5日目の救出
「…おはようございます。午前8時、情報番組『ドッサリ!!』の時間です。えー、今日は内容を一部変更してお送りします。まず、速報です。えー、6日に春畑県で起き、菊山県など隣県にも大きな被害を出した地震について、安否不明者の捜索に大きな進展がありました。」
ん…?『ドッサリ!!』の始まる時間…。てことは今8時か…。僕の思考はここで止まる。そしてまた意識を失う。
「春畑県太刀田市の夏浜中学校で、余震で倒壊した体育館に閉じ込められていた中学生5人の救出作業の準備が今朝完了したとのことです。さらに、救出作業を今日午前10時から開始するという発表がありました。Japan TVではヘリコプターを現地に飛ばし、中継をする予定であります。…さて、喜ばしいニュースが入ってきましたね。………」
「やったーーーー!!」
夢々子が心の底から喜んでいるような声をあげる。
「私達、これで出られるよ…。ほんとに嬉しい…。」
みいさも心の底から安心しているようだ。ただ1人、見夜が不安そうにしている。
「田沢湖さんが…揺さぶっても起きないんだけど…。」
明らかに動揺した声で言う。
「田沢湖さん?起きてくださいよ。私達ここから出られますよ!」
夢々子が声をかける。だが、田沢湖からの反応は無い。
午前9時半。クレーン車が動き出す。轟音の中、僕は目を開けた。
「田沢湖さん!」
見夜が声をあげる。全員がこっちを見る。
「何が…起きているんだ…?」
「私達ここから出られるんですよ!今朝、『ドッサリ!!』で速報でやってましたよ!」
「そう、か…。それは…良かった…。」
声を出すのも一苦労だ。
「ちゃんと生きてガレキの中から出てって下さいね!?」
みいさが釘を刺すように言う。
「わかってるよ…。」
正直言って自信は無いんだが…。
「ただいまよりー、救出作業をー、開始しまーす!!A隊準備!!」
「クレーン車、工作開始!」
威勢のいい声が響く。僕は半分意識が無い。生きて出れるだろうか…。ヘリコプターの旋回の音が聞こえてきた。
「1名確認!!救助!!生存確認!!」
誰だろ…、紀友かな。とりあえず、無事だし良かった。
ガレキの撤去には時間がかかるようだ。かなり時間が経ってから、夢々子の救助が始まった。
「1名確認!!救助完了!!生存確認!!」
「もう1名確認!!生存!!これより救助開始します!!」
「よーし、完了!!あと2人だ!!」
あとは僕と見夜か…。頭が痛い…。血が出尽くしている感じがする。
「見夜。足の具合はどうだ?」
「それはかなり痛いですよ。でも、もう…慣れたっていうか…。」
「そうか。ちゃんと治せよ。」
「そりゃ絶対治しますよ!だって…もう一度卓球したいです…田沢湖さん…と。」
頭の痛みが限界だ。さっきより血の勢いが強くなってる気がするし。
「嬉しいよ…。ありがとう…。」
声がかすれかすれになって出てくる。
「僕も…出来るだけ頑張るから…な。」
「…田沢湖さん?…田沢湖さん!田沢湖さん!!」
田沢湖は目を閉じ、動かなかった。声を発することも無かった。
「田沢湖さん!田沢湖さん!!」
見夜の声が現場に響きわたる。
「誰かいるんだな!!すぐに助けに向かうから、待ってろ!!」
救助隊の声が聞こえる。
「2名確認!!1人負傷、1人意識不明!!」
救助隊の報告が冬空に響く。2台のヘリコプターのうち1台が急降下して2人を乗せた。もう1台のヘリコプターは大きなカメラを機内に収めてから、やがて大きく旋回してどこかへ飛び去った。




