17.閑話
「憎まれ役を買って頂いてありがとうございます」
「……あれでよかったのか?」
「はい。ああでもしないとあいつは動きませんので」
「かなり強引だったとおもうが?」
「あいつは昔から面倒くさがりで。多少強引なくらいでちょうどいいんですよ」
「……私の指示は面倒事か」
「少なくとも果報ではないですよね」
「手厳しいな」
「事実を申し上げているだけです」
「……まぁ私としては良い駒が手に入ったから言うことはないがな」
「……使いこなせますか?」
「私を誰だと思って言っているんだ?」
「失礼致しました。民の事を第一に考えている、真面目で優しい優秀な領主様でしたね」
「民は家畜と同じた。優しくしてやらなければ死ぬからやっているだけだ」
「相変わらず素直でない」
「うるさい」
「民からはそこが可愛いって評判ですよ?」
「……今すぐその噂を消してこい。不敬だぞ」
「まぁまぁ、慕われているってことで大目に見ましょう」
「まったく……。それにしても、あいつはどんな利益を私に与えてくれるかな?」
「ひょっとしたら不利益かもしれませんよ」
「それはそれで構わんよ。それを利益に変えるのも私の仕事だ」
「流石でございます」
「飽きなさそうだな。仕事が増えるのは面倒くさいが」
「暇な人生なんてつまらないでしょう」
「暇という感覚を味わってみたいわ」
「……たまにはお休みになられてもいいのでは?少なくとも他の貴族様方と比べても、激務だともっぱらの噂ですよ?」
「馬鹿者。私が休んだら、この領地だけでなく国家規模で混乱するぞ。……あ」
「どうなさいました?」
「Aランクに昇格って言うのを忘れてた」
「……まぁ、冒険者ギルドに言っておけば問題ないでしょう。それにしても……」
「何だ?」
「やはりお疲れの様ですね。しばらく療養なさっては?しばらくは私が代官として治めておきますよ」
「……遠慮させてもらう。お前に任せたら、休みの間に全て乗っ取られてしまいそうだ」
「……ちっ」
「……さっきの男に、今心底同情したわ」
「何故です?」
「お前の弟というだけで、一生面倒事を任されそうだ」
「……失礼ですね」
「お互い様だろう。むしろ上司は私なんだかな……」