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煙草と魔法と格闘技〜固茹で卵気取りの転生譚〜  作者: ラーク
三章 太陽堕としと過去のしがらみ
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五日目 朝

五日目、朝


朝、だんだんと馴染んできた頭痛と共に目が覚めた。

頭は痛いが柔らかい寝床のお陰で少しは気持ちの良い目覚めだ。

ボーッとした頭で、しばらくこの館に滞在したいな、等と思うがそうもいかない。

マイセン辺境伯は迅速な対応を求めていらっしゃる。


……あぁ、面倒くせ。


そう思ってデカイ欠伸をして、寝起きの一服、煙草を咥える。

灰皿を手繰り寄せ火をつけたところで、女中が入室してきた。

今日も眉間にシワが寄っている。


「おう、おはよう。豆茶を頼む」


返事もせずに退出していきやがった。

まぁいいかと思い紫煙を深く吸い込む。

朝一の煙草でクラクラと、心地よい酩酊感が襲ってきた。

煙草を一本吸い終わる頃に豆茶が到着した。

短くなった煙草を灰皿に押し付け、豆茶を一口啜ってみる。

いい豆使ってるのだろうし、淹れ方も上手いのだろう。

今日の豆茶も美味かった。

もう一本煙草に火をつけると、女中が更に嫌な顔をした。


「なんか文句ある?煙草苦手?」


思わずそう聞いてみる。


「家具に匂いが付きます。だから煙草は嫌いなのです。この後の掃除が大変になりますから」


つまりは仕事が増えるのが嫌なのか。

それとも主人の持ち物に煙草の匂いがつくのが嫌なのか。

確かに高価そうな調度品ではある。


「始めっからそういえば外で吸って来たのに」


「冒険者に小言を言える程強くはありません」


「俺にはなんか手厳しいじゃねーかよ」


「少なくとも粗暴では無い様ですから」


思いもよらない言い草に、なんとなくほっこりした。














朝食時は辺境伯もいらっしゃった。

今日も二人共朝からよく食べる。

こちらが胸焼けを起こしそうになるほどに。

俺はどうせこの後吐くのだろうと、朝は軽くつまむ程度にして豆茶を二杯ばかり飲んだ。


「くれぐれもよろしく」


朝食後、わざわざ見送りに来た辺境伯から頼まれる。

目つきがヤバイ。

なかなか切羽詰まっている様だ。


「最善を尽くします」


取り敢えず玉虫色の返事をしておいた。

ロイドと共に館を出て、門の外まで歩いた。

雨は降っていないが、相変わらず重たい雲が鎮座している。

ロイドと共に煙草に火をつける。

グッと伸びると背中からパキパキと音が鳴った。

続いてコキコキと首を鳴らす。

ロイドも真似してゴキゴキ鳴らす。

こいつの方が骨が太い分、関節の音も鈍いらしい。


「さてと、面倒ごとを解決しに行きますかね」


溜息と共に紫煙を吐き出す。


「すぐに解決できれば良いんですけどねー」


ロイドも同じ様に、溜息を吐きながら紫煙を吐いた。


「とっとと帰りてぇなぁ」


面倒な仕事は早く終わらせたい。


「本当っすよ。いい加減欲求不満です」


筋肉馬鹿は違った理由の様だった。

こいつはアホか。


「あぁ?だったらどっかの娼館にでも行ってくりゃいいじゃねぇか」


「あっ、嫁さんいるのに娼館なんて行ったら駄目なんですよー」


「真面目か」


「真面目です」


本当に此奴は変な所で真面目だ。

以前は娼館通いが当たり前だったくせに、今じゃあ嫁思いの立派な旦那さんになりやがった。


「……ったく、すっかり変わっちまいやがって」


「あったりまえじゃあないですか。いい歳してフラフラしているどっかの誰かさんと一緒にしないでくださいよー」


あまりの物言いに少しムッとする。

が、当たっているので上手い事言い返せない。


「……若造が説教してんじゃねぇよ」


結局口から出てきたのは、単なる拒絶の言葉だった。

俺には受け止めるだけの度量が無いらしい。


「だったら初老は落ち着いてくださいな」


軽く心がえぐれた。

二十代の此奴からしたら、俺ですら初老になるのか。


「だーれが初老だよ。俺はまだ四十代だぞ」


「後十年もしないうちに五十になるじゃないですか。十分歳ですよ。そんな事よりも、とっとと行きますよ」


更に心をえぐる言葉を発すると、唐突に青い光がロイドを包んだ。

強化魔法をかけたのだろう。

そしてこの強化魔法に関して、昨日思いついたことがあった。


「……なぁ、一個聞いていいか?」


「はい?何でしょう?」


「お前って、人に強化魔法かけるの苦手だっけか?」


「出来ない事はないっすよ?ただ、その人が強化に慣れていない場合は加減が難しいんすけどね」


「そっか、出来ねぇわけじゃあねぇんだな」


ロイドの目を下から睨みあげる。


「だったら別に俺を担がなくても、俺自身に強化をかければ俺はしんどい思いをしないで済むんじゃねぇか?」


目をそらしやがった。

しかし口元には笑みが浮かんでいる。


「……ロイドテメェ、まさか俺を」


言い終わらないうちに俺の腕をグッと掴んで、あっという間に担がれてしまった。


「テメェ待ちやがれコラァ!さてはわざと担いでいやがったな!降ろせボケェ!」


「さて行きますよー。舌を噛まない様に黙っていてくださいな」


「オイマテゴラァ!誤魔化されるわけねぇだろうが!早く降ろせェェェェェェェェェエエエ⁉︎」


一瞬で視界が変わった。

とんでもない速さで景色が変わっていく。


舌を噛んだ!

最悪だ!

クソロイド!

いつか絶対に復讐してやるからな!

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