け回り、覇を唱えた時代。彼女はアータルの先頭に立ち、黒豹と供に戦ったと云われている。

 アータル族の女性には、彼女にあやかって名付けられる事の多い名前だが、彼女の存在感には本物を思わせるものがある。細く美しく輝く剣を担ぎ、優しい口調にあわない、素っ気ない仕草、そして彼女を印象付けるのは左目に付けられた眼帯である。


「アラグノール。次に狙いをつけているところはあるか? 」


「今、すぐにはないです。大物と言われている北進派の悪徳商人は潰しました。あとは小物か、悪徳とは言えない大商人達です」


 アールマティは即決する。


「次は悪徳貴族で行く。それでも構わないな? 」


「お約束通りに運んでいただけますなら」


「膿を出して帝国を強くしてやることはないからな。あくまでも北進派の貴族の中での悪徳貴族をる」


 そう宣言すると左目を隠したアールマティはマントを翻して、テントから出て行った。


「お嬢さん、お待たせしましたね。彼らに着いていけば、そこはアータル族の平和が保証される場所。貴女のおかげで、そこの()()()()()を無事に殺せました」


 エンティはアラグノールが頭を下げるのを見ている。彼女には彼とアールマティが話していた内容は全くわからなかった。

 そして、自由になった事も理解していない。自分が何をしていいのか? 何がしたいのか? それがわからない。

 彼女には、頭を上げたアラグノールがその場を離れていくのを見つめる事しか出来なかった。




 スキヤキとダニエルは闇夜に紛れて隠れていた荷から降りて、身体をほぐす。かなりの時間を乗っていたので、流石に身体が固く、痛くなっていた。

 見張りも既にいない。これだけ荷があると、それぞれを見張る必要性がないのは、ここが大草原の真ん中だからだ。野盗の一団が来たとしても、荷馬車を一台だけ盗むなんて事はない。とりあえず戦ってからという事になる。


「ここでやるのかなん? 」


 スキヤキは頷く。ここは真紅の月(ブラッドムーン)の本拠地ではないだろう。本拠地に戻る途中だと思っている。あくまでもここの一団は実働部隊だ。

 敵がねぐらに戻って、その親玉に隙が出て来ると確証が持てれば、付いていくべきだろう。だが隙が出来ないならば、移動休憩中を狙うのがいいに決まっている。野盗や魔物の警戒は強めても暗殺に対しての警戒は薄れるだろう。

 

「後は聞き込みでもするか」


 ダニエルの問いにスキヤキは再び頷く。

 二人は気配を消しながら、辺りを探る。狙うのは夜の警戒をしている連中だ。一人か二人での見張りなら静かに聞き出せるはずだ。


 巡回をしているアータル族の二人組が目に入ると、すぐに行動に移す。


「やあ」


 ダニエルが声を掛けると、見張りの二人組は驚いて振り向くと、その内一人は警笛を手にしている。スキヤキが横から警笛を叩き落として、残りの一人はダニエルが突撃をかまして、身体ごと押し倒す。馬乗りになってナイフを首もとに当てるてる。


「ボスの場所を教えてくる? 」


 アータル族の若者は首を振る。首筋にナイフを当てても口をわらないのはボスへの忠誠心からだろう。

 ダニエルのナイフが首筋に薄い傷をつけるが、やはり居場所は吐かない。

 スキヤキはダニエルの肩を叩く。ダニエルはナイフの柄で倒した男のこめかみを打つ。


「場所わかったのかい? 」


 スキヤキは首で一つのテントを示す。ダニエルの表情にスキヤキが答える。


「口は動かさなかったが、目が場所を教えてくれたさ」


「さて、どうやる? 」


「どこかで騒ぎを起こすのと、身体を張ってボスとの対決が終わるのまで壁になるのとどちらがいい? 」


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