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34.閑話、地味な楽しみ

カリカリと、署名する音が執務室に響く。


あぁ、面倒臭い。

何故私は侯爵家に産まれてしまったのか。

しかも長男だなんて。

もし弟達が私より優れていたら、今の地位をとっとと明け渡して閑職で余生をダラダラと過ごすのに……。


仕事をしているときは、いつもこんなくだらない思考に飲まれてしまう。

侯爵家という大それた家系に産まれてしまったが為に、こんな責任ある仕事にしか付けなかった。

ひょっとしたら、弟達に野心があったのならば、私は今頃細々と仕事をしていた。

しかし残念ながら、我が家系の男共は皆面倒臭がりだ。

他の貴族共は皆競って当主になろうとしているのに……。

何故我が家系の男共はこんなんなんだろうか?


はぁ、と小さく溜息を吐くと、見計らったかの様に、二回ノックの音が聞こえてきた。


まったく……私は忙しいというのに。


「入れ」


面倒臭いので、短く簡潔に返答をする。


「失礼します」


そう言って扉を開けて入ってきたのは、今絶賛話題の中心、我等が「青鬼」くんだった。


「お時間大丈夫ですか?」


粗野な見た目と違い、意外と礼儀正しい。

きっとご両親の教育がしっかりとしていたのだろう。

もしくはあいつに矯正されたか。


「大丈夫に見えるか?」


少し嫌味を言ってみる。

柄にもなく「しまった」、という顔をした。


やれやれ……少しは激励しといてやるかね。


「……上手くやれよ。俺の心労を少しは軽くしてくれ」


ロイドはポリポリと後頭部を掻き毟って、ちょこんと頭を下げてきた。

こちらの内情はしっかりとばれているらしい。


「任せてください。バッチリみんな殺ってきますから」


元気よくそう言いってきた。

元気よく言う台詞でも無いだろうに。


思わず「フッ」、と笑みが溢れてしまった。

まあいいか。

どうせこいつならば、問題なく全部済ませてしまうだろう。

特別こちらでやる事は無いとは思うが……、後始末くらいはしてやろう。


「そういえば兄貴は今どちらに?」


「仕事だ。お前なら大丈夫だろうから心配しないそうだ。なかなか信頼されてるな」


本当はお前が心配で、裏で動き回ってるよ、とは言えない、

言ったら何をされるかわかったものではない。


「荒事限定ですけどね。では行って来ます」


しっかりと騙されてくれたようで何より。

手をヒラヒラと動かして、とっとと行くように促す。

律儀に一礼して扉の外へ出て行った。

一つ溜息を吐く。

仕事を中断して、ゴソゴソと葉巻に火をつける。

シュウ、と細く紫煙を吐き出せば、甘い香りが部屋を満たした。

窓から外を眺めてみると、ロイドが煙草に火をつけるところだった。

そして紫煙を細く吐き出す。

おそらく私の真似だろう。


あいつは意外と人に影響されやすいな。


そんな無益な事を思うと、クツクツと笑い声が聞こえた。

館を出て、煙草に火をつける。

閣下の真似をして、細く紫煙を吐き出してみた。

当然だが外では香りが溜まることなんて無かった。


今頃過保護なあの男は、例の娼婦の所に行っているだろう。


……まったくこの兄弟は、見た目と中身が違い過ぎるだろう。

そして変なところが似ている。

見た目と中身が違いすぎて、周りから誤解されやすいところとかな。


またクツクツと、笑い声が出てきた。

最近、この兄弟の観察が楽しみになってきた。

趣味が増えるのは良い事だ。


それにしても、全くこいつらは……使えるのに世話がやける。

まぁ、その分、しっかりと楽しませてくれ。


コンコンと扉が二回叩かれる。

おそらく兄の方だろう。


さてと、からかってやるかね。

……あいつが怒らない程度で。


そう思って、葉巻を灰皿に擦り付けた。

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