入院生活~最初の日曜日・驚き~
じいちゃん達も帰ったし、1日の振り返りでもするか…。見夜は元気そうだったし、色々話せたし。まぁよかったね。て、良くなくね?さえりにどう伝えるの?見夜と僕の距離縮まったけど、僕さえりと付き合ってるんだよね?さえりから何言われるんだろ…。2人とも一気に好きになるって、なんかマズくね?ま、その辺は後々考えよう…。
「失礼します。お見舞いの方が来ておりますが…。」
「あ、はい。」
誰だろ?来る人はもう来たけど?カーテンを開けて、僕は驚いた。予想外の人が来たのだ。しかも2人揃って。
「さ、ささささ、さふぇるぃ!?くぃ、き、きるぅまで!?な、な、なんで!?」
「田沢湖、口回ってないよ?」
「なんでそんなに驚いてんですかぁ?」
いやだってさえりの事をたった今考えてたし…。
「いやそりゃ驚くよ。紀友だけならまだしも、まさかさえりに会えるとは…。現実で会うの半年ぶりだね。…て、おいおい…。」
いきなり抱きついてきた。懐かしい。さえりの匂いがする。
「ほんとに心配したんだよ…。意識不明とか言ってたし…。」
「はは。もう大丈夫だよ。何度か三途の川渡りかけたらしいけどね。」
「実はね、後輩達全員と会ってんだよ。ったく、どうやら不安煽るようなことばっか言ってたらしいじゃん。」
「仕方ないだろ…。脇腹に鉄骨刺さってるなんて最悪な状況で。」
「でも、かっこよかったってね。見夜ちゃん守って右腕折ったんでしょ?紀友ちゃんも守られたんだってね。」
「あれはほんとに感謝してますよぉ。田沢湖さん守ってなかったら私今ごろ丸焦げですから。」
「まぁ、そうだな…。なんか、迷惑かけたようでほんとごめん。」
「ほんっと不安だったんだから…。でも、生きててありがとう。」
「あぁ。ほんとよかったよ。…というか、お前らどうして一緒に来たの?」
「まぁ、あっちに行ってもここのことがどうしても気になるんだよ。だから、今は学校から許可もらって2週間くらいこっちに戻ってきてる。んで、父親の親友が入院してるから、あたしもついてきたってこと。せっかく来たんだし、見夜ちゃんと田沢湖にも顔見せようと思ったら、途中で紀友ちゃんにばったり会って、それで一緒に行動してるってわけ。ちなみに見夜ちゃんにはもう会ったよ。」
「なるほどね。」
「ところで田沢湖、抱きついた時に気づいたんだけど…なんで服の胸のあたりに濡れた跡があるの?しかも、田沢湖のとは思えない長い黒髪が1本ついてるんだけど…誰かに泣き付かれた?」
な、なに!?た、多分、見夜に抱きつかれた時のが付いてるんだ…。そうだ、その件話さないとと思ってたんだ。この際、全部言っちゃおう。
「えっとね、今日、というかついさっき、見夜の病室に行ったんだ。そしたら、見夜から「私の全てを預けてもいいですか」と言われた。」
さえりは落ち着いているが、紀友が「ぎょっ」という顔で固まっている。
「で、どう答えたの?」
「僕にはさえりがいるけど、とは言った。けれど、「気にしない」と。だから、えぇと、まぁ、そういうこと。」
「そっか…。まぁ、私も気にしないよ。」
「なら良かったよ。あの雰囲気で断るのは難しいからね。」
「しかしねぇ…。田沢湖もモテるね。」
「…そうなのか?」
「さあて、紀友ちゃんどうする?」
「へ、へぇぇぇ!?」
「あたしは本当に気にしないよ。田沢湖の周りに何人女子が集まっても。」
「うぅ…では心を決めましたぁ!さえりさん、背中を押してくれてありがとうございます!」
「…ちょっと待て。どういう話になってんの今?」
「簡単に言うとね、紀友ちゃんが田沢湖に話あるって。」
「…わかった。で、何?」
「私は、…田沢湖さんに惚れました守ってもらえて嬉しかったです正直言ってだからなんとなく恋人っぽい感じになりませんか?」
すごい早口で言い終えた後、顔を真っ赤にして僕を見つめる紀友。えっと、どう答えようかな…。
「僕はいいよ。んで、同じようなこと繰り返すけど、僕にはさえりも見夜もいるけど、いいか?」
「恋したので恋人っぽくなりたいので気にしません!」
「そっか、じゃあ、恋人っぽくなろうか。」
「ありがとうございますぅ!」
あの後、もう10分くらい2人と話した。そして、2人は帰っていった。1日で2人から告白(?)をされて、しかも恋人と再会するとか。どんな1日なんだよ…。つうか、この状態をハーレムと言うのか?だとしたら、吹部から流されてた噂否定できないじゃん。まぁ、なんとかなるか。あー、そう言えばクラスの皆どうしてるかな…。凌祐とも話したいし。担任の『紅の白髪』はどう思ってんだろうね。ま、ちゃんとリハビリすればいずれ会えるか。それまで待とう。
あー、なんか疲れた…。