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煙草と魔法と格闘技〜固茹で卵気取りの転生譚〜  作者: ラーク
三章 太陽堕としと過去のしがらみ
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五日目 昼 其の一

五日目、昼


あの後、ロイドはいつも以上に荒く、無駄に飛んだり跳ねたり、偶に空中で何度も回転したりして俺を運んだ。

そして当然、何度も天地がひっくり返って、内臓と脳味噌を揺さぶられれば、人はイかれてしまう。

ロイドが唐突に森の中の開けた場所で立ち止まり、その勢いも加勢して最後の駄目押しとばかりに内臓を圧迫し、俺は朝飯と豆茶を口から噴出した。


……いかん、……死ぬ、……これは……いかん。


地獄で親父が手招きしているのが見えた。

神経質そうな顔をした、細身で切れ長の目をした男。

裏切り者、お前も早くこっちに来い。

そんな事を言ってそうな顔をしていた。


「もーおっさんきたねーっすよーもーしゃーねーっすねー」


ロイドが明らかな棒読みで呟いた。

グツグツと、俺の心の中で何かが煮え滾る。


「ほら、おっさんこっちに戻って来てくださいよー」


ロイドはそんなふざけた事を言いながら、俺に魔法をかけた。

すうっ、と嘔吐感と頭痛、そして目眩が治っていく。

立ち上がり、目を瞑って、少し上を向いて深呼吸。


おし、体調は元に戻った。これならしっかりと戦えそうだ。


「ほーら、もう大丈夫でしょ?豆茶のみましょーよ。……おっさん何でそんなに大量に火球を出していらっしゃるんですかね?」


「……理由を知りたいか?」


「いーえ、知りたくありませんしソレ喰らいたくも無いんで消してもらっていいですか?」


「……嫌だっつったらどうするよ?」


「ごめんなさい今度いいオンナ紹介しますんで許してください」


「……遺言はそれだけか?」


「申し訳ございません胸と尻がデカくて綺麗目の二十代の好き者のオンナ探して来ますんで許してください」


「………………………………………今回だけだぞ」












ロイドの懇願で全てを水に流した後、木の根元に座って一服していた。

空模様は雨こそ降ってはいないが、いつ降ってもおかしく無い程度には黒い雲が敷き詰められていた。

改めて辺りを見回すと、四方は巨木が立ち並ぶ樹海。

その中にポツンとあるこの開けた場所は、ひょっとしたら昔はこの森を抜けて行く旅人達の休憩場所だったのかもしれない。

そんな場所でロイドと二人、今回の事についての情報共有をしていた。


「メルヒオルっすか?」


地べたに胡座をかき、豆茶を啜っていたロイドが尋ねてきた。


「あぁ、此奴が怪しい」


証拠は無いが、長年の勘で此奴が怪しい気がする。


「其奴は本当は何者なんすかね?」


ロイドがズズッと豆茶を啜って尋ねてきた。

煙草を咥えて腕を組んで思案する。


「さてな。農村出身なんざいくらでも騙ろうと思えば騙れるしな。目的もよくわからんし。案外人を操る魔族や騙す系の闇魔法使いが、私腹を肥やす為に王様共々操ってたりしてな。その方が一番楽だし」


その時はロイドと俺で殲滅して仕舞えばいい。


何となく思いつきで考えた事が、最も簡単に片付きそうだと思った。

そんな事を考えていると、ロイドがキョトンと此方を見返してきた。


「……あのー、騙す系の闇魔法使いってなんすか?そもそも闇魔法使いっているんすか?」


「……何だ知らんのか。お前だって魔法の適性検査を受けに、教会まで行ったろ?そこでわかるんだがな、適性があるやつはごく稀にいるぞ」


ロイドは思考が追いついていないのか、完全に固まってしまっている。

左手に持っている煙草が根元まで燃えていて、指をジリジリと焼いているのにも気づいていない様だ。


「だが見つかったとしてもその場では教会は教えない」


「……何でですか?」


「闇魔法が禁忌とされているからだ」


「あぁ、つまり無かった事にしたいんですね」


「そうだ。始めから知らなければ闇魔法使いになる事もない。表向きはな」


此処で言葉を区切り、新しい煙草に火をつけた。

空きっ腹に煙草と豆茶は中々体に悪そうな気がする。

吐き出した紫煙は、湿った風に流されて森の中に消えていった。


「でも実際は、教会から国の上層部へと知らされる」


「何でまたそんな事に?……熱っちぃ⁈」


煙草に指を焼かれているのにやっと気づいた様だ。

慌てて煙草を手から離して、光魔法で回復していた。


「そりゃあ兵器候補が出て来たら、偉いさんは喉から手が出るほど欲しいだろうが」


ロイドが新しい煙草を取り出したので、目の前に火球を出してやる。

少しは動じるかと思ったが、特に動じることもなく火球で煙草に火をつけて、一瞬思案した後紫煙を吐くついでに口を開いた。


「成る程。……ちなみに闇魔法ってそんなに戦争向きなんですか?そもそもがどんな感じの魔法なのかもわからないんすけど」


「五つの属性に当てはまらない物は全て闇魔法とされる。そして闇魔法自体、自身で魔法の種類を選ぶことができない。例えば火魔法なら火球、火槍等、水なら筋肉増強や身体硬化等普通はある程度選べる。だがな、闇魔法は選べない。そしてだいたい不快感が出てくる様なエグいものが多い。例えば幻覚を見せる、死体を動かす、虫を操る、等々、らしい」


昔々、お師匠さんに習った事を思い出しながら一気にまくし立てる。


……多分こんな感じの説明だったはず。


「……らしい?」


「見た事ないからわからんがな」


教会が流した嘘の情報も混じってるだろう。

詳しい事、本当の事は国や教会のお偉いさんしかわからない事だろうしな。


「……じゃあなんでおっさんはそんなに知ってるんすか?」


「年の功をなめんなよ」


適当に誤魔化していると、遠くから魔獣の叫び声が響き渡った。

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