序章
キーナの魔法内に登場するおじいさんのお話です。
本当は本編を終わらせてから載せようかと思ってたのですが、
せっかく描いたのだし、本編いつ終わるか分からないので載せることにしました。
そこは戦場だった。
数多の人々が剣を振るい、数多の屍が地を埋め尽くしていた。
「引け! 引けー!」
紅い衣の指揮官と思しき騎乗の兵士が声を張り上げた。
その声は瞬く間に戦場を駆け、紅い衣の兵士達が一目散に逃げだしたのだった。
蒼い衣の兵団は、それを敗走とみなし、逃がすものかと紅い衣の兵団を追って駆け始めた。
紅い兵団は崖に囲まれた森の一本道をひたすら走っていく。
蒼い兵団も負けじとそれを追いかけた。
崖と森が途切れる。
その先は幾多の戦火で荒れ地となった荒野が広がる。
紅い兵団はその荒野を一目散に走っていく。
蒼い兵団はその後に続いて行った。
そして、紅い兵団がある場所を避けるように走り去っていった。
その場所には人が立っていた。
その男は赤い服を着て、赤茶けた髪を後ろで一つに縛っていた。
ニヤリとその男が笑う。
「いらっしゃい」
その途端、蒼い兵団を取り囲むように、炎の円陣が出現した。
あちらこちらで炎に撒かれたのか悲鳴が上がる。
「ほ、炎?!」
「いきなりなんだ?!」
「まさか…」
蒼い兵団の指揮官らしき男が呟いた。
「これほどの規模の炎の円陣を敷けるのは…」
赤い服を着た戦場の死神。
「レオナルド・ラオシャス! 紅蓮の牙と呼ばれるあやつしかいない!」
炎の円陣がゆっくりと狭まっていく。
「後に続いていたはずの魔導士たちの姿が見えません!」
「なんだと?!」
どこかで足止めをくっているのか、はたまたすでに…。
「まんまと罠にはまったか…」
そして炎はすべてを飲み込んでいった。