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煙草と魔法と格闘技〜固茹で卵気取りの転生譚〜  作者: ラーク
三章 太陽堕としと過去のしがらみ
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二日目 朝

二日目、朝


「旦那様?起きて下さい、旦那様?」


朝、聞きなれた声で目が覚めた。

そしてそれと共に猛烈な頭痛。

ついでに目眩、吐き気、喉のひりつく様な痛み、乾燥。


……あぁ、……俺、死ぬかも。


人生の中で一番辛い寝起きかもしれない。

そもそも体はまだ、睡眠を欲している。

こんな状態じゃ何の役にも立たないのは明白だった。


「……アガサ……水」


掠れて殆ど声が出無かった。


「まったく……飲み過ぎですよ?」


そう呆れた声を出しながらも、準備しておいたであろう水を差し出してくれた。

何とか横になったまま水を飲んでみるが、胃袋が拒否反応をしているのか、すぐに全部を吐きそうになってしまう。


「まったくもう!」


あまりの醜態に見かねたのだろう、そう言って慌てて桶を差し出してきた。

遠慮無くその中に全部をぶちまけさせてもらった。


……こりゃいかん。……気持ち悪い。……死ぬ。……もう一眠りしよう。


そう思って、もう一度瞼を閉じて夢の世界へと飛んで行こうとした所で、腹に響く良い声が邪魔をしてきた。


「あらー、やっぱり二日酔いですか?」


何があらーだよ。オバハンじゃあるまいし。


そんな事を思い薄目を開けると、昨日、正確に言えば今日だろうか、一緒に飲んでいたロイドが突っ立っていた。

その立っている様子は、酒の影響など微塵も感じさせない、いつも通りの堂々としたふてぶてしい態度だった。


「ほらおっさん起きて。とっとと仕事に行きますよ?俺は早く終わらせて嫁さんとイチャつきたいんすから」


「……まて……声を……出すな気持ち……悪い」


ロイドの重低音な声が容赦無く鼓膜から入ってきて、脳みそを揺らす。

こいつが声を発しただけで、頭痛と気持ち悪さが五割り増しになった。、


「……問答無用!」


そう言って俺の頭を掴んで何かの魔法をかけてきた。

身体中が光を発し終わった後、見事なまでに吐き気が治まっていた。


「おぉ!すげぇ!痛ってぇ……」


「頭痛はまだです」


……先に言えよ。


思わず突然起き上がったせいで、頭痛でのたうちまわる羽目になってしまった。

きっと横では、アガサが呆れて溜息でも吐いているのだろう。

そしてまた、ロイドがむんずと俺の頭を掴んできた。


……どうでもいいが、此奴の手、デケェなぁ。


そんな事を思いながら頭痛を我慢していると、すうっと痛みが和らいでいった。


「どうっすか?一通り治りました?」


「おう、相変わらずお前の魔法、便利だなぁ」


「薬要らずっすからねー」


そんな軽口を叩いていると、室内に香ばしい香りが広がった。


この匂いは……。


そう思って入り口を見やると、アガサが豆茶を淹れてきてくれた。


「目覚めの豆茶です。ロイド様もどうぞ」


「流石、気がきくな」


「頂きます」


豆茶を受け取り、軽く香りを楽しんでから一口啜る。


うん、美味い。


そう思ってもう一口啜る。


「旦那様のお荷物の準備は出来ております。後は旦那様だけですよ?」


横からアガサが口を挟んできた。


準備なんてもう少しゆっくりでも良いんだがな。

有能なのも考えものだ。


「……もちっとゆっくりさせてくれい」


「駄目っすよおっさん。おっさんの所為でただでさえ遅れているんだから」


それの願いはあっさりと無下にされてしまった。


「……俺の味方は居ねーのかい」


俺ははぁ、と溜息を吐き、煙草に手を伸ばした。

外はまだ、シトシトと雨が降っている。


……やっぱり雨の日はついてねーや。















「じゃあ行ってくる。留守の間はよろしく頼む」


「行ってらっしゃいませ。お気を付けて」


そう言ってアガサが完璧な一礼をしてくれた。

それに対して軽く手を上げて、自宅を後にする。

首を左右に曲げると、コキコキとこ気味良い音が鳴った。

街中をロイドと歩きながら、今後の事を考える。


辺境伯領か……、遠いな。


「……こっから辺境伯の所までだと、おおよそ一週間くらいか?」


長い旅の過程を考えると、思わず気が滅入ってしまう。

空が晴れていれば、少しは気分も違ったのではないかと思う。


「大丈夫っすよ。俺に裏技があります」


そんな時にロイドから思わぬ言葉が発せられた。


「何だそれ?」


「裏技を使えば多分明日か明後日には着きますよ」


おぉ、そりゃあ楽だ。


そう思い、ロイドが言う裏技に期待を寄せてしまう。


「へぇ、じゃあその裏技で行くか」


「了解っす」


そう言うとロイドは青色の光を纏い始めた。

この光は、筋肉増強をした時の光だ。

成る程と思う。

要するに身体能力を高めて、一気に走破しようという事だろう。

しかし解せない事が一つ。


「……んで、俺は?」


ロイドがニンマリと笑った。

物凄く嫌な予感がする。


「よっこいしょ」


そう言ってロイドは俺を肩に担いだ。


「……何で俺が荷物みたいになってんだ?」


「では行きますよー」


ロイドから明確な答えは返ってこない。

次の瞬間、景色が流れた。


「……いやちょっと待てぇぇぇおぉどぉぉうぅぅアァァァァァアああ!!」


こうしてロイドによる、強制人外動作体験が始まった。

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