五日目 夜
五日目、夜
結局、この日も街に辿り着けずに野宿をする事になった。
暴虐巨猿と青鬼の素手喧嘩を観戦した後、移動中に大雨に見舞われてしまったからだ。
雨にうたれながらの移動は、何気に体力を消耗する。
それが大雨ならば尚更だ。
ついでに青鬼宅急便も辞めさせた為、脳筋に任せることもできない。
絶対に任せたくない。
例えここで立ち止まっても、明日には目的地まで辿り着けるだろうということで、雨宿りと体力の温存を優先させた。
幸いな事に適当な洞窟を見つける事が出来た為、ロイドによる環境破壊をしなくて済んだ。
洞窟の中は小鬼共の巣になっていたが、全部骨も残らない程に焼き尽くした。
おかげで水分の飛んだ洞窟の中はジメジメしておらず、比較的快適に過ごせそうだった。
そして夜の帳が下りた中、男二人で裸になり、火にあたって暖を取っていた。
濡れた服は適当に干して、ロイドは早々と横になって眠ってしまっている。
そして俺は一人、焚き火を前にして一服入れていた。
パチパチと焚き火が燃えている。
ユラユラと火がふらついている。
左手の指に挟んだ煙草からも、紫煙がユラユラと立ち上っている。
ユラユラ揺れる火と煙を見ながら、過去を思い出していた。
大分薄くなった記憶が、火と煙がユラユラ揺れるのに合わせてポツポツと浮かんでは消えていった。
子供の頃調子に乗って親父を殺して
大見得切って国を出て
碌に野宿なんてした事ないのに無理をして
すぐに死にかけて
食い物に困って
よくわからんキノコを食べて
また死にかけて
盗賊団に捕まって
もうおしまいだと思った
お師匠さんと出会って
助けてもらって
魔法を教えて貰った
いらんことも教わったな
始めて女を引っ掛けてこいって言われた時は大失敗だった
引っ掛けた女が美人局だった
怖いおっさんに囲まれた
お師匠さんがそいつら皆殺しにしたり
あの人も何処か壊れていた
優しかったけど
独り立ちして
冒険者になって
初めての仲間が出来て
裏切られて
死にかけて
命からがら生き長らえて
裏切った奴らを闇討ちして
それから一人でやるようになって
ある程度名が売れて
青鬼と出会って
こんなに癖のある奴は初めてで、面白い
此奴となら、悪くないと思えた
パチンと薪が鳴った。
一瞬で視界が現実に戻る。
目の前では未だ炎がユラユラ揺れていた。
……ユラユラ揺れる炎みたいに、今までフラフラと行きて来たけど、いい加減にツケを回収する時が来たのかねぇ。
短くなった煙草を焚き火の中に捨てて、新しい煙草を咥えて火を点けた。
一口吸い込んだ時に、紫煙が目に入ってきた。
……しみる。
溜息と共に紫煙を吐き出して、目をこする。
寝ていた筈のロイドとバッチリ目が合ってしまった。
バツの悪そうな顔をしている。
「……勘違いするなよ。紫煙が目に入っただけだからな」
「……そういう事にしておきます」
「……だから勘違いするなってば」
ロイドはなんとなく、わかってますよとでも言いたげな顔をして焚き火に背を向けた。
……お前は何にもわかっちゃいねぇ。




