最終日 朝
最終日、朝
早朝、鳥の鳴き声で目が覚めた。
チュンチュンみたいな可愛らしい囀りではなく、ギャァギャァ!と全力で不機嫌そうな鳥の声だ。
目を開けて上を見上げると、小さな子供位の大きさの鳥が旋回していた。
何だよ文句あんのかよ朝飯にするぞコラ。
心の中で見知らぬ怪鳥に喧嘩を売りながら、煙草を取り出し口に咥えた。
辺りはまだ暗く、お日様が顔を出すにはちょっと早い時間。
最近雨が続いていた所為か、段々と朝晩の気温が下がっていて、気がついたら肌寒い。
ブルリと一震えして、地べたに転がっている襲撃者共を見た。
結局あの後は、そのまま野宿をする羽目になった。
襲撃者共は傍で寝かせてある。
ロイドと交代で寝ずの番をして、此奴らが反撃をしない様に、目がさめる度に夢の中へ行ってもらった。
巨木の下に移動し、ガチャガチャと豆茶を淹れる準備をしながら煙草に火を点ける。
朝一番の煙草に頭がクラクラして、思わず椀を取り落としてしまった。
紫煙を鼻から吐き出すと、横から足音を立ててロイドが歩いて来た。
「おはようございます。これ朝飯です。火、良いっすか?」
「おう。……それ、食えんのか?」
朝飯を調達しに行ったロイドが手にぶら下げいたのは、先程不機嫌そうな鳴き声をあげていた怪鳥と同じ鳥。
見た目は明らかに不味そうであった。
「鶏肉だから大丈夫でしょ」
「いや、……あのな?別にまた街中に入って飯食っても良いんだぞ?」
「……どうしましょう。此奴殺しちゃいましたよ」
ロイドは如何にもしまった!みたいな顔をして額に手を当てている。
最近此奴はいちいち感情表現がやたらとでかい。
だがそれがやたらとサマになっている。
「その辺に捨ててこい。美味いなら他の動物が食うだろ」
「不味かったら?」
「土に還って木の餌になるさ。とっとと捨ててこい」
「へーい」
「っと、その前に水出していけ。水場探すのも面倒だ。お前も豆茶、飲むだろ?」
「了解です」
「此奴らどうします?」
ロイドが怪鳥を捨ててきた後、夜明けの空を肴に豆茶と煙草で一服した。
徐々に強くなってくる光に、空気中の水分と紫煙が反射しキラキラしている。
たまにはこうやって早起きするのも良いかもしれん。
そんな事を思いながら熱い豆茶に口をつけた。
「傷は治してやれ。んでもって縛って眠らせておけ」
「良いんすか?」
ロイドが意外そうに聞き返してくる。
昨日の夜の一件から、俺は此奴の中で拷問が平気な血も涙も無い冷血親父になっている気がする。
実際、俺自身拷問に対してそれ程忌避感があるわけでは無いが。
正確には慣れたと言った方が近いかもしれない。
俺はむしろ、骨の折れる音や感触の方が苦手なのだが。
俺とロイドは、酒豆茶煙草好きという以外は全て真逆なのかもしれない。
「此奴らが生きてようが死んでようが結果に対して差はないだろう。だったらいちいち殺すのもしのびない」
「了解です」
襲撃者共を一度治療し、もう一度念を入れて昏倒させる。
これで暫くは起きないだろう。
森を抜けてもう一度王都へと入った。
煙草の吸える適当な店に入って、豆茶と軽食を注文する。
店の塗装も備品も全てが無難な店。
その無難な店の隅っこの席を取り、無難な椅子に座って辺りを見回す。
比較的早めという事もあり、店内はガランとしている。
先に運ばれてきた豆茶の水面をじっと見ながら、煙草に火を点け考えを巡らす。
襲撃者共を拷問しても、重要な情報は大して得られなかった。
あえて言うならば、遠征の指示は王が直接出した事、そしてメルヒオルの能力に関しての二つ。
もっとも、メルヒオルの能力に関しては、実際に使える魔法の属性は光以外にもあり、隠蔽しているのだと。
その可能性はかなり高いと思われる。
しかしそれだけ。
ゼンジェヅ塩湖遠征の目的だけが全く出てこなかった。
「何か良い案出てきました?」
「結局一晩考えてもよくわからんかった」
そう言って思いっきり深く紫煙を吸い込み、体の中の空気全てを絞り出すように全部を吐き出した。
「だからとりあえず、一回会ってぶん殴る」
「そうこなくっちゃあですね。それじゃあ目一杯飯食って戦闘準備しなくちゃ」




