01.プロローグ
初投稿です!どうぞ、生暖かい目で御覧ください。
「.....はぁ」
平日の夕方に、俺は自室のパソコンの前で溜め息を吐いていた。
夏休みという訳でもないし具合が悪くて療養中でもない、もちろん何かしらの理由があって休んでるという事でもない。
一年以上、俺は学校に行ってない。一学期の初日から突然強面の先輩に絡まれてしまい、数日後にはクラス全員からイジメられてから一度も学校には行ってない。
要するに簡単に言うと、俺は、森村 証は、サボり魔である。
「.....はぁ~~」
オンラインゲームをするのにも飽きて、俺はベッドの上に体を投げ出した。
改めて考えると、サボり始めてからずいぶん長い間引き籠っているんだなと思う。
イジメられても直ぐには諦めなかった。先生に頼ったり中学の友人に相談もした、だが誰一人助けてくれず、そしてついには俺の心は砕けちった。
そうして俺は現実逃避を始めた。
学年が上がれば絡んできた先輩も卒業して、クラスも変わるからイジメてきた同級生も興味を無くすだろう。状況が良くなってから学校に行けばいいさと自分に言い聞かせて。
経済的には俺一人の食費くらいなら余裕があったので、それから俺はほとんどニートと変わらない生活を送って来ている。
そして予想どうり、俺は一年経っても、二年経っても学校に行くことはなかった。この生活は怠惰で楽で、一度浸かると抜け出す気にならなかった。
学校には行かない、アルバイトもしない、家事もしない。そんなわけで俺は完全にニートの条件を満たしている。
「やっぱり、このままじゃ駄目...なんだよな。」
俺は家を出る事を、現実逃避を止める事を考えた。
ただそれと同時に、もしかしたら同級生や中学の友人に出会うかもしれないと考えた途端、イジメの恐怖が腹の底から込み上げてくるのを感じた。まるで高度数万mの綱渡りをしているような、そんな気分になり、俺はトイレに駆け込んだ。
「ッ.....」
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それから三時間が経った...筈だ。気分も立ち上がれる程度には良くなった....久し振りに動かしたせいか少し震える足を、一歩踏み出し、カップ麺やら菓子やらのゴミが散乱しているこの部屋の扉を開けた。雨が降っているので傘を持つ。
そうして二年振りに俺は、家を出た。
「こんなものなのか...」
年ぶりの外出に気分は晴れやか、しかし天候は良くない。数時間もすれば土砂降りにになるんじゃないかと思わせる程の悪天候。これまで、恐ろしいとしか感じなかった外出がこんなにもあっさりと達成出来た事に、肩透かしをくらった様な気分で近場のコンビニまで歩いて行った。
少しばかり嬉しく思う久方ぶりの風景を見て、目元に涙が浮かんできた。そのまま服で拭っても良いのだが、一応何か拭くものはないかと、ズボンの両ポケットを漁ってみる。...しばらく引き籠っていたせいか財布を持つのを忘れて、来てしまったことに今更気がついた。
一旦帰るか、と来た道を少しずつ慣れてきた足に力を入れて、小走り気味に家へと戻る事にした。帰る途中、やはりというか、ついに雨が強く降ってき始めたので急いで帰宅...
「ん?」
すると激しくなっていく雨の中、俺は誰かの言い争う声を聞いた。
喧嘩だろうか。
嫌だな、関わり合いたくないな、と思いつつも足は真っ直ぐ声のする方へと向かって行った。
「ーーーだから、アンタがーー!」
「オマエこそーーー!」
見つけたのは、二人の高校生の男女が痴話喧嘩らしき言い合いをしているところだ。
制服を見ると、どうやら俺とは違う高校の生徒らしい。ふぅ、と全身から力が抜ける様な気持ちでその二人の様子を見ていた。
と、俺はその瞬間に気付いた。
トラックが一台、二人に向かって猛スピードで突っ込んで来ているのを。それと同時にトラックの運転手がハンドルに突っ伏しているのを。
居眠り運転。
二人はまだ気が付いていないようだ。
「おい!お前ら、早くそこから離れろ!」
雨がだんだん激しくなってきて俺の声が聞こえていないようだ。
このままじゃ不味い。俺がなんとかしないと、と思った。
どうして俺が、とも思った。
ここで何もしないと、後で絶対に後悔すると直感した。
凄まじいスピードで突っ込んでくるトラックに跳ねられて、ぐちゃぐちゃになる二人を見て、後悔すると直感した。
助けておけばよかった、と。
もう後悔しないように、二人に向かって無我夢中に走った。
二年振りの全力疾走で両足の骨が悲鳴をあげる、だが走った。気にも留めずにひたすら走って、二人の元にたどり着いた。
制服の襟元を力一杯引っ張り、二人を車線上から逃がした。
よし、間に合った。
そう思った瞬間、トラックが俺の目の前で来ていた。
俺の何十倍もの重量をもつトラックに撥ね飛ばされ、コンクリートの外壁に頭を打ち付けた。そこで俺の意識は途切れた。
意識が真っ白になる寸前、これまで考えた事のないような言葉が脳裏に過った。無自覚なのか本人は一切気付いてないが。これまで溜めに溜めた、隠れたストレスが狂気の本音を深奥で響く。
俺の自由になれば、こんな事にはならないのに、と。
『転生条件:承諾』
そう、無機質な声が、虚しく響いた事には、誰も気がつかずに...物語は始まった。
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「ーーーーニュースです。先日、森村 証さん十八歳が居眠り運転をしていたトラックに撥ねられ、昏睡状態でしたが今朝、死亡を確認しました。トラックは時速七十kmでーーーー....」
予想以上にキャラの立ち位置固定が難しい...