最終日 昼 其の一
中々執筆時間が作れない為、ちょっと話が小出しになるかもしれません。
最終日、昼
ジャリッ、と足音を鳴らして、ロイドと二人、王城の前で立ち止まる。
街並みはあまり覚えていなくても、城の事は何となく覚えていた。
そして今、記憶の中の馬鹿でかい城門が、歩いて十数歩の所にある。
相変わらず頑丈そうだと思いながら、緊張を紛らわす為に煙草を取り出し火を点ける。
いざ彼奴と相対して説教をするとなると、どう話せばいいのかわからず呆然としてしまう。
国を捨てて他人に責任を押し付けた奴が今更何を偉そうに、とか思ってしまう。
いつもの余裕が何処かに行ってしまったみたいだ。
だが此処に来てしまった以上、逃げるわけにもいかない。
とりあえず出会い頭にギュンターの野郎をぶん殴って、その勢いで説教して、怒られないうちにずらかるしかねぇか。
我ながら計画の中身がスッカスカだな、と思い溜息と共に紫煙を吐き出す。
残念ながら心の不安感は紫煙と共に消えていってはくれなかった。
「行きますか。ひとまずおっさんにも筋肉増強と身体硬化、自動回復かけときますね」
「おぉ!ありがてぇ!」
あえてデカイ声を出す。
少しでも緊張を紛らわしたかった。
「強化は慣れてないと調子狂うと思うんでちょっと弱めですけど」
「じゃあちょっと準備運動だ!」
「危ない!おっさん!殴る相手間違えてる!」
「知るか!避けるな!」
「危ないっすよ!」
危ないとか言いながらも、ロイドはヒョイヒョイと攻撃を躱していく。
全く当たらないが、それで構わない。
あくまで目的は緊張をほぐす為だから。
ロイドもそれをわかっているようで、いちいち大袈裟に避けていく。
「コラァ!お前らこんな所で何を騒いどるかぁ!」
お巫山戯が過ぎたようで、門兵の中の一人が此方へ怒号を上げながら走り寄って来る。
「あっ、ほらおっさんが騒ぐから門兵に気づかれちまったじゃ無いっすかぁ!」
「今更コソコソ出来るわけねぇだろうが!」
「だから貴様らこんな所で騒ぐなと言っとるだろうが!」
こうなったら仕方がない。
突撃だ。
「うらぁ!行くぞ!」
「あっ!ちょっ!待って!」
「貴様ら何のつもりダバラッ⁈」
挨拶がわりに一人目の顎に向かって飛び膝蹴りをかます。
そのまま空中で無駄に二回回転して着地を決める。
魔法のお陰で体が軽い!
普段は出来ない動きが出来そうだ。
折角だからこのまま全力で楽しんでやる!
軽い体のお陰で気分が高揚して来た。
全力疾走で城門まで突撃だ!
だが城門は閉まっている。
燃やしてもいいが人を巻き込んでしまうかもしれない。
出来れば人死には出したくなかった。
「ロイドォ!」
そしてこんな時は筋肉馬鹿の出番だ。
「イエッサー!」
変な返事を叫んでロイドが城門へ肉薄する。
「貴様ら何のつもりだ⁈」
「見ての通りだ馬鹿野郎!」
ロイドが叫び声と共に右手を城門へ叩きつける。
バゴォン!と何かとんでもない物がぶつかった音が響き渡る。
そして門兵共があまりの光景に思考停止に陥った。
僅か一撃で馬鹿でかい城門の四分の一が吹き飛んだ。
「もう一丁!」
次は右足の飛び蹴りを叩きつけた。
また轟音と共に城門の四分の一が吹き飛んだ。
「よいしょお!」
次は左足で。
「はい、最後ぉ!」
最後は左手一閃、思いっきり城門吹き飛ばした。
相変わらず出鱈目だ。
俺も此奴との付き合いがもっと浅かったら、門兵共と同じ様に間抜け面をぶら下げていただろう。
「門兵は放っておいてサクサク行くぞぉ!」
「イエッサー!」
呆然としている馬鹿共は放っておいて、城内へと続く道を走る。
「侵入者発見!」
「そいつらを止めろぉ!」
「だぁっ!もうかよ!」
正面からワラワラと兵士達が集まって来る。
運が悪い事に皆仕事熱心らしい。
……ギュンターの野郎、いらん事しやがって。
有能なんだからもうちっと手ェ抜きやがれよクソが。
不幸中の幸いは混乱が収まっておらず、組織だった動きが完璧ではないことくらいか。
……まぁ、例え完璧でもゴリ押ししか方法は無いんだがな。
「貴様ら何者だ!」
「通りすがりの元王子様だ馬鹿野郎!」
「何を言っている!」
「自分でもわかんねーわ!」
すれ違いざまに膝蹴りを入れて隊長っぽい男を黙らせる。
ふとロイドはどうしただろうかと探してみると、豪快に笑いながら兵士達の中心に飛び込んでいっては兵士達を蹴り散らしていっていた。
クルクル回りながら攻撃しているその姿は、まるで踊っているかの様で、何処からか陽気な音楽が聞こえてきそうだ。
……なんかたのしそうだな。
溜息を一つついて、俺は先を急いだ。




