002話 初めてのじゃんけん勝負
「なっ!こんな幼い子に対して公式じゃんけんを挑むんですか!貴方はそれでも大人なのですか!」
シスターは声を荒げて変質者に取って掴まん勢いで言ったが変質者はニタリと笑ってこう返した。
「大人だからこそ手段を択ばないのですよ」
「あ、貴方って人は」
呆れて言葉も出ないシスターに勝ち誇ったような顔をしている変質者。この世界について何も知らない状態だったのならば、じゃんけん如きで何を声を荒げて討論しているのだと思っていたかもしれない。
この世界にも規律と言うのがある。それは現代世界とも似たような規律もあるが、群を抜いて異色な規律が一つある。それがじゃんけんに関しての規律だ。
この世界ではじゃんけんを挑むと言う事は決闘と同等のものらしい。どうしても当事者同士で解決できない事がある時は神聖なる手を使って解決するのが始まりで、それがどこからか競技付けられて、じゃんけんになったらしい。
じゃんけんは二通りの種類がある。一つは賭け事をしない非公式のじゃんけん。そしてもう一つが賭け事がある、公式のじゃんけんだ。
公式じゃんけんの勝者は勝負前に提示した条件を得られ、負けた相手は提示された条件に従わなければならない。極端だが死ねと言われれば死ななければいけないと言う事だ。この場合ソフィリアは変質者の言う通りにしなければいけない。
まぁじゃんけんだ。確率で勝てるだろうと侮ってはいけない。この世界のじゃんけんは特殊で従来の拳でグー、チョキ、パーと手で形を作り、勝ち負けを決めるじゃんけんに、魔法の属性を追加しなければいけないのだ。
ルールは合図と共にじゃんけんをし、どれかを繰り出すだけ。勿論、グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つのが大前提だ。そこに属性魔法が加わると火は風に強く、風は土に強く、土は水に強く、水は火に強いと言った形になる。陰は火と風に強いが土と水に弱く、陽は土と水に強が火と風に弱い。陰と陽が出た場合は特別なルールが適応される。
例えばグーの火とチョキの水だとしようか。この時点でグーの勝ちだが、属性相性がチョキの勝ちである。これもまた陰と陽と同じの特別ルールが適応されるのだ。
その特別ルールが己の核となる属性だ。もしも相手の属性よりも有利だった場合は例の通りならば合いことなる。陰と陽がどちらとも核ならば、それは従来のじゃんけんになる。あいこ同士で属性が勝ったのなら、属性が勝った方が、半勝ち星となる。つまりもう一度同じ手で勝てば勝ちになる。
最後に勝負回数だが、じゃんけん勝負はあいこを含めて三回勝負と五回勝負がある。全てあいこの場合はどちらかが勝つまでじゃんけんをすることになる。
じゃんけんのルールが適応されるのは属性判別された六歳からだ。それまでのじゃんけんはただのお遊び。
当たり前の事だが、じゃんけん勝負は挑まれても断る事ができる。だけどソフィリアは遺憾の意を示すために変質者に告げた。
「解りましたやりましょう」
「ソフィ!?」
シスターが驚きの声を上げた。私はソフィリア・バーミリオンとして、のんびりとした田舎暮らしをする未来をこの変質者に奪わせない為と、自分では何もできない私を六年間も世話をしてくれた、まるでもう一人の母のようなシスターに対して暴言を働いたこの変質者を懲らしめたいのだ。
「私が勝ったら貴方は手を引く。貴方が勝ったら私は貴方が思ういい結果とやらに尽くしましょう。三回勝負でどうですか?」
