六日目 朝
六日目、朝
うっすらと目を開けると、茶色のゴツゴツした天井、そして薄暗い空間が見えた。
だが左側からは光が射している。
あぁそうか、……洞窟で野営したんだった。
今の自分の置かれている状況を思い出し、大きく欠伸をして、目をこすってたまった目ヤニを落とした。
煙草を持って、寝起きでバキバキな体をゆっくりと動かして、光に誘われ洞窟の入り口に向かって歩く。
「おぉ、お天道様」
雲の切れ間から光が射していた。
太陽を見るのは随分と久しぶりの様な気がする。
……ぼちぼち雨季も終わるかねー。
そう考えると気が楽になる。
ぐっ、と一つ体を伸ばして背骨を鳴らした後煙草を咥えて火を点けた。
久々に太陽を見て気分が良い。
ぱっ、と音を鳴らして作った紫煙の輪っかも一発で上手くいった。
そういえば頭痛も今日は鳴りを潜めている。
気分良く、鼻歌を歌いながら真っ裸で煙草を吸う。
なかなか開放的だ。
そうやって気分良くくだらないことを考えていると、ロイドが起きてきた。
ロイドも煙草を咥えている。
「おう、起きたかよ」
そう言って目の前に火の玉を作ってやって火を点けてやる。
ロイドはちょこんと頭を下げて、深く紫煙を吸い込んだ。
「はい。おっさん昨日は大丈夫だったすか?」
もくもくと口から煙を吐き出しながら、此奴なりの気遣いをド直球で投げてきた。
「だから昨日のは本当に目に煙が入っただけだって……」
溜息をついて俯いた。
そこでふと、ロイドの股間が目に入った。
……でっけぇ。
「……朝からお前、元気だなぁ。洗濯物を引っ掛けれそうだ」
「まだまだ若いんで」
そう言って、得意げな顔で煙草を吸う。
……そんだけデカくて、ちゃんと嫁さんの中に入るのかね?
そんな下世話な、しかし若干本気で心配な事が頭に思い浮かんだ。
……しかし朝っぱらから何を馬鹿な事をやってんだか。
此奴にちゃんと話さないといかん事があるのになぁ……。
「……あのなぁ、ロイド」
少しあらたまった言い方になってしまった。
「どうしたんすか?」
ロイドは怪訝そうな顔をしながら煙草を燻らせている。
「お前に言ってない事があってな」
吸い終わった煙草の吸殻をぽん、と指で弾き飛ばして空中で燃やす。
成功、上手くいった。
「はい?」
ロイドは燃えて消えていく煙草を見ながら、更に怪訝そうな顔をしている。
「俺な、クマナヴァ王国出身でな」
新しい煙草を取り出して火を点けた。
ちょっと緊張しているのかもしれない。
火力が強すぎて髭が燃えそうになってしまった。
「あぁ、なんとなく予想してました」
なんだそんな事か、とロイドが怪訝そうな顔を解除して、煙草の灰をトン、と落とした。
「でな、ここからが本題でな」
ここにきてふと気づいた。
お互いに真っ裸で話する内容じゃねぇな。
……でもまぁ、いいか。
裸の付き合いだ。
隠し事は無しとしよう。
そう思い、紫煙を深く吸い込んで心を落ち着かせようとした。
「……はい?」
ロイドの顔がまた怪訝そうな顔に戻ってしまった。
この後此奴はどんな反応をするんだろうか?
「実は俺、王子様なんだ」
ロイドが固まった。
目が点になっている。
……そりゃあそうか。
「は?」
固まったまま、煙草の火種が確実に根元にじっくりと近づいている。
気づいて火傷で叫ぶのはいつだろうか。
「いや、だから王子様」
……何度も言わせんなよ恥ずかしい。
「誰が?」
……俺しか居ねぇじゃねぇかよ。
「俺が」
……俺が一番信じられないがなぁ
「何処の?」
アホか。
「クマナヴァ王国の」
流れからいってこの国しかねぇだろうが。
「何で?」
知らねぇよ。
俺が聞きてぇよ。
「いや、何でって言われてもなぁ。生まれた時から王子様だったからなぁ」
この時、お互いに頭の中の何かの留め具が飛んでしまった様だ。
「……ンフ」
「……くふっ」
「……フハハッ」
「……ングフハッ」
「……ンフフフヒヒヒヒヒハハハハハヒッ‼︎‼︎‼︎」
「……グフフフフフハフフヒヒヒハハハッ‼︎‼︎‼︎」
「ちょっ……待って!おっさん冗談キツイって‼︎」
「だから冗談じゃねぇって!」
「いやいやいや……フヒッ……ちょび髭の……ンフッ……王子様って……誰得?」
「あぁん?王子様がちょび髭で何が悪い⁈ちったぁどっかに需要があるだろうが!」
「んなわけねーでしょーが!」
「「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハ‼︎‼︎‼︎‼︎」」
お互いに大笑いした。
隠し事も此奴に隠すのはやめた。
なんとなくそうした方がいいと感じた。
その予感は正しかったらしい。
此奴なら、どんな恥ずかしい過去や辛い過去、重い過去も全部笑い飛ばしてくれそうだ。
とりあえずぶん殴りに行きましょうか、ってな。
「あっちい!火傷した!」




