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…5年後


周りには身を隠すものがない大草原。


正面から馬とサイを足して2で割らない巨大な魔物が、地響きを立てながら突進してきている。


正面からまともにぶつかれば恐らくタダでは済まない巨体とスピード。


…を、あえて正面から勝負を仕掛ける。


水魔法の筋力増強、及び身体硬化に光魔法の自動回復を重ねがける。


力が湧き、身体が熱くなるいつもの感覚。


獲物を見る。


獲物の歩幅で残り約10歩。


右足を後ろに引き膝を曲げる。


体重は右足から左足へ移動。


一気に力を解放、距離を一気に詰める。


左足で踏み込む。


この突進力を殺さないように上半身も連動させる。


腰から動かすイメージ。


右手を突き出すと同時に左手を後ろに引く。


狙うは獲物のおでこにあるツノ、の少し下の眉間。


こちらの腕よりも長いツノが頬を少し削る。


刹那遅れて右の拳が眉間に突き刺さる。


ぱあん、と炸裂音。


そして右拳に激痛。


右手が肘まで魔物の頭蓋の中にのめり込んでいる。


左手で相手の顔を抑え右手を抜く。


右拳を見ると指が2本あらぬ方向を向いており、手の甲も亀裂が入っているようだった。


魔物が倒れると同時に右拳が光りながら元の形に治っていく。


「まだ身体硬化が筋力増強に追いついていないか…」


左手一本で煙草を咥え火をつける。

深呼吸。

うん、やっぱり仕事終わりの一服はまた格別だ。

少し頭がクラクラするまま頬を撫でると、傷は既に治っているようだった。









討伐証明部位の魔物のツノをへし折ってギルドに戻ると、見慣れた何人かがギョッとした顔をしていた。


「…ロイドさんよー、ひょっとしてそれ、暴走ライノのツノ?」


「ああ」


「まさかの1人で?」


「勿論」


「あのさー」


「やらんぞ」


「一言もくれなんて言ってねぇだろ⁉︎」


「じゃあ何だよ」


「どうやって1人で倒したんだ?」


「正面からぶん殴った」


「…お前に聞いた俺がバカだった」


馴染みの冒険者を適当にあしらって、これまた馴染みの受付嬢に依頼の完了報告をつたえにいく。


「お疲れ様、随分とお早いお帰りで」


「あっちから向かってきてくれたから楽だったぞ」


「そんな台詞を吐けるのはあんただけよ」


酷いことを言いながらサクサク仕事を進めていく。

5年前の登録の時からお世話になっている受付嬢のローザは、エルフという種族柄か、何一つ変わらぬ姿のまま、俺の仕事を見守ってくれている。


「はい、賞金の1000万G。どうする?いつも通り預けとく?」


「100万Gだけ現金で。残りはよろしく」


「了解しました。今回の討伐依頼の完遂であなたのランクはBになりました。ギルドマスターのグランさんからこれからも期待してるってお言葉をいただいたわよー。おめでとう青鬼さん?」


「その二つ名やめてもらえませんかねー」


「人の口に戸は立てられないわよー。所で最近新しく出来た料理屋さん知ってる?とっても美味しくて評判なんですってー」


「あっそ。じゃあな」


「ちょっと扱い酷くない⁉︎」


「今日はゆっくりしたい気分なんだよ。また今度な」


「残念なお知らせだがゆっくりするにはまだ早いぞ、青鬼ロイドくん?」


ローザに背を向けた途端に聞き慣れぬ声がして、再度振り返ることとなった。


「グランさんどうしたんですか?」


ローザがそう声をかけた。

当然だがギルドマスターは荒くれ者が多い冒険者を纏める為、それなりの実力者でないと務まらない。

俺が勝手にイメージしていたギルマスはごっつい体と顔をした爺さんだったが、今現れた人物は、線が細く、クソ真面目そうな役人の様な男だった。


「はじめまして。ギルドマスターをしているグランだ。早速だが君に指名依頼を出させてもらう。拒否しないでもらえるとありがたい」


…なんだか面倒な事になりそうだ。





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