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口は災いの元だと二度目の人生で知る。



「面をあげよ」


だだっ広く、至る所に贅を尽くした謁見の間。

その中でたった一人の場違いな男。


……当然俺だ。


部屋の中は息が詰まりそうなほど厳粛な雰囲気で満たされており、その所為で下手に動く事も出来ずに酷く退屈だ。

目の前には豪奢な椅子と、それに座る偉そうな男、つまりは王座とこの国の王。

そんな中、俺に味方は居なかった。


………………………帰りてぇ。


心の中は少しの緊張と、多くの面倒臭さで満たされており、この部屋に入る前に閣下から言われた「楽しんでこい」、なんて実行できそうもない。

そもそもが何を楽しめば良いのか?

王侯貴族との腹の探り合い?

そんなものはむしろきっぱりと御免被る。


…………………………煙草吸いてぇ。


例え現実逃避をしていても、本当は現実からは逃れられない。


目の前にいる男から発せられる雰囲気は、まさに覇王と言って差し支えない風格を漂わせていた。

特徴的なのはやはり目、だろうか。

紫色の目をしている。

そして初めて拝謁するのにどこかで見たことがある。

具体的には昨日の木の上で。

雰囲気は全く違うが見た目は一緒。

どちらがあの男の本性だろうか。


やばい不敬罪で殺されるかも。

この国の名前ってなんだっけ?


もう色々と話にならなかった。


「名は何と言う?」


片肘をついた男は、昨日とは打って変わった力強い声でそう問うた。


……昨日はあんなにナヨナヨしていやがったくせに。


極力顔と態度と声に感情を載せない様に努めながら自己紹介を行う。

というか俺の名前を事前に聞いていないのだろうか?


「お初にお目にかかります。冒険者、ロイドと申します」


自分でも大丈夫かと思うくらい怪しい敬語で答える。


……後日不敬罪で呼び出されたりしないよな?……そもそも俺はここから無事に帰れるのだろうか。


「そうか、私はジークフリートだ。国王をやっている」


やっぱり昨日、木の上で聞いた声だ、と思った。


「お前の噂は聞いているぞ。青鬼なんぞと大層な二つ名で呼ばれているらしいな」


何だよやっぱり俺の事聞いてるんじゃねぇかよ。


若干の反抗心から、ついそんな事を考えてしまった。


「お前、昨日私と何処かで会った気がするのだが?」


ジークフリート王がニヤニヤしながら問いを投げかけてきた。

突然の話題に思わずむせそうになる。


「……陛下、私の様な下賎な民が陛下とお会いする機会などある訳が……無いです」


あぁ、……敬語が本格的に怪しくなってきた。


「ふうん、まぁいい」


そしてこの男、ジークフリート王は、明らかに俺で楽しもうとしている。

最悪だ。

猫が虫を遊びながらゆっくりと殺す様に、こいつも俺で遊んでから捉えるのかもしれない。

思わず溜息をつきそうになるのを咄嗟に抑え込んだ所為で息が詰まった。


「早速だがな、ちょっと戦争に行って来てくれ。攻め込まれそうでやばいところがある」


急に風向きが変わってきた。

此処までの話の流れが思いっきり無視されて、思いもよらない話題になってしまった。


……何だそりゃ?……なんで俺?……そもそもがちょっと戦争に行ってこいって何だよそれ?


そんな俺の疑問が顔に出ていたのだろう。目の前のジークフリート王が怪訝な顔をしていた。


「……侯爵から何も聞いていないのか?」


「聞いてません」


ジークフリート王は深く溜息をついた。


「……全くあの狸親父め……」


閣下は陛下からも腹黒狸親父認定をされているらしい。

そんなどうでもいい感想が頭をよぎっていた時、ジークフリート王は更に意味不明な言葉を重ねてきた。


「お前をSランクにする為の箔付けだ」


……全く意味がわからない。

箔付けって何だよ。

そもそもが、何故俺が化け物扱いされるSランクにならなければいけないのか。


「……どういうことですか?」


「そのままの意味だ。当然断れんぞ。最も新しい化け物よ。……不満そうだな」


当たり前だ。

何で俺が化け物の仲間入りしなければならないのか。


「いいえ滅相もございません」


不満は抱いているが一応嘘でも否定しておく。

どうせ相手にはバレているだろうが。


「……あぁ、そういえば昨日私が庭で休んでいた時にな」


「全力で事に当たらせていただきます。」


たった一言で詰み。

俺に逃げ道は無かった。


「……そうか、では詳しい話はこいつから聞いておけ。私は仕事が残っているのでな。失礼させていただく。万事うまく行ったらまた会おう。お前がSランクになったあかつきには盛大に祝ってやる。健闘を祈る。新しい化け物よ」


ジークフリート王はそう言って退出して行った。

残されたのは室内に配置されていた兵士達と、燃え尽きた俺。


あぁ、……面倒な事になった。


人生二度目にして、口は災いの元を身に染みて感じた。


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