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煙草と魔法と格闘技〜固茹で卵気取りの転生譚〜  作者: ラーク
三章 太陽堕としと過去のしがらみ
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初日 昼

初日、昼


パラパラという雨音と共に目が覚めた。

この音がするという事は、相変わらず雨が降っているのだろう。

寝起き早々気が滅入る。

重い体と痛い頭を我慢しながら起き上がって窓の外を見やると、朝と比べると随分雨脚は弱くなっている景色が見えた。

しかし重たい暗雲は健在で、いつでも豪雨を降らせる事が出来そうだ。


……やる気が起きねーなー。


雨のせいで後ろ向きな考えしか出てこない。

これだから雨は嫌いだ。

寝台にもう一度倒れ込み、モゾモゾと布団の中に潜り込む。

調子が悪い。

それこそ酒すら飲む気が起きないくらい。


……今日は一日中グータラしていよう。


そう心に決めた時、その決意を打ち砕く音が聞こえた。

扉が二回叩かれた。


「……何だ?」


のっそりと顔を出してそう声をかけると、申し訳なさそうな顔をしたアガサが入室してきた。

アガサは俺が雨の日は調子が悪い事を知っている。

そのアガサが雨の日にこんな顔をしているという事は、彼女では対応できない問題が生じたのだろう。


「侯爵家からのお客様が来てます」


アガサがそう声をかけてきた。


ほら、やっぱり面倒事だ。


そう思い一瞬だけ悩んで、自分が楽になる答えを選んだ。


「具合が悪いって言っとけ。」


そう言ってもう一度布団に潜り込む。


「いや、しかし……」


アガサにしては珍しく、言い淀んだ。

そしてその原因はすぐに知れる事となる。


「仮病は良くねーな。良くねーよおっさん」


その声に再度頭を出し、声のした方を見やると、大男がのっそりと現れた。

身長が高く、筋骨隆々。

癖のある長めの黒髪で目つきが悪い。

最近仕事を共にする事の多い、通称青鬼が我が物顔で室内に入ってきた。

ガラの悪い風に見える男だが、実際は意外と真面目で気をきかせる。

頭も然程悪くない。

ほんの少し常識が無いが。

勝手に入室してきたのも、きっと他意は無いのだろう。


「……お前かよ」


「俺です」


見りゃあわかるよ馬鹿野郎。


「俺ぁ仮病じゃねぇんだよ。今日は無理だ」


そう言って、ロイドに背を向け布団の中に潜り込む。


「あぁ、雨の日は調子が悪くなるタチっすか?」


そう言う青鬼の言葉は思いの外優しかった。


「あぁ、頭が痛ぇ」


「しけてますねー。うちの嫁さんと一緒ですよ」


「うるせぇよ」


「でも私が来たからもう大丈夫!痛いの痛いの飛んでいけー」


子供に言い聞かせる様な物言いで俺の頭を掴むと、一瞬だけ俺の体が光った。


「ほら、もう痛くないでしょ?」


その言葉で頭痛が消えているのに気がついた。


「おぉ、……相変わらず凄ぇな」


思わず感嘆の声を上げてしまった。

相変わらず此奴の魔法は便利だ。


「はい、ということで行きましょー」


とはいえ、例え頭痛が良くなっても行きたくないもんは行きたくない。


「……気がのらねぇなぁ」


「勤勉は美徳っすよ?」


「……お前冒険者に向いてねーわ」


自由を愛する冒険者にとって、勤勉という言葉は間違いなく似合わない。

そしてこの男の人相にも、勤勉という言葉は似合わない。

相変わらずこの男はどこかチグハグだ。

はぁ、と溜息を一つこぼしてのっそりと寝台から降りる。

アガサが、おっさん二人何やってんだか、と呆れた顔で溜息を吐いた。

うるせぇよ、と心の中で返答し、煙草を一本咥えて火をつけた。















「明日からで構わんから、マイセン辺境伯の所に行って問題を解決してこい」


「こりゃまた唐突ですね」


場所は変わって侯爵の執務室で、いきなり面倒事を押し付けられた。

ウォルグリーン侯爵は相変わらず忙しそうで、只管何かを書いたり、腕を組んで考え事をしたり、ブツブツと独り言を言っていた。

いつもの光景といえばいつもの光景か。

唯一違うのは、いつもは一緒にいるロイドの兄貴がいない事か。

おそらくあいつも忙しいのだろう。


「問題って何ですか?」


その忙しそうな侯爵相手に、ロイドが何も考えてなさそうな顔で質問を投げた。


……ちったぁ考えろよ。


「……ニック、わかるか?」


そりゃあわかりますとも。


「大方クマナヴァ王国との領土問題ですかね?」


「と、いう事だ。今日中にニックからクマナヴァ王国の事を聞いておけ」


さらっと更なる面倒事を押し付けられてしまった。


「……俺がっすか?」


ただでさえやる気が出ないのに、何で更に面倒な事をやらんといかんのだろうか。


「お前が誰よりも詳しいだろうが」


訳知り顔でウォルグリーン侯爵がそう言ってきた。

まるで面白がっているみたいだ。


……こいつなんか知ってやがるのか?


相変わらずこの御仁の底がしれない。

中身は魔人だったりしてな。


「……了解しましたよ」


そう言って溜息を一つこぼした。

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