表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

40/70

4、命を大事にと言わないか?

 まだは沈みきってはいないが、辺りはかなり暗い。 人通りもほとんどない。小さな町だから当然の事。街灯なんてない世界だ。

 スキヤキは自分の動きが遅かった事を自覚している。この背の低いエルフが風魔法を放つ前に確保するか切り伏せるかしなくてはならない。リナを襲った魔法が捕まえる為のもので本当に良かった。


「人質交換をしよう。歌姫とその男を寄越せ、今夜だ」


 相方のエルフがリナの首に当てている剣を強調するように、肘を動かす。


「一対一の交換なら乗るよ。でも、依頼人を含めての交換に応じる訳ないのわかるよな? 」


 スキヤキは応じる。声は大きくせず、ギリギリ届くかという具合。こちらが有利だと見せる為だ。こちらは交渉する事自体が譲歩なんだと思わせなければならない。


「今夜、町の外れにある池まで来い」


「今、人質交換しないなら、こいつは殺す」


「出来るかな? 」


 スキヤキは作戦を変える事にする。ここは度胸だ。


「エルフは神の御告げで動いてると聞いたが、やはり嘘だったのかな? 」


「今夜、歌姫とその男を寄越せ、町の外れの池に来い」


「悪魔を倒す為に人質をとる。その人質をとる為に人質をとる。まあ、神の御使いと呼ばれるエルフがする事かな? 」


「神の御告げだ」


「あの猫が悪魔かも知れないが、歌姫も、それと間違いなくそのは普通の人間だ」


 スキヤキは捕まえてるチビエルフを引き連れて前に進む。

 リナを捕まえてるノッポエルフは袋小路で動けない。


「近付くな、このの命はない」


「その娘を殺して、お前達に先があるかな? 」


 さらにチビエルフを引き摺って前に出る。


「俺は神でも悪魔でもない。その娘を放せば、お前もこの男も殺さない」


 お互い人質を放せば、剣で斬りかかれる位置まで近付く。


「もう一度訊く、神は命を大事にと言わないか? 」


 少しの沈黙。


 スキヤキは先に捕まえてたチビエルフを放す。


 リナを捕まえていたノッポエルフはリナを手放して、チビエルフを手元に手繰り寄せる。

 スキヤキも刀で斬りかかろうとはせずにリナを引き寄せる。そして、凸凹エルフに告げる。


「俺達から引くよ。出来れば二度と襲って来ないでくれよ」


 ノッポエルフはため息をついて、言葉を吐き出す。


「俺はダメだな。元々国何てものに縛られるのがあってないんだろうな」


「兄ちゃんは悪くない。俺が捕まったのがいけないんだ」


 スキヤキは二人をよく見る。確かに体格は全然違うが目元が似ている。二人とも狸のような感じの目だ。

 今の今まで気付けなかった事を情けなく思いながら話をする。


「詳しくないが、ルチア王国ってのはそんなにエルフに対して絶対的なもんなのか? 」


 自嘲しながらノッポエルフは答える。


「エルフなんて簡単に分けられる。ルチア王国のエルフか、はぐれエルフか、この二種類しかないんだよ」


「に、兄ちゃん? 」


 スキヤキは気力を振り絞る。余裕を見せなければならない。


「逃げる先に当てがないなら、酒でも飲みながら……」


「これは驚いた……ま、誰だってギリギリだよな」


 スキヤキはノッポエルフに自分の状態が悟られたのがわかる。リナを確認するとまだ泣いてる。スキヤキはゆっくり下がりながら再度声をかける。


「酒、どうする? 」


「いや、遠慮しとく。お前の勇気に敬意を」


 そう言って、スキヤキが下がって出来たスペースから、エルフの二人は去って行った。スキヤキはリナに寄りかかる。


「リナ、怪我はないよな? 」


 スキヤキの体重をしっかり感じて、リナは自分自身の情けなさを感じる。


「あの、師匠。怪我されてます? 」


「宿まで頼むよ」


 リナは、エルフに襲われて捕まった恐怖と、スキヤキに救い出された安堵と感謝と、感情の嵐であった。


 スキヤキは、やれやれと呟いていた。




 宿に戻ると既に日が降りていて、燭台に火が灯されていた。


「長い買い物だなん」


 ダニエルは、スキヤキとリナを見てそう呟く。


「スキヤキはすぐに寝る。リナは部屋に戻る。ワシが寝ずの番、以上。何か質問あるか? 」




 ダニエルがリナから引き継いで、スキヤキを部屋に連れ帰る。スキヤキの目はまともに開いてない。ぐったりだ。


「時間制限ありの魔法と変わらないなあ」


 スキヤキをベッドに寝かせて呟く。

 ダニエルは当然こんな状態の彼を何度も見た事がある。スキヤキが一匹狼で仕事をしていない理由でもあるからだ。


「ほれ」


  スキヤキの口元に角砂糖サルカラを持っていく。危うい性格をしている相棒を見ながら哲学者が問う。


「悪魔は命を大事にと言わないか? 」


 当然、答えは返って来なかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