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1、今回は大金が手に入るわ

 明け方、薄暗い空を見ながらスキヤキは馬に乗る。馭者はダニエルにしてもらっている。リナは荷台の上でカラハタスの赤い壁の中から緊張している。カサンドラは荷台で薄汚れた布をかけて寝ている。

 あからさまに怪しい一行だが、これ以上隠しようもない。どうせ相手は工作員か何かの手練れなのだから。

 道も迂回して行こうなどとは思っていない。街道沿いが一番安全だ。道を外れて奇襲をかけられる事を考えれば見つかるリスクなんて考える必要はない。


 ダニエルはスキヤキの表情から不安を感じて声をかける。


「敵が強いのはわかるんだが、顔が固いなん」


 スキヤキは馬を扱いなおして答える。


「緊張を隠そうとするほど、子供じゃないからな」


「それならいいんだがな……荷馬車を取りに行く前とどこか違うのよん」


 スキヤキは相棒が馬鹿でないことに安心しながら答える。


「普通の美女がいいんだがな、今回も変わった女性だから少し残念なのさ」


「師匠、あの噂は本当なんですか? 」


「噂? 」


 リナが会話を聞いていた事に驚きながら、スキヤキは何となく答えがわかっていながら尋ね返す。


「美女の仕事は無料で請けるって」


「そんな事してたら飢え死にするわ」


 ダニエルが皮肉を付け加えてくる。


「実際に無料に近い事があるからなん」


 寝ていた様に思えたカサンドラが寝たまま割り込む。


「今回は大金が手に入るわ」


「嬉しいなん」


「きちんとヘクトールの無事が確認出来たら宴を開いて貰います。その公演料をそのまま渡します」


 歌姫と呼ばれる風格があるのは立ち居振舞いから来るのではなく、その声の響きからだと証明しているように聞いていた三人は思えた。

 そして、その声を合図にしたかのように荷馬車の前に二匹の猫が現れる。

 荷馬車の前方であり、荷馬車が避ける必要のない距離を保って二匹が先導する。


 不思議な光景だった。日の光が完全に闇夜を打ち砕き終わった時、荷馬車の後ろには猫、猫、猫の大群だった。


「カラハタスの猫が全部来たかもな」


「師匠。なんか不思議な気分です」


 ダニエルが呟く。


「本当に猫の神様なんだろなん」


 スキヤキは少し馬のスピードを落として荷馬車に近付く。


「多分、夜は襲って来ないな。猫は夜目が効く」


「そうなんですか? 初めて聞きます」


「ん? まあ、多分エルフは知ってるんじゃないかな? 森の精霊なんて言われるくらいだし……。とりあえず、日中の警戒心を高めておけよ」



 スキヤキが忠告した約一時間後にそれは実際に起きた。街道横の森から矢が飛んできたのだ。

 距離が離れているのか、矢にあまり勢いがない。

 その矢を臆病者の証しと見た猫達はいっせいに森へ走り込む。


「猫は所詮猫か……」


 そう言って馬から降りる。するとその馬に矢が飛んでくる。二本の矢は切り落としたが、残りの二本が馬に刺さる。馬が痛みに立ち上がる。

 荷馬車を引いていた馬にも矢が二本来ていたが、ダニエルが戦鎚ウォーハンマーで払い落としていた。


 荷馬車の周りにエルフ達が二十弱。その内、弓を構えているのが六人、剣を構えているのが14名程。


「こそこそ隠れる魔法が得意なようで」


 そう言うとエルフ達に斬り込んでいく。後方から半包囲されている。前に逃げるしかないが、そこはダニエル達に任せて、完全に包囲されるのを、阻止するべく日本刀を振るう。


 駆け込み、剣を避けながら、身体をくるりと回し、通り過ぎる時には、次々に命を刈り取る。

 荷馬車が動き出す時には三人仕留める。


 馭者台にはリナがいて、手綱を握りしめつつ、何とか早く馬車を動かそうと奮闘している。

 ダニエルは荷台の上から戦鎚を振り回している。

 カサンドラは余計な事はせずに荷台の上で小さくなっている。パニックにならなければ充分だ。


 周囲の状況を把握しながら、息を整え、すぐに次へ行く。


 エルフ達には一番よくわからない事態だった。


 カサンドラが街を出るというのも驚いた。そして、軍でも衛兵てもなく、多分、傭兵といった類いの数名で護衛していることにも。


 たが悪魔の眷属が多数現れて、護衛しているのを見て、最低限の作戦まで立て、カサンドラを捕まえる為に動いた。



 それがどうだ?


 いきなり三人切り捨てられ、今また二人。


 奴も猫の眷属なのか……。


 それがエルフ達の思いだった。

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