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煙草と魔法と格闘技〜固茹で卵気取りの転生譚〜  作者: ラーク
三章 太陽堕としと過去のしがらみ
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二日目 昼

二日目、昼



「オロロロロロロロ……」


ロイドによる強制人外動作体験で死にかけた。

折角朝の二日酔いが治ったのに、またこんな目にあうとは。

朝飲んだ豆茶が台無しだ。


「あらー、おっさんたら乗り物酔いっすか?」


だから何があらーだよ。


「……早……ウップ……く……治せ……オェッ……」


「はいはい」


そう言って吐いている俺の頭を掴んで魔法をかけてきた。

一通り吐き気が治った後、振り向きざまに思いっきり拳骨を落とした。

あっさりと避けられてしまったが。


「避けんじゃねーよ」


「いや、普通避けますって。なんですかいきなり?」


「何ですかじゃねーよ!死ぬかと思ったわ!」


「えー、でも速かったでしょ?」


「速けりゃいいってもんじゃねーよ!この脳筋が!」


「脳筋は否定しませんけど。所でここ何処です?」


「俺が知るか!」


「落ち着いてくださいって。豆茶を奢りますから」
















たどり着いたのはウォルグリーン領の端にある街だった。

適当な広場の様な場所で、豆茶を買いに行かせたロイドを待っている間、でかい木の下で雨宿りしつつ煙草を吸って時間を潰す。

渋みが強め、香りが強く結構癖のある煙草だった。

雨のせいで全身ずぶ濡れだが、例え風邪をひいてもロイドの魔法てどうにかなるだろう。

広場から見た街は、領地の端にあるにしてはソコソコ栄えている様だった。

ソコソコ人通りが多く、ソコソコ活気があり、ソコソコ小洒落ていて、ソコソコ笑顔で溢れていた。

少なくとも、食い詰めているわけでは無さそうだ。

そんな事を思いながら煙草を咥えていると、風向きが変わって紫煙が目に飛び込んできた。


……しみる。


「買ってきましたよー。あれ?どうしたんすか涙目で」


「何でもねーよ気にすんな」


そう言って薄眼を開けて豆茶を受け取る。

軽く香りを嗅いで、一口啜る。

安もんだな、と思った。

それでも暖をとる事ぐらいはできる。

雨で熱を奪われた手のひらが、ほんのり温かくて心地いい。


「飯、如何します?折角だから洒落た所に行ってみますか?」


「あぁん?何で男とそんな店に行かないといけねーんだよ」


「俺が嫁さんと遊びに来た時の予行練習です」


「じゃあお前の奢りな」


そう言って適当にオシャレそうな店に入った。

そしてすぐに後悔した。

内装は華やかな色合いで目がチカチカする。

店員が来ている服はやたらとフリフリしたやつが付いていた。

中にいる客はカップルか女のみ。

こっちは男二人。

しかもおっさんとチンピラ顔。

場違いすぎて死にそうだ。


「……出るか」


「いやちょっと待ってください。こういう所、女は好きじゃないですか。もちっと我慢してもらえませんか?」


思わず溜息を吐いてしまう。


「いらっしゃいませー。こちらへどうぞ」


フリフリした奴をつけた店員に捕まってしまった。

仕方なしに案内された席に座る。


「ご注文は?」


また別のフリフリしたやつを付けた店員が注文を取りに来た。

笑顔が引きつっている。


「適当に人気のあるやつを三つ」


「……三つですか?」


店員が訝しげな顔をした。

溜息を一つ吐いてロイドを指差す。


「こいつが一人前で足りると思うか?」


「ひでーっすよ」


実際足りないだろうが。


「オススメを三つですねー。少々お待ち下さーい」


店員が奥へ引っ込む。

視線を感じ周りを見渡すと、他の客達がこっちを見てヒソヒソしていやがった。


何で俺が見世物にならなきゃいけねーんだよ。


そう思ってまた一つ溜息を吐いた。

やっぱりこんな店は落ち着かない。

例え女連れでも落ち着かないだろう。

おっさんには少し、この店の敷居は高かった。

そして更に悲劇が追い打ちをかけて来た。


「お待たせ致しましたー」


そう言って店員が持って来たのは、やたらと甘い匂いを発した、よくわからない、いろんな菓子の盛り合わせだった。


「あと二つお持ちいますねー」


そう言って店員が離れていく。


「……どうすんだよ、これ」


周りの客達がクスクスと笑っているのがわかる。


「俺が全部食いますよ。甘いの好きなんで」


そう言ってモリモリと菓子の盛り合わせを食べ始める。

また周りの客達が、ヒソヒソと話し始めるのがわかった。


……こりゃあ俺まで笑い者になってるな。


やっぱり雨の日はついてなかった。


そして街を出るとまた、甘い匂いを発した青鬼による強制人外動作体験が始まった。


俺は無事に辿り着けないかもしれないと、人生で一位二位を争う程危機感を抱いた。


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