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瓦割り





女二人、男が一人。

女達はいつのまにか消えていた。

男は後ろに下がってサポートに徹するつもりらしい。

自身の周りに多数の兵士達に守らせて此方を睨んでいる。


「おーい、そこの優男!この前の威勢はどうしたよ⁈ハッタリか⁈」


此方の挑発には乗らないらしい。

ものすごい顔で睨みつけてきてはいるが、直接攻撃を仕掛けるつもりはないらしい。

もっとも、視線で人を殺せるならば、きっと俺は既に十回は殺されているだろうが。


「うおっとぉ!危ねぇだろうが!」


さっきから只管攻撃に晒されている。

流浪の姉妹は姿を変えて攻撃をしている。

二人共、人型に耳をつけただけの姿から、どういう理屈かはわからないが、より獣寄りの姿になっている。

明らかに骨格まで変わってしまっている気がする。

そして速さも、強さもだ。

元々の身体能力が高い獣人が更に強くなって、そしてついでに魔法の強化までかけられている。

はっきり言って状況はかなりまずい。

先程からほとんど勘だけで、二匹の猛攻を耐えていた。


金砕棒を真横に振り抜く。


女の片割れが伏せて金砕棒をやり過ごす。


そのまま逆立ちの要領で全身のバネを使い、顔面に向けて蹴りが飛んで来る。


頭突きの様にして、わざと額をぶつける。


額から一瞬の血飛沫、直ぐに傷がふさがる。


首を右に傾ける。


顔があった場所に何かが猛スピードで通り抜けた。


おそらくはもう片割れの右拳。


次、しゃがむ。


おそらくは足。


足が目にも留まらぬ速さで通り抜けた。


次は何処だ?


なんとなく正面から嫌な予感。


飛び上がって回避。


当然無防備に。


一瞬で地面が光る。


やっべぇ。


数日前にも見た、凶悪な剣山。


金砕棒を思いっきり叩きつける。


ド派手な衝突音と衝撃波。


一瞬で剣山が消え去り軽いクレーターの様なものが出来上がった。


着地と同時に金砕棒をフルスイング。


僅かに手応えアリ!


振り抜くと女の片割れが吹き飛んで、地面をゴロゴロと転がっていった。


が、すぐに立ち上がろうとしている。


仕留め損なった!けど好機!


そう思い一気に距離を詰める。


どうやら先程は右腕で防がれた様だ。


しかしそれでも、その右腕はぐしゃぐしゃにへし折れていた。


たとえ魔法で治療をしようとしても、すぐには治らないはず。


「まずは一人目」


金砕棒を振り下ろす。


女の絶望した目があった。


あと少しという所で横から風が。


目の前の女が掻き消えた。


風魔法かよ!


前回の戦闘で女が使っていた、自身に風をぶつけて急発進をする妙技。


それを今度は、仲間に直接使って攻撃をずらしやがった。


そして更に嫌な予感が。


首筋がチリチリする。


多分今風魔法を使ったのは負傷していない方だ。


そして無傷の女は次に何をするか。


それは当然、隙だらけになった獲物を仕留めに来るはず。


今俺は金砕棒を振り抜いた体制。


何処だ。


何処に来る?


ガラ空きの脇腹?


機動力を削ぎに足?


それとも一気に急所か?


時がゆっくりと流れる。


女の腕が、残像を残しながら近づいてくる。


手には天然の凶器、爪が。


迫って来るまで残り零点三秒。


三、爪が近づいて来る。


二、軌道は首筋。


一、着弾点をずらすために肩を上げる。


零、肩を掴まれた?


女がニヤリと笑った気がする。


本命は違った?


そして衝撃。


体がバラバラになりそうな程の衝撃。


本命は脇腹か。


爪ではなく膝が突き刺さっていた。


ミシミシ、を通り越してバキバキと音がする。


痛みは脇腹から胸、鳩尾へ。


折れた肋骨が内臓に突き刺さったのかもしれない。


身体硬化をかけているのにこれほどの深傷を負うとは思わなかった。


流石は獣人。


気合が入っている。


でもまだ大丈夫。


心臓が止まらなければ魔法でなんとかなる。


頭をやられなければ、魔法でなんとかなる。


そんな事を思った矢先、追加の衝撃が襲う。


今回はパァンと破裂する様な音が聞こえた。


おそらくは魔法と打撃の合わせ技。


打撃をし、更にそこから衝撃波を打ち込む二段構えの技。


一瞬だけだが重たい俺の体が浮き上がり、ほとんど真横に弾き飛ばされる。


衝撃で金砕棒が手から離れてしまった。


グベッ、と吐血をしながら岩に向かって吹き飛ばされる。


大丈夫、まだいける、かな?


「今度こそ死ねぇ!」


さっき仕留め損なった女が何事かを叫んだ。


やたらと嫌な予感がする。


案の定、これからぶつかる岩が淡く光っていた。


磔なんて流石に勘弁だわ!


そう思い飛ばされながらも思いっきり地面に向かって蹴りを入れた。


吹き飛ぶ勢いが削がれた。


もう一丁。


今度は右拳を地面に叩きつける。


傷めた脇腹と内臓が悲鳴を上げ、痛みから逃げるために脳が勝手に意識を手放そうとするのを無理矢理意地で押さえ込む。


無茶をしたおかげでどうにか止まることはできた。


が、かなり状況が悪い。


悪寒。


左腕を上げる。


女の右脚が着弾。


お返しとばかりに右の貫手。


皮一枚で避けられる。


またもや内臓が悲鳴を上げた。


治っていく途中で動きだす所為で、治った端から傷つき痛みを与えて来る。


突然の嘔吐感。


口の中に血の味が広がる。


女の左拳。


敢えて頭突きをする様に眉間で受ける。


脳みそが揺れる。


脳震盪で揺らぐ視界の中で、半ば無理矢理女の左腕を掴んだ。


左に気配。


首から上だけ左に向ける。


相変わらず煩そうな顔をした、左腕を負傷した女がいた。


身体能力が高い分、何処か攻撃が雑になっている。


ほら、今もそんなに腕を振りかぶったら、隙が出来てしまってるじゃないか。


女の攻撃が動き出して避けれなくなってから、口の中に溜まった血を、毒霧の様に顔に向かって噴射する。


虚を突かれた女はモロに顔面に血の毒霧を受け、動転している様だ。


その女目掛けて、思いっきり真上からもう一人の女を叩きつける。


どうん、という音と共に二人を地面に叩きつけた。


今度こそ、手応え有り。


気絶したか?


でも、まだこいつらは死んでいない。


こいつらが動きだす前に。


重なって倒れているこの一瞬のうちに。


トドメを刺さなければ。


ほぼ真下への攻撃。


記憶にあるのは昔テレビの中で見たパフォーマンス。


左腕を振り上げる。


「セイヤァ!」


瓦割りの要領で、ボヒュッ、という音と共に左の手刀が振り下ろされた。


そしてその左の手刀は女達に襲いかかることはなかった。


俺の目の前には血飛沫と、左手が宙を舞っていた。







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