プロローグ
空は晴れ、放射冷却で辺りはすっかり冷え込んでいる。
場所はとある関所。
その巨大な門の前で、俺は自分なりに不敵だと思える笑顔を浮かべていた。
二つ名は青鬼。
バケモノに両足ともどっぷり浸かった、最も新しい伝説。
そんな本来の俺からかけ離れた噂が広がっているせいで、こんな辺鄙なところまで連れてこられた。
今俺が立ちふさがっている道は一本道。
この先に進むには、立地上この門を通らなければ先へは進めない。
門の両端は険しい山になっており行軍に適していないからだ。
俺は壁に立てかけておいた特注の金棒を担ぎ前へ数歩歩みを進めた。
手だけでなく、全身にズッシリとした重みがかかる。
今ここに味方はいない。
皆関所の中に避難させている。
兵士達を避難させているとは何だか妙な感じがするが、いた方が邪魔だ。
巻き込んで無駄な人死にが出てしまうかもしれない。
それならば関所の中で防衛に徹しておいた方がまだマシだろう。
相手は二千の大群。
間違いなく乱戦になる。
しかも敵の中には将軍クラスがいる。
強敵は三人。
うち二人は女。
流浪の姉妹と呼ばれる凄腕の冒険者。
どうも最近敵国の軍属となったらしい。
女とやりあうのは性に合わんな、とは思うが仕事だから仕方がない。
溜息と引き換えに煙草に火を点けた。
敵の号令と共に命知らずが向かってくる。
まるで地震の様に地響きが起こる。
相当怒っている様だ。
そりゃそうかとも思う。
たった一人でお前ら全員相手してやると言っている様なものだ。
おっさんを真似て、紫煙を吐いて笑みを浮かべた。
そっちが仕掛けてきたんだ。恨みっこ無しだぜ?
体が水色に光った。
戦いの準備完了。
敵兵達も身体が青く光っている。
おそらくは強敵の中の唯一の男。
これだけ広範囲にわたって強化をかけれるのは流石だと認める他ない。
が、俺とどっちが強いかな?
飛び込んできた敵兵を、野球のフルスイングのごとく、金棒を全力で振り抜いた。
遠くに吹き飛んでいくかと思ったがもっとグロかった。
真っ二つに分かれて辺りに肉片が飛び散った。
だがおかげで敵に迷いが発生した。
その迷い、此方としてはタイミング良く、敵側としてはタイミング悪く発生した。
密集体形で進んできた男達は、前の方が止まってしまったせいで行軍が詰まってしまい、結果将棋倒しが発生した。
「なっさけねぇなあ!」
そう言って少しだけ敵の中に入り込み金棒を振り回す。
槍と金棒がぶつかる。
剣と金棒がぶつかる。
鎧と金棒がぶつかる。
幾度と無く火花が散る。
しかし単純に重量で勝る金棒と、鬼の肉体の前ではなすすべもない。
人が次々と物に変わっていった。
「全員退がれ!」
敵将軍の号令がかかる。
追撃しても良かったが背筋がゾクッとした。
後ろに大きく飛び退ると、元いた場所が一瞬パッと光り巨大な剣山が飛び出した。
あぶねぇなぁ。あれ刺さったら下手すりゃ即死じゃね?
そんな事を思っていながら敵を見やると、三人前に進み出てきた。
見た感じ、近接戦闘二名に補助魔法使いが一名。
「真打登場、ってところか?」
こちらの問いかけに返される言葉はない。
眠たげな目をした女二人がユラリと一歩前に進み出てきた。
中々良い女だ。
褐色の肌をしたショートカットの女が二人。
同じ顔をしている。
「おろ?双子かい?」
「黙れ」
「邪魔だ」
冷たく突き放した言葉と共に、姿を変えた女が二人躍り出てきた。