「いいでしょう。実にいい。では、さっそく始めましょうか」
変質者が指を鳴らすと、どこからともなく白髪で年を召しているが背筋を張った男性が現れる。男性は執事のような燕尾服を着用しており、糸目で私と変質者を交互に見た。
このダンディズムが体から溢れるお爺さんは公式じゃんけんの審判だ。公式じゃんけんが始まると必ずと言ってどこからか現れるらしい。文献で読んだ時は困惑したが、魔法がある世界だ、そういうのもあるのだと、また割り切った。
「わたくしは審判を務めますエリシュオン協会、公式じゃんけん審判者、ラダマンティウス・アソリティと申します。お見知りおきを」
枯れた渋い声で自己紹介をしてからラダマンティウスは頭を下げた。この場にいる全員に挨拶しているのだろうが、 自意識過剰なのかソフィリアに向けて挨拶しているように思えてしまった。
「貴方の事は存じていますから、始めてください」
目の前の物にしか考えが及んでいないようで、血走った眼が私の上から下を見つめている。賭けの報酬をこの変質者を投獄に変えてやろうかな。
「では、只今より、エリシュオン協会公認、公式じゃんけん勝負、ソフィリア・バーミリオン対シュトロイゼル・シュクラテスの対戦を開始します。両者公平に御手に恥じぬ戦いを」
この審判者が現れて、この恒常な口火が切られたのならばもう後戻りはできないと言う事だ。それを解っているからシスターも、もう一人の中年協会員も口を出してこようとはしない。
緊迫した空気の中、シスターの生唾を飲む音が聞こえた。
「では!一回戦でございます!じゃん!けん!ほい!」
ソフィリアと変質者は同時に手を相手の前へと出した。考える間は十分にあったが、一世一代の事が掛かっているのと公式と言う単語に少し緊張してしまい、思っていた火属性を練れずに、違った属性で出してしまった。
「ソフィリア様はグーの風。対してシュトロイゼル様はグーの火。よってシュトロイゼル様の半勝にございます!」
あっぶない!もしも前提のじゃんけんで負けていたら終わっているところだった。
魔法なんて全く使った事もないし、教授してもらった事も無いので、感覚で出す事しか出来ない。もっと自身で研鑽を積んでおくべきだったか。
「ソフィリアさん、学校へ行けば魔法の使い方が習えますよ」
この男はソフィリアが魔法を上手く使えない事を解っていて勝負を挑んできているのだ。
それがどうした。こちらも不利を承知で勝負を受けているのだ。
この勝負はこちらの方が不利なのは最初から分かっている。不利な要因は三つある。まず一つ目はこちらが変質者の属性を知らない事。二つ目はこちらが魔法の上手な使い方を習得していない事。そして三つめが相手にこちらの属性が知られている事。
まぁ通常だったのならば運でしか勝てない程不利なのだが、幸運なのかこちらの核となる属性は六属性全て。相性が悪い属性を出さない限りあいこにすることが出来る。それは強みであり、勝利につながる要素だ。
必ず勝ってみせる。
「準備はよろしいですか?二回戦でございます!じゃん!けん!ほい!」
手に陰の魔術を込めて放つ。手から黒いオーラが出て来てチョキと共に変質者に突き出してやった。
「ソフィリア様はチョキの陰!対してシュトロイゼル様はチョキの陰!よってあいこでございます!」
む、属性は違えど、またあいこか。これはこちらのペースに持ち込んでいるのではないだろうか。次で三回目。決着を付けようか。そうだな。グー、チョキと来ているので、裏をかいてチョキをもう一度出そう。
