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総体開始

 毎日、練習した。ラケットとボールを通じて相手の心の内が分かるくらい打ち合った。相手の鼓動が、ボールを打てば分かる。そこまで高め合えた気がした。


 だが、ここはどこの学校にとってもアウェー。大きな体育館の明るいライトに圧倒されそうである。総体の会場なので2年生は経験済みだが、1年は今までここまで言葉すら出ていない。それほど、緊張しているのだ。しかも、ほとんど対戦したことのない相手ばかり。多少の情報はあっても、相手の心の内なんてボール越しでも分からない。


 夏浜中学校の含まれる地区では、夏浜中のある太刀田(たちだ)市、隣の本長(ほんちょう)市の2市にある13の中学校が大会に参加する。男子では3チーム県大会に出場でき、本長西、本長中央のレベルがずば抜けているので毎年のように県大会出場、残りのチームのレベルはほとんど変わらないので、最後の1チームは毎年変わる。

 だが、今年は本長中央が人数不足で団体戦に出場できない。幾度とない大チャンス。どのチームも躍起になって2つの枠を狙っている。

 個人戦では、本長中央と本長西の選手が県大会に出場することが確実、他はやってみないと分からないといった感じである。


 夏浜中の試合の時間が迫ってきた。

 最初に、女子団体戦。さえりを先頭に、女子の部員が台に近付く。礼をした。ついに戦いは始まった。

 相手は、同じ太刀田市の河藁町(かわらまち)中。夏浜中の女子は5人しかいないため、相手の1番手は不戦勝。つまり、1回しか負けられないのだ。

 2番手のさえりは、一進一退の打ち合いを繰り広げていた。現在4セット目。このセットを取ればさえりの勝利だ。だが、相手の猛攻を喰らい現在10対9。あと1点が入らない。

 ふっ、と高いボールが上がってくる。相手は苦い顔をした。(来た!こいつを叩けば!!)さえりは、勝利を予感する。ステップバック、ステップイン。スマッシュの基本を思い出しながら、相手の感情、自分の感情を丸ごとコートに叩きつける。さえりの予感は、確信に変わる。

「「行っっけーーー!」」

観客席で応援している男子も、声をあげる。

 何かが聞こえた。バン!という短い音と、聞き覚えのある声が喜びを炸裂させる。まず1勝。

 息つく間もなく、3番手のダブルスの試合が始まる。夢々子と見夜のペアで、見夜は左利きなのでダブルスにおいては有利と考えられてこのペアになった。

 これもまた熱戦に。2対2で最終セット。1年とは思えない下回転サーブが武器の夢々子がサーブを出し、そこから見夜がドライブをかけてつなげるというのが女子ダブルスの戦い方。

 相手は徐々にスマッシュを打つようになってきた。押され気味の展開になってきたところで、龍山先生がタイムをかける。

 「島護。時間だ。下に行くぞ。」

日村先生から声がかかる。男子の試合が、女子の試合が終わる前に始まってしまう。女子が勝つことを祈りながら、下へ下りていった。

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