右腕の痛み
練習が再開されて1週間。田沢湖はついに松葉杖生活から卒業した。ただし、卓球するときはサポーターで固めているので動きづらい。
スマッシュを打ったとき、右腕に違和感があった。ブロックで返ってきた球を打ち返そうとした瞬間、ブラックバルサが田沢湖の手から落ちた。激痛が田沢湖の右腕を駆け抜ける。田沢湖は、右腕を抑えて崩れ落ちた。
「田沢湖さん、どうしたんですか!?」
夢々子が声をあげる。何事だ、と人が集まってくる。
「大丈夫か、おい?」
今日太郎が聞いてくる。
「急に右腕痛くなって…。なんだ、これ…。」
「先生呼んでくるけど問題ないよな?」
島護が聞く。
「頼む…。」
大げさにも、たかが右腕なのに救急搬送された。言いづらかったので言っていなかったのだが、実は救急車の中で既に痛みは引いていたのだ。
医者に診断された結果…。
「えぇ、その…。特に原因が考えられないんですねぇ。本当に、崩れ落ちるほどの痛みだったんですか?」
「はい。」
「とりあえず、様子見てください。また痛みが来るようでしたら、また来てください。」
「…はい。」
こうして、あっけなく病院から帰された。
2週間後。定期検査で病院に行った時、またあの痛みが来た。(なんで…!?またか…。)
医者に呼ばれたときも、まだ痛みが続いていた。すぐに右腕のレントゲンを撮る。
「うーん…。しいて言えば骨を固定しているボルトがほんの少し、ほんとに少しだけずれてることくらいしか分からないですねぇ…。けど、痛みを催すほどじゃ…。」
「そうなんですか…。」
「念のため…ボルトの取り出し手術を早めますか?」
「どうする、母さん?」
「そうだね…。念のため、そうしよう。」
「では、そういう方向で話を進めますね。」
次の日、学校に行くと例の特番の詳細が書かれた紙が配られた。『詳細 収録日時:3月25日(日)午後3時~5時(予定) 場所:本長駅前ビューティフルホテル・7階談話室 インタビュアー:氷河岸久美 ………』
「この日なら、問題ないね。」
「そうなんですか。よかったです。」
「あ、そういえば言わなきゃいけないことあったんだ。」
皆が一斉に田沢湖の方を見る。
「僕、今週末入院するから。」
「「えっ!!?」」
「いやいやそんな驚くなよ…。」
「な、なんでですか?ていうか、どこ悪いんですか?」
夢々子が聞く。
「右腕痛くて搬送ばれたことあったろ。あのあとまた痛くなったから、原因が分かんないんだけど念のためここのボルトの取り出し手術を早めることになったんだ。」
「そうなんですか…。」
「ちゃんと治してくださいね!今年で最後なんですからぁ。」
「わかってるよ。ちゃんと治すから。」
手術の日が近くなってきた。先生にもちゃんと伝えた。予定では4日間の入院だから、大して授業に遅れることも無いだろう。そして、田沢湖は入院した。