「よろしいですか?三回戦でございます!じゃん!けん!ほい!」
思った通りにチョキの陽をだすと、変質者の手を見てソフィリアは眉を顰めた。
「ソフィリア様はチョキの陽!対してシュトロイゼル様はチョキの水!よってソフィリア様の半勝でございます!」
自分の右手で作ったチョキと、変質者が作ったチョキを見比べる。三回連続であいこになる確率はそう高くはない、稀にあることだが・・・この三回勝負の結果に疑念を抱くのは容易い事だった。
まるでわざと四回目の勝負に持ち込まされたような感覚が否めない。
ソフィリアの内心を読んでるかのように変質者は口を緩ませる。
そこで確信した。あぁこいつイカサマをしているな。
チラリと横目でラダマンティウスを見やる。この翁もエリシュオン協会の人物で、変質者もまたエリシュオン協会の協会員。先程の会話からして面識もあるようで、イカサマを見逃すなんて赤子の手を捻るかのように造作もない事だ。
はっ、突然突拍子もなく現れたのも全て謀の内だったと言う訳だ。
「三回戦の内、三回全てあいことなりましたので、エリシュオン規定に従い、継続して試合を行います。両者異存はありませんね?」
変質者は頷く。一方ソフィリアは小さな手を頭よりも高く上げていた。
「ソフィリア様。どうかされましたか?」
発言権を与えられたことにより手を下げて発言する。
「この試合にイカサマはありませんよね?」
ソフィリアの発言にラダマンティウスは驚きもせずに答えた。
「えぇ、ありません。エリシュオンじゃんけん公式規定に乗っ取って行われておりますよ」
仲間かどうかを判断するために質問をしたのだが、この翁、表情だけで心の内を読ませてくるような相手では無かった。伊達に歳だけを食ってはいない。
「もし、イカサマあった場合はどうなるのですか?」
「もしも。ですか?その場合は厳しい処罰が下されますね。ですがご安心ください。イカサマをした時点でわたくしが試合を中止にしますので、わたくしはその為に存在しており、それに全力を尽くしておりますゆえ」
ラダマンティウスの言葉からは決して不正を許さない意思を感じ取れた。それは演技ではなく、信念だと言う事も重々承知した。だとすればただの確率論で片づけられる事象だったようだ。
「あぁ。ですが」
ソフィリアが結論を導き、この話題を一人終わらせようとした時にラダマンティウスが言葉を続けた。
「公式じゃんけんでは魔法の応用は認められていますよ」
「魔法の応用・・・ですか?」
「おや?ご存じでは無かったようですね。対戦が始まっておりますゆえ、事細やかに説明は出来ませんが、核となる属性魔法ならば対戦者に危害を加えない限り許されていますよ」
血色の良い唇が釣り上がったのが分った。
合点がいった。そういう事か。つまりは変質者は自身の核となる属性魔法を使用して、こちらが無知なる子供と侮って弄んでいたと言う訳だ。
馬鹿な人だ。
変質者は大きく咳払いをして自分に注意を引かせた。
「次の試合を始めてもらいたい」
一見冷静を装っている仕草も、この状況でその反応は焦っていると思われてもしょうがない。
「ソフィリア様、よろしいですか?」
「はい。続きをしましょう」
恐らく次で勝敗が決するだろう。変質者は焦って魔法を使って勝利しようとしてくる。その裏を突けばこの勝負は終わりを迎える。
私の安寧をこんな男に邪魔されたくはない。
私の平穏を犯させたくはない。
私はこの世界で温厚に、平穏に、健やかに暮らすのだ!
だから!
