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8、錬金術特殊研究部隊だ

 縄で縛られたままの村長は顔を真っ赤にして叫ぶ。その姿は正義や悪みたいな信念に基づいた言葉、というより何かを守りたいという必死さを、スキヤキは感じとる。だから、スキヤキは問う。


「何を守りたい? 」


 村長は急に黙る。顔は紅潮したままで、感情は制御できていない。ただ村長という立場を守り続けているというメッセージはわかった。


 すっと前に出た村娘が村長を庇う。


「わかりました。この人が誰を守ろうとしてるのか……」


「セレナ……」


「私が勇者アポロの息子ヘリオスを愛したから狂ったのよ」


「セレナ……」


「私はアポロから確かに聞いていたのだ。ヘリオスが蛇女の息子だとな。私はアポロを勇者として羨んだことはない。魔族に騙された可哀想な男と知っていたからだ。だがアポロがいる限り村は平和。だから黙っていた」


 息をついて、村長は続ける。今、スポットライトを浴びているのは縄で縛られた村長であることは間違いない。


「アポロが死んだ時、ヘリオスが魔族に還る前に殺らなければと思ったのさ。娘の事より村の事を考えてだ」



 とんだ茶番劇を見せられている。スキヤキはそう思った。

 村の為にとか大嘘だ。娘を人外にやりたくなかったのが本音に違いない。スキヤキは確認する。


「え~と、セレナさん? 村長の娘であってるかい? 」


 セレナは頷く。そして皆に告げる。


「父は罪人です。私とともに処刑して下さい」


「セレナは悪くない。セレナは僕の愛した人だ」



 ここでもうひとりの主人公が前に立ち、説明する。ラミアだ。


「ヘリオスが私の息子であるのは間違いない。だがヘリオスは人間だ。私がヘリオスを覚醒させない限り、人間として生き、人間として死ぬ」


「嘘だ、騙されない。絶対に騙されない」


「いいえ、本当です。ヘリオス、力が欲しいですか? セレナさんが欲しいですか? 」


「セレナだ」


「嫌だ、ヘリオスは蛇になるんだ」




 スキヤキはシナモンスティックを咥えて、彼らを眺める。平和だ。ここら辺が落とし処かな?


「アールマティ、ヘリオスは間違いなく人間だな? 」


「ああ」


「ダニエルもそれでいいな? 」


「あ、あぁ」


 スキヤキが大きな声で語り出す。普段からそうかも知れないが、態度は偉そうにして。


「村長よ。その蛇の化け物は嘘を言っていない。ヘリオスは間違いなく人間だ。お前にはわからないかも知れないが、俺達はその筋の専門家だ」


 村長、セレナ、ヘリオスと、それぞれ話すのをやめる。


「俺達は錬金術特殊研究部隊だ。開明派で有名なバイバルス将軍は知っているな? 」


 村長とヘリオスは頷く。セレナはぴんと来ていない。


「バイバルス将軍は帝国の戦力増強の為に魔族の研究をしている。その研究をしているのが俺達なんだ。ヘリオスは間違いなく現在は人間だ。今、ヘリオスに術をかけて、魔族に還らないようにする事が出来るのだ。この蛇女は俺達の研究材料となることを誓っている」


 スキヤキは両手を広げて、演説を続ける。


「極秘で研究は行うので、ヘリオスの事、この蛇女の事は秘密だ。村人も怖くて、ラミアの事を口にするはずなかろう」


 スキヤキはわざとらしい咳払いをする。


「ヘリオスとセレナの結婚も認めてやれ。よいか、私の言葉はバイバルス将軍の言葉と思え」




 なんだかんだで決まった。新しい勇者ヘリオスが、森の守り神に強く願い出て、七人の恩赦を勝ち取った。

 大昔のように年に一回、ラミアへお供えを差し出す事。ラミアがこの村に豊穣と安全を提供する事。

 今回、村で見た出来事は秘密であり、漏らせば死罪でと最後に伝える。


 村長は渋々従っていた。帝国のお偉いさんと争う事なんて出来ないのだ、正しい村長として。

 娘が少なくとも()()と結婚するのも確定して、複雑な心境の父親でもあるが。


 村を出て、街道での旅を再開した三人は思い出しながら笑っている。


「なあ、スキヤキ。よくあんな名前を思いついたな? 」


「あー、あれ? 錬金術特殊研究部隊? 」


「バイバルス将軍の下ってところが良かったなん」


「確認も出来ないだろ? 」


「あたしとしては、ヘリオスが魔族に還らないとわかって、もうどうでも良くなったよ」


「魔族になると能力、全然変わったりするのか? 」


「いや、細かいところを知りたかったのさ」


「本当に錬金術特殊研究部隊があって、そこの研究員みたいだな」


「真理の追求は美しいだろ? 」

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