26.閑話、娼婦の終わり
あの男の元へ出荷されてからの生活は、思い出したくもない。
咥えて、跨って、あの男の精を受け止めるだけ。
まだ未成熟な身体は、あの男のモノを受け止めきれる訳もなく、何度も裂けた。
それだけでなく、行為の間は毎回暴力を受けた。
素手で殴られ、鞭で叩かれ、炎で炙られ、首を絞められ。
そしてその度にお抱えの魔法使いによって、綺麗に傷を修復された。
ご丁寧に処女膜ごと。
お陰で何度も痛みで失神しそうになった。
その度にあの男は、愉悦の表情を浮かべていた。
そんな生活も十年もすれば、至極あっさりと終わった。
理由は身体が成長してしまったから。
どうも性的対象から外れてしまったらしい。
そして私は、表向きは事故で死んだ事にされ、あの男の犬として、敵対している貴族の領地にある娼館へと飛ばされた。
与えられた役目は、客からの情報収集。
そこそこ敷居の高い店だったようで、客の男達はそれなりの身分、仕事を持つ男達だった。
複数の男に媚びて身体を売り、騙して情報を集める日々。
それでもあの館と比べると、幸せだと思えるほどに、天と地程の差があった。
だけどこの生活も、あまり長く続かなかった。
数年もこの仕事をしていれば、何度も病気にかかる。
正確には移される。
その都度高額な金を払い、早期治療をしてきた。
重症化してからでは、更に高額な金を取られるからだ。
でも、たった一度の失敗。
病気を移されたのに気づくのが遅れてしまった。
顔が、身体がグズグズと崩れていく奇病。
また不幸なことに、この病気の進行速度が、発症から一気に重症化する物だった。
結果高い金を払えず、娼館が出してくれるわけもなく、私は廃棄処分が決まった。
あの日、私に一人の男が付けられた。
そして男と共に、ある場所へ移動する様に言われた。
このような事は今まで無かった。
支配人から直接言われたわけではないが、なんとなくわかってしまった。
おそらく私は、廃棄処分になるのだろうと。
これから殺されるという恐怖と、病気による体力低下で、身体に力が入らず、フラフラと街中を歩いていく。
汚い外套を被らされたので、傍目には浮浪者の様に見えているだろう。
男は黙って、少し離れてついてきていた。
少しイライラしている様だった。
何故私は、こんな人生を歩んで来たのだろう。
何故私は、こんな目に遭わないといけないのだろう。
……ふざけないでよ……やってられない。
ふとそう思った。
イライラしたら、少し力が出てきた。
「おい、とっとと歩けよクソ売女」
考え事をしていたら、路地裏の一角でいつの間にか立ち止まっていたらしい。
「歩けっつってんだろうがコンボケガァ!」
また男から悪態をつかれた。
かなり短気らしい。
……どうせ殺されるんだ。
最後くらい……。
男の方を振り向いて、思いっきりぶん殴った。
「ギャッ?!」
不意打ちだったからか、見事に男の顔のど真ん中に、拳がめり込んだ。
……あぁ……やってしまった……でももういいや……。
男はすぐに起き上がってきた。
顔は憤怒の表情。
それが何故か滑稽で、笑ってしまう。
訳のわからない言葉を発しながら殴りつけてきた。
殴り飛ばされ、壁にぶつかり意識が遠くなる。
でも、まだ意識を飛ばすのは許されない。
何度も男から暴力を受けた。
痛みで意識が覚醒し、また痛みで意識が遠くなる。
そんな時間も束の間、声も出なくなってきた。
とうとう危険かもしれない。
……これで私の人生もおしまい。
とうとう意識が遠くなる。
このまま目が醒めることも無いのだろう。
そう思った時、
「……お前何やってんの?」
彼の声がした。
この日から私の人生は変わっていった。




