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「……!……!」


おっさんと打ち上げ飲みをした翌日の朝、遠くで誰かの呼ぶ声で眼が覚めた。

体を起こそうとするが、それと同時にぐわんぐわんと耳元で鐘を鳴らされている様な痛みが頭に走った。


……頭が痛い。


久々の二日酔いであった。

ついでに睡眠不足もあるだろうか。

横になっているのに頭がクラクラする。


「……!……!」


また俺を呼ぶ声。

どうやら家の外、ドアの前で俺を呼んでいるようだ。

扉もガンガン叩かれている。

しかし目を開けるのも億劫だ。

体を起こすなんてもってのほか。


……ここは無視して二度寝しよう。


そう心に決めて頭から毛布を被り、ドアに背を向ける。

すると声の主が唐突に変わる。


「コラァ!ロイドォ!」


「はいっ、ごめんなさいっ!」


瞬間、無意識のうちに飛び起きた。

寝起きの兄貴の声。

いきなり飛び起きた代償は、とんでもない頭痛と吐き気だった。


「グッ……オェッ……」


結局起き上がり続けることができず、結局しばらくうずくまることになってしまった。

そのまま二日酔いの攻撃の波が収まるのを待つ。

荒い呼吸を繰り返し、攻撃が一通り収まった後、一度大きく深呼吸。

と、同時に光魔法を発動!解毒、そして水分代謝を整える。


あぁ、……使えて良かった光魔法。


それでも睡眠不足は否めない。

重い頭のままのっそりと出て行くと、朝の町並みと真っ青な空を背景に、空と同じくらい顔を青くした気の弱そうな男と、全力で眉間に皺を寄せた兄貴が立っていた。

相変わらず無表情で人を殺しそうな冷たい顔である。

普段はおちょくりがいのある兄貴の不機嫌そうな姿を見た瞬間、猫背気味だった背筋が一瞬でシャン!とした。


「……遅い」


「……すみません」


何故だろう、喧嘩すれば間違いなく勝つのに、未だにこの不機嫌状態の兄貴には反抗する気が起きない。


「……まぁいい。次からは早く出るように。侯爵様からの言伝を預かっている。本日、十二の鐘がなる頃に館に来るように、だそうた。くれぐれも遅れるなよ。」


何それ行きたくない面倒くさい。


そんな思いが顔に出たのか、兄貴はすぐさまこう言った。


「アリスの説教とどっちが良い?」


「十二の鐘がなる頃に行きます」


脊髄反射で答えが出た。


「せめて無精髭はそってくるように」


「了解しました」


……あぁ、面倒くさい。


兄貴を見送った後、豆茶を淹れながら煙草に火をつけると、自然と紫煙とともに溜息がこぼれた。










侯爵様の屋敷は相変わらずでかかった。

見るたびに大きさが変わる物でもないが、例え多少大きさが変わったとしても、問題が無いくらいでかいのでは無いだろうか。

まぁ家とか職場とか来賓の宿場とか、色々と兼ねていれば自然と大きな物になるのか。

自分でも何を思っているのかよく分からなくなったが、それくらいでかかった。

屋敷の大きさに比例して大きい、そしてやたらと威厳のある門の横にいた門番に取次ぎを頼むと、屋敷の中から家令と思しき人物が出てきて、そのまま直接部屋まで案内された。

きっと客間でしばらく待たされるのだろうと思っていたが、当てが外れた。

できればもう少し心の準備の時間が欲しかったのに。

侯爵様はせっかちらしい。


「ロイド様をお連れしました」


「入れ」


思ったよりも高い声だった。


「……失礼します」


部屋の中に入ると如何にも悪徳貴族らしい、ハゲ、デブ、ヒゲの三拍子揃った侯爵様と、その横に眉間に皺を寄せていない、いつもと同じ兄貴がいた。

見た目が悪徳貴族でも、領内に住む民からは慕われているし、悪い噂も聞かない。

きっと仕事熱心なせいで、ストレスと運動不足が祟り、ハゲデブになったのだろう。

ピシッと太いカイゼル髭は威厳を持たせるためだろうか。


「こっちに来い」


近づくように言われたので、数歩足を進める。

侯爵様はここまで一度も顔を上げていない。

おそらく仕事だろうが、只管紙に向かって何かを書いていた。

その手が急にピタッととまり、唐突に顔を上げる。


「結論から言うが、騎士団に入れ。それが嫌ならうちの専属冒険者。必ずどっちか選べ。あぁ、あと準貴族階級の騎士爵位をお前に叙す様に王様に依頼してるからそのつもりでいろ」


いきなり訳のわからない事になった。





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