拳に属性魔法を宿し、雌雄を決する為に変質者と同時に突き出した。
「ソフィリア様はグーの火!」
変質者は勝ち誇った顔をしていた。なんたって奴の出した手は。
「対するシュトロイゼル様はパーの水!」
ソフィリアの出した手に悉く打ち勝つ手なのだ。
「あぁ・・・なんてこと・・・」
シスターが顔を青ざめさせて嘆くように呟いた。
「ふふふ、やった!やりました!神の御子を手中に収めました!なんたる幸運!なんたる豪運!神は私を教育者として先導者として選ばれたのだ!こんなにも誉なことはありません!今日は私の新たなる誕生日になった!」
脳からドーパミンをアドレナリンに生成する勢いで高らかに語り、演劇の舞台に立った人間のように変質者は回り出す。
「さぁソフィリアさん、私と共に都へと行きましょう!」
変質者はソフィリアに手を差しだす。もうこの誘いに断りを入れる事は出来ないはずだが、ソフィリアは口を開いてこういった。
「嫌ですよ」
場の空気が凍りついたのは誰にでも理解できた。騒ぎを聞きつけて塔の表にいたサラーサを含む年長組が子供達を連れて合流する。
「何を・・・言っているのかね?」
「だって、敗者の言う事なんて聞く必要なんてないでしょう?ね、ラダマンティウスさん」
「は?駄々をこねるのは年相応で愛らしいが、程々にしたまえ」
ソフィリアが手を出した時にはあぁ良かった、成功したと安堵した。何事も初めての事を成功できる人間はセンスの塊を持った天才型の人間か運を持った人間だけだ。
ソフィリアはどちらだろうかと、自問してみる。
「わたくし、まだ言葉を残しているのですが、シュトロイゼル様、よろしいですか?」
「あぁ、私への勝利宣言がまだだったね、存分に言いたまえ」
ラダマンティウスはニコリと笑顔を作って頷いた。
「では。ソフィリア様はチョキの陽!対してシュトロイゼル様はパーの水!よって!勝者はソフィリア・バーミリオン様!」
何の判定なのかを理解していないが、シスターが喜びの声を上げたので子供達も同様に喜び始めた。
「はいぃ?」
変質者は納得のいっていない声を出した。それもそうだろう、一度目の判定が自分の勝ちだったのだ。それがどうしてかソフィリアの出した手が変わり、自分が負けているのだから。
「公平を規す為にわたくしから説明しましょう。ソフィリア様は陽の属性の力をご使用なさり、光の屈折を自身の手に利用されました。シュトロイゼル様や、ご観覧の皆さまにはソフィリア様の出した手はグーに見えたでしょうが、実際はチョキを出されておられました。そうですね、この一手を名付けるなら屈折一心、でしょうかね」
舌ったらずのソフィリアが淡々と説明するのも締まらないのでラダマンティウスが代わりに説明してくれた。
「は、はぁ!じゃあどうして最初の判定で虚偽の判定をしたんだ!」
「虚偽?これはすみません、場を盛り上げるために敢えて言わせてもらいました。どちらにせよ、勝敗はじゃんけんをした時点で決まっておりましたので」
「ぐっ。あり得ない!この私が神の御子と言えど、子供に負けるなんて」
悔しさに顔を滲ませて変質者は唾を吐くように言う。
「なら、もう一度しますか?勝ったら先程の条件に何でも言う事をきくを追加してもいいですよ」
ソフィリアは業務内容を口にするかのように言った。
「あぁ!してやるとも!私もその条件でいい!審判!」
変質者の態度に辟易した様子もなくラダマンティウスが息を吸った。
「では、只今より、エリシュオン協会公認、公式じゃんけん勝負、ソフィリア・バーミリオン対シュトロイゼル・シュクラテスの対戦を開始します。両者公平に御手に恥じぬような戦いを」
再びお互い対峙して見合う。
「一回戦!じゃん!けん!ほい!」
繰り出される手は。
「ソフィリア様はグーの風!対してシュトロイゼル様はチョキの土!よって勝者はソフィリア様!」
ソフィリアの勝ちだった。変質者事シュトロイゼルは下唇を強く噛んでいる。
「なんなら、もう一回でもいいですよ」
「やる!」
それからじゃんけんをする度にシュトロイゼルは疲弊していった。最初の勝負から合わせて合計五回の勝負をしたが全てソフィリアの勝利に終わった。
「な・・・なぜ・・・」
