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「……どぉも初めまして。あたしはマーマデュークよ。一応サマエルっていう組織の首領をやってるわ。今後ともよろしくねぇ」


ネットリとした、体にまとわりつきそうな声色。

あの後閣下の家令に案内された場所は、先ほどまで話していた組織の者が控えている部屋だった。

扉には騎士様、しかもかなりの使い手が二人控えていて、厳重さがうかがえる。

おそらく両隣の部屋や天井裏にも、数名隠れているのだろう。

それだけの重要人物だという事か。

扉をノックし、「どぉぞ」という声がして、おやっと思った。

そして扉を開けると絡みつく声が出迎えてくれた。

見た目は男。

服装は女。

言動も女。

つまりはそんな奴だった。


体格はかなり太っており、身長も高い。

長い黒髪を束ねてアップにしている。

黒いドレスを着て、綺麗に化粧を施している。

身綺麗にしているのに、なかなか妙な威圧感がにじみ出ていた。


……何と言うか……凄い。


それにしても、サマエルという組織はかなり広範囲で動いている、なかなかデカイ組織だったはずだ。

その組織の首領がわざわざ訪れるとなると、随分と切羽詰まってるのかもしれない。


「初めまして、ロイドだ。早速だが……今回の件、どういう風の吹き回しだ?」


マーマデュークは一つ溜息をつき、ネットリと台詞をこぼした。


「……ウォルグリーン侯爵から聞いているとは思うけど……、理由は二つあるのよ……。ダルハウジー支部を任せていた奴、……ラックベインて名前なんだけど、ちょっと武闘派の変態共が集まり過ぎてね、手に負えなくなったのよ。このままだとあたしの方にも火の粉が降り注いできそうだから、今の内にこっちと手を組んでおこうって思って」


「つまりお前ら組織の一部が暴走したと」


「そぉなのよ……勘弁してほしいわー」


声が疲れている。

本当に困っている様に聞こえる。


「ちなみにユリアという娼婦の親を殺したのはそいつらか?」


「……そんなに殺気を飛ばさないで頂戴。全部ラックベインの独断よ。私達は基本的にカタギの人に手は出さないわ。同業なら別だけどね」


「誓うか?」


「何にだって誓ってあげるわよ」


マーマデュークは投げやりに、身振りをつけて言い放った。

この言葉を信じるならば、ユリアの復讐を遂げるにはダルハウジー支部全員とヘンリー=ダルハウジーを殺せばいいという事になるな。

殺す対象が明確になってなによりだ。


「もう一つの理由は?」


マーマデュークは俺を指差した。


「……アンタの敵になりたくないの」


こちらに関しては、かなり予想外な答えだった。


「……意味がわからん」


「……本気で言ってるの?」


話の先を促すと、溜息をつかれた。


「アナタには自覚が足りないみたいね……。今ノリにのってるAランクの冒険者、二つ名は「青鬼」、Sランクに一番近い男で大侯爵の専属冒険者。「太陽落とし」とも親交がある。今一番敵に回したくはないわ。その気になればアンタ達だけでこの国潰せるんじゃないの?」


「何言ってんだか……」


くだらない。

結局俺個人の力だけでは何もできないのに。


「つまりはアンタはそれだけ今注目されてるの。誰が好き好んで敵になるもんですか。味方になった方が旨味があるわ」


「随分と過大評価されたもんだ……。で、何でお前らが直接手を下さないんだ?」


これに関してはかなり疑問だった。

身内の恥を他人に処理してもらう。

その筋の業界ならば、絶対に舐めらる事案だ。

そしてその筋の業界は、絶対に舐められてはいけないはずだ。

それなのに自分達は手を出さず、わざわざ他所の貴族の所に相談に来ている。

側から見れば明らかにおかしい。


「……さっきも言った通り武闘派ぞろいだから。特にラックベインは元Bランク冒険者なのよ。やれないこともないけど、結構こっちにも被害が出ちゃうの」


嘘くさい。

多少の被害が出ても、舐められるよりかは良いはずだ。

つまり他に目的があるのか。



「いいのか?他の組織に舐められるぞ」


「その代わりウォルグリーン侯爵と縁を結べるのなら、そっちの方が良いわ」


「……むしろそれが目的か?」


答えは沈黙だった。

つまり肯定。


「……まぁ、良いだろう。あと教えてほいしのは二つだ。ラックベインの特徴と奴らの潜伏先や溜り場の場所だ」


「……ラックベインは人殺しで快楽を得る変態。武器はナイフと鉄で補強された鞭よ。どっちも毒が塗ってあるから触れてはいけない。見た目は……どこにでもいそうな男よ。黒髪黒目、中肉中背、あえて言うなら少ししゃくれてるくらいかしら?あいつらがいそうな所は把握している限り紙に書いて渡してあげる。ひょっとしたら潜伏先は増えているかもだから注意なさいな」


「了解した。頼むぞ」


「……アンタさ、何で私の見た目に何も言わないの?」


唐突にそんな事を、真顔で聞いてきた。

思わず笑ってしまいそうになる。


「……何か言ってほしいのか?」


「……いいえ、そういうわけじゃないけどさ、珍しいなって」


「んー、別に何か言ってもどうもならないだろ?だったらそっとしといてやった方が良いのかなって」


マーマデュークはニヤリと笑って、


「……アンタ、結構いい男ね」


と呟いた。


どこがだろうか?

だけどまぁ、ここは強がって、


「だろ?」


とカッコつけてみた。

そして褒めてくれたお礼に……


「気をつけろよ。閣下は一筋縄ではいかないぞ」


マーマデュークは「ふっ」と笑って、


「やっぱりいい男」


そう呟いた。














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