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2、彼等は護衛の専門家でしょ?

 神が伝えたとされる言葉が脳裏に甦る。


「南、一番大きな国の二番目の街。三人組に四番目。五頭の獣が六番目の悪魔になる」


 もしかしたら、悪魔は五体いたのではないか?

 あの化け猫は確かに悪魔だろう。


 だが、この男は何者だ?


 我々はルチア王国の精鋭。そんな我々がまともに切り結んでいけないなんて状況がよく分からない。あり得ないのだ。

 魔法を使われた感じもしない。だが、我々の動きを全て知っているかのように身体を動かし、刀を振るう。

 我々の剣は彼の身体のすぐそばを通る。だが剣が切りたくないと言っているかのように後少しだけ届かない。


 この男も人間の姿をした悪魔ではないか?


 途中で刀を捨て、剣を奪って、持ち換えている。戦場を知っている男だ。剣や刀は切れば切るほど、血と脂で切れ味が悪くなる。軍隊崩れ、いや、軍隊上がり。

 彼の眼は、赤く血走っている。

 もう私の前には二人だけだ。もうすぐ終わる。


 馬車はある程度距離を離して止まっている。馬車からダニエルが降りて、戦鎚ウォーハンマーを両手で持ち、立って待っている。


 スキヤキは最後のエルフの持つ弓弦を切り、首筋に剣をあてて口を開く。


「神は命を大事にしろとか言わないのか? 」


「言っている」


「なら、情報をくれ。命を大事にしろ」


「命より大事なものがある」


「そうか……文句は神に言え……」





 スキヤキは荷馬車の荷台の上で、自分の刀の手入れをしている。しっかり血糊を拭き取り、刀こぼれがないか確認する。今回はエルフ達の剣も拾い集めて荷台にのせている。今回はカサンドラがいる為に隠す必要性はない。


 急ぐとはいえ、夜通し走るなんてのは馬の事を考えると無理で、普通の旅程より距離は進んでいるとは思うが、小さな町に泊まる。


 カサンドラは、雇い主としてスキヤキ達の腕に納得はしてくれたらしく、感謝の言葉とあわせて、町で一番の宿をとる。

 普段、カサンドラは宿に泊まることさえないそうだが……。


「師匠。さっきのどういう意味ですか? 」


「いや、何も考えてなかった」


「スキヤキは何だかんだで疲れてるのな。で、カサンドラはな、大抵宿屋とかではなくて、その土地その土地の領主の館とかに泊まってるからさ」


 リナはダニエルの説明で納得する。そして、カサンドラがきちんと感謝してくれてるんだと理解する。リナにはカサンドラの反応がよく分からないのだ。

 リナ自身がスキヤキ達に村を救われた時は、状況だとか、スキヤキの実力とかわからなかったが、リナの中で安堵と喜びと憧れが爆発した。

 だが、今朝のカサンドラの反応にそんなものは欠片も見られなかった。自分の身を守る事、そして、終わってからの感謝の言葉、何一つ間違いがなく。冷静で落ち着いたものだった。


「僕が子供なのかな? 」


 結局、リナはエルフ達と直接的には戦ってない。自分の実力で、あの場面でするべき事は出来たと思っている。

 でも、ひとつも傷を負わなかったとはいえ、疲れはてた様子を見せるスキヤキに、馭者台にいた自分にひとつも攻撃させなかったダニエルに、もっと何か出来なかったかと思ってしまう。

 そんな自分自身の感情の激しい動きがあるのに、同じく命のやり取りの現場に居合わせたカサンドラが冷静でいることに悔しさと理解できないという気持ちが沸いてくる。


「宿の部屋はカサンドラとリナが同じ部屋な。ワシとスキヤキが交互に二人の部屋の前に陣取るから」


 ダニエルがリナに声をかける。


「わかりました。中できちんと見張っておきます」


「ははっ、寝といてくれ、しっかり。三人とも寝不足とか一番問題だ。どうせ何かあれば起きちゃうんだろう」


「早く部屋に行こう」


 スキヤキの声にいつもの元気がない。戦闘そのものに、それも今回みたいな一方的な戦いに、師匠がそこまで疲労を感じるものだろうかと、リナは疑問に思う。



 それぞれ宿の部屋に入る。もちろんリナはカサンドラと同じ部屋だ。


「ごめんなさい、リナさん」


「はい。何でしょう? 」


「適当に私の服を買ってきて下さい」


 カサンドラは家には戻らず、そのまま旅に出た。彼女の青いシルク地の服はやはり目立つ。


「どんな服ですか? 」


「そうですね、リナさんがわからなければ、ダニエルさんに尋ねてみて下さい」


「ダニエルさんにですか? 」



「自分がよく分からない事は、専門家プロフェッショナルに任せるのが一番。彼等は護衛の専門家でしょ? 」

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