変質者は地面に膝と手を付いて四つん這いになっている。大の大人が六歳児に五連敗を喫して心身共に憔悴し、初めて出会った時よりも痩せこけているように見えた。
どうしてソフィリアが勝てたのかを優位だった変質者は苦悩しているようだ。最初の勝負の勝因はラダマンティウスが言った通り光の屈折を使って"思っている事"とは真逆の手を出したのだ。
恐らく変質者の核となる属性は陰だ。陰の魔法は人間の精神を左右する魔法が多い。例えば気分を落ち込ませる、とか、心で何を思っているか視覚で見る事ができる、とか。変質者はソフィリアの出す手を予め見ていた。だからこそ、連続であいこにすることができたのだ。
変質者の敗因はさっさと試合を決着させなかったこと。ソフィリアに焦燥感を抱かせて年功の序列以外にも自分が力を持っていると誇示し、優位に立とうとした奢りで負けたのだ。
後は簡単だ。心を読むのならばそれを逆手に取ればいい。既に変質者は動揺すら隠せていない。動揺すらも隠せない人間の考える事を読むのはソフィリアにとっては容易だった。
それだけでも良かったのだが、念には念を入れて変質者と同じ手を使って勝ったのだ。
「さて、シュトロイゼルさん。でしたっけ?」
朧気だがシュトロイゼル・シュクラテスと呼ばれていた気がする。距離を詰めたくはないが、ソフィリアは四つん這いになって項垂れているシュトロイゼルに近づく。
シュトロイゼルは小さな影が自分の頭の上に出来た事と、呼ばれた事で項垂れていた頭を上げる。
シュトロイゼルの眼には自身が神の御子と称した幼女が年相応の純粋な笑顔を自分に向けていた。
「勝負ごとの決まりなので私は都には行きません」
エリシュオン協会の規定に乗っ取った公式じゃんけんの決定に逆らうことは許されない。それを知っているシュトロイゼルは瞳を潤わせて黙って頷いた。
「それでですね。貴方にはシスターを侮辱した罪と、大人らしくない態度と対応を改めて貰いたいんですよね」
「な・・・なにを?」
「二回目は同じ条件で勝負しましたが、三回目と四回目と五回目の勝負は私、勝利条件を設定していませんでした。ただ、やりますか?と訊ねて始めていました。そういうのってどうなるんですか?」
ソフィリアは白々しくないようにラダマンティウスに訊ねる。
「第三十六項に乗っておりますが、勝利条件を設定せずに勝負の決着がついた場合はそれ以降の勝利条件は無効です。但し、お互いの同意があった場合は勝利条件を設定することができます」
「ですか。では、大丈夫ですね」
シュトロイゼルがこれ以上の追及をされなくていいと安堵の表情をしていたのが、そのまま固まる。
「二戦目。何でも言う事をきくっていいましたよね。これに同意してください。そしてシスターに対して侮辱した言葉を謝罪してくださいね。大人らしい態度、期待していますよ」
シュトロイゼルはこれら全てを実行しなければならない。こうなることは二戦目の時点でソフィリアの頭の中で出来上がっていた。人の話を聞かない人間は直情型が多い。憶測の範囲だったが勝利を収めた事で判明したので、こういった計画を立てたのだ。
シュトロイゼルは横目でラダマンティウスを見るも、ラダマンティウスはか細く優しき糸目で事の顛末を見つめているだけだった。もう一人の協会員も助け舟を出すことは無く見ているだけだ。
観念したかシュトロイゼルは立ち上がってシスターの方へと振り向いて、この場にいる全員の前で頭を下げて謝罪をした。その謝罪は事務的な謝罪だったが、大人としての謝罪には相応しかった。
六歳児に公式じゃんけんで負け、大勢の前で謝罪をさせられ、恥の上塗りをされたシュトロイゼルはフラフラと覚束ない脚でその場を去ろうとする。
「あ、そうそう。最後の勝利条件は、私達に怨恨を持たず、報復しよう等と思わない事ですよ~」
承認したとの証なのかシュトロイゼルは無気力に片手を上げて姿を消して行った。もう一人の協会員も道具を持って慌てて孤児院から去って行ってしまう。
ラダマンティウスの姿はいつの間にか無かった。仕事が終わったら直帰とは、いやはや現代世界にいた頃の私に見習わせたいものだ。
こうしてソフィリアの初めての公式じゃんけん勝負は勝利で終わった。