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煙草と魔法と格闘技〜固茹で卵気取りの転生譚〜  作者: ラーク
三章 太陽堕としと過去のしがらみ
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六日目 昼

六日目、昼


「あー気持ちわりー」


「もー、何やってんすか。自分で動くって言ったのおっさんでしょー?」


「いやー、調子にのっちまったよ」


あの後、洞窟の中での調子のまま強化魔法をかけてもらってそのまま走り出した。

楽しくなっちまって、ついつい無駄に飛んだり跳ねたり回ったりしてしまった。

結果、青鬼宅急便に運ばれていた時と大差無い、この有様である。


「はいはい、痛いの痛いの飛んでいけー」


「うっし、治った」


街に続く門の前でやっていた所為で、周りの視線が痛い。

気持ち悪い物を見る様な目。

そりゃあいい歳したおっさん共が戯れていたらそうなるか。


「それにしても、やっと着きましたね」


周りの視線など意に介した様子も無く、ロイドが煙草を咥えて火を点けた。


「だなー。何だかんだで此処まで長かったなぁ。」


ロイドに倣って俺も煙草を咥える。

火を点けて一口吸い込むと、清涼感のある香草が混ぜてあった様で独特な味がした。


ん、悪く無い。


そんな事を思って歯の隙間から紫煙を吐き出す。

クマナヴァ王国の王都、タマナパラスの壁を見上げて思わず唸る。


「……流石にすげぇな」


そんなありきたりな感想を洩らしてもう一口紫煙を吸い込んだ。


「……あんた元王子様じゃ無いんすか?」


「三十年も経てば流石に覚えちゃいねぇさ。聡明な王子様が、その日暮らしの冒険者になるくらいの長い時間だぞ」


「女にだらしないが抜けてますよ」


「あぁ、そうだった。その日暮らしの女にだらしない中年冒険者だった」


くだらない事を言い合いながら門を潜る。

目に飛び込んできた景色は、まさに重厚と言える物だった。

街の中の全ての建物が、四角形に切り出された灰色の石を積み上げて作られていた。

一般の店や住宅でも十分な高さや圧迫感がある。

これが城や教会ともなると、更にとんでもない圧迫感があるのだろう。

そんな事を思いながら街中を歩くと、あぁ、そういえばこんな感じだったかなぁ、となんと無く懐かしくなってきた。

本当にこんな感じだったかは覚えちゃいないが、なんと無く雰囲気がそうさせた。


「立派な建物がいっぱいありますね」


傍で歩いているロイドが、周りをキョロキョロと眺めながら聞いてきた。

単純馬鹿の此奴でも、風景を見るとなんかしらの感想を持つらしい。


「そうだなぁ」


「懐かしいですか?」


少し茶目っ気の入った表情でロイドが質問を投げかけてくる。

此奴はこんな遊びのある表情が似合うから、どこか憎めない。


「……よくわかんねぇ」


「そんなもんすか?」


デコに皺を寄せ、意外そうな顔をして返答してきた。

でかい図体の割にコロコロと表情が変わる。


「何が変わってて、何が同じなのかもわかんねぇわ。なんと無く懐かしい気がせんでも無い。まぁでもな、俺がいた時よりも民の笑顔が増えてる気がするな。オネーサン豆茶を冷えてる奴で二つね」


「じゃあ王様はいい人なんすかね?あっ、おにーさんその肉の串焼き、塩で四本ね」


「だと思うがな。じゃなかったらこんなに活気はねぇだろう。そこのお嬢さん、その何かで肉を挟んでる奴、二つお願い」


「じゃあますます謎っすね。おっちゃん骨つき肉二つ!」


「まったくだな。おい、あの広場で食うぞ」


お互いに会話をしながら、適当な屋台で昼飯を買う。

一通り買い揃えたところで、芝生の敷き詰められた広場で昼飯を食うことにした。

広場内の通路に沿って備え付けられた椅子に適当に座る。


「これ、美味いっすよ」


ロイドは早速口にしていた様で、何かの串焼きを差し出される。


「おぅ、ありがたい」


しばらく、お互い無言でもっさもっさ食べる。


うん、美味い。

ゼンジェヅ塩湖の塩がよく効いている。


豆茶を啜る。


うん、これも美味い。

疲れた体に豆茶の苦味が染み渡る。


一通り食べてしまい、食後の一服と煙草を吸う。


うん美味い。

腹が満たされての一服はまた一味違う。


「でですね」


「ん?」


「早速、何人かにつけられているくさいです」


いきなりか。


突然のロイドの申し出にそう思った。

コソコソとしていたつもりはないが、いくらなんでも早すぎる。


「はえぇなぁ。俺そんなに目立つか?」


「王子様の雰囲気が滲み出てんじゃないすか?」


ロイドが気にした風もなく、背もたれに背中だけでなく広げた両腕を預けて、咥え煙草で空を見ていた。

此奴がこれだけ砕けているのならば、然程大した相手ではないのだろう。

そう思い軽口を合わせることにする。


「んなわけねぇだろ。お前が目立つからだ」


「あっ、ひでーっすよ」


「んで、何人だ?」


念の為声をひそめる。


「おそらく三人です。どうします?」


ロイドも同じ様に声をひそめてきた。


「あっちの目的がわからねぇんだよな」


思わずボヤく様な物言いになってしまう。


まだこの街に来て悪い事してねぇんだけどな。


そしていきなり尾行されてるとなると、初めから俺達を狙っていた可能性が高い。


「泳がしますか?」


「そうだなぁ。今日の夜くらいまで泳がすか」


……ひょっとして今回の騒動、俺をおびき出す為だったりして。

……いや、無いな。

いくらなんでも効率悪すぎだろ。

……じゃあ何が目的なのかね?


益々意味がわからなくなって来た。

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