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翌日、路地裏をぶらついてみた。
治安が悪い町の路地裏は、たいてい何処も同じ臭いがする。
排泄物と吐瀉物と酒と血の匂い。
この町も漏れなく、なんとも言えない臭いがしている。
路地裏をぶらついた目的は、馬鹿な奴らが引っかかったりしないか期待してのものだ。
しかし全く効果はあがらなかった。
視線はあちこちから感じるのに、誰もちょっかいを出してこない。
原因は何か?
多分俺の見た目だ。
冒険者風の格好をしたムキムキの大男に因縁をつけてくるほど、最近のチンピラ共には根性が無いようだった。
このままでは埒があかない。
そう思い、こちらからアクションを起こしてみた。
……結局のところやる事は、裏路地にいる人相の悪いチンピラ風の男を拉致して拷問する、というまるで自分の方がチンピラなのではないかと錯覚するような物だったが。
幸いな事に拉致した奴らは皆、黒だった。
それだけサリエルの影響力が強いということか。
最終的に事を始めたのは翌日の夜。
結果は港町の時と変わらない。
アジトに乗り込んで、挑発し、蹂躙する。
チンピラ共は荒事には慣れてはいるが、特別訓練されているやつはいなかった。
翌日は早朝から次の町へ出発した。
いかんせん、サリエルダルハウジー支部のさらに支部は数が多い。
全部で丁度十カ所。
それにプラスして、ラックベイン率いるダルハウジー支部の本部?が待ち構えていた。
一つ一つは大したことはないが、数が多い。
そしてダルハウジー領は結構でかい。
移動だけでも時間がかかる。
ゴミ掃除は中々困難を極めた、とまではいかないが、中々面倒臭い。
……それでも本部以外を潰すのに一月もかからなかったが。
結局何処の町でもやった事は同じであった。
全力ダッシュで移動し、拉致して拷問して殲滅して、そしてまた次の町へ全力ダッシュする。
ランナーズハイの様に、回を重ねる毎に段々と心がハイになっていった。
愛する女の為ならエンヤコラ。
あいつの悪夢を終わらせて、心からの笑顔にしてやらなくっちゃ。
あいつの笑顔を思い出したら疲れなんて吹っ飛ぶのさ。
そして全てが終わったら一緒に幸せになるんだ!
そんな頭の中が甘いお菓子でできたピンクの花が咲き誇っている様な奴が考えてそうな事を考えながら、只管血だまりを作っていった。
そして今、最後に残ったダルハウジー支部の本部がある、ダルハウジー領最大の都市、インディラントンにたどり着いた。
今まで訪れた町とは少し雰囲気が違う。
町並みは基本変わらない。
細かい所は違うが、中世ヨーロッパ風の建物が並んでいる。
住んでいる人々だって、大きな違いがある訳ではない。
しかし何というか、空気が少しピリッとしている。
活気があるように見えて、何処か一歩退いている。
町の住人が、何かに警戒しているような、何とも言えない変な雰囲気がしていた。
ひょっとしたら、この雰囲気はサリエルの、ダルハウジー支部の本部があるから、という事なのだろうか。
ラックベインのお膝元ということもあって、流石に他の町と比べると影響力が強いのだろう。
しかし、やること自体は変わらない。
今日も拉致して拷問して、アジトに乗り込んで殺すだけ。
チンピラ共の始末の仕方に変わりは無い。
というか、他のやり方を知らない。
あえて違う所を挙げるならば、ラックベインを念入りに殺るくらいか。
結局脳筋は力押しか出来ないし、力押しが一番能力を発揮出来るやり方なのだろう。
そして今日も、この町に入ってすぐに、バシバシと熱視線を感じる。
そしていつも通りに裏路地へ足を運ぶ。
適当に進んだ所で煙草に火をつけて、咥え煙草で辺りを見渡す。
今日も余裕で無視されるかな?と思いながら紫煙で輪っかを作っていると、妙なことに気づいた。
……誰も居ない?
視線は感じるのに、誰も居ない。
きっと建物の中から監視をしているのだろう。
だがそれでも、路地裏に入ってここに辿り着くまでに、誰かとすれ違う事もなかった。
ほんの一瞬、魔力の流れを感じた。
どうやら今回は、相手からアクションを起こしてくれるらしい。
危険を感じ筋力増強、身体硬化、自動回復を重ねがけする。
刹那の瞬間、不可視の刃が空から降り注いできた。
「あっぶねぇなぁ」
そんな事を呟きながら、軽い足取りで不可視の刃の範囲から逃げ出す。
更に魔力の流れが発生。
逃げた先から刃が降り注ぐ。
中々のやり手だな。
決してこちらの間合いに入らず、遠くから狙撃している。
自分の戦い方を持っている奴は中々面倒臭い。
おそらく建物の上からこちらを監視して、狙撃しているのだろう。
刃はすべて、上から降り注いでいた。
そして余計な被害を出さぬ様、しっかりと人払もされているようだった。
「……やっと骨のある奴が出てきた」
やってやろうじゃないの。
青鬼舐めんなよ?




