表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/45

2つの合宿~夜~forダブルス大会

………………

 夏浜中の試合は、午後3時からだった。全県レベルの大会だけあって、紀友&夢々子ペア、見夜&みいさペア共に打たれまくっての大敗だった。合宿施設内の食堂でカレーライスの夕食をとった後、軽くミーティング。

「えー、まず、レベル高いべ?これが全県のレベルだ。いい経験になったと思うので、これからも自分の課題見つけて練習に励もう、という事だ。あと、明日の事です。とりあえず今日はここに泊まって、明日の朝になったら食堂で朝食。ここまではいいべ?んで、その後は部屋片付けたら9時15分にロビーに集合。いいな?」

「「はい!」」

「まず、今夜はゆっくり疲れ取れ。以上。」

 ミーティングを終え、割り当てられた時間に風呂に入る。一番最後に風呂から上がった見夜が部屋に入ると、紀友がバスタオルを被って踊っていた。

「どじょうすくい~♪」

「な、何してんの…?」

「ん?踊ってんのぉ♪」

夢々子が笑い死にそうな感じで腹を抱えて座っている。

「なんか、いきなりっ…ば…バスタオル被っ…被って、踊り出して…めっちゃ面白い!!」

普段結んでいる髪をほどいたみいさも、笑い転げている。唯一冷静な見夜も、徐々に笑いに侵されていく。

「出目金を食べちゃうぞぉ~、にょろっ。」

「だから出目金って言うな!!」

「ぱくっ。こちょこちょこちょぉ~♪」

「くははははははは、キャッ、あわははははははははははは。」

夢々子、脇腹をくすぐられて完全崩壊。ギリギリ冷静さを保てている見夜が、頭の片隅でふと考える。(男子って、こうやって女子がじゃれあってる状態とかをどんな目で見るんだろ…。田沢湖さんとかも、やっぱりこういう光景には何か感じたりするのかな…。)

 

 龍山先生が入ってきて、消灯を告げる。もう、夜10時だ。こうやって皆でいる夜は、明かりが消えても寝られないものである。こういう時にする話の代表例が『恋話』である。

「ねぇねぇ、皆起きてる?」

夢々子が聞いてくる。

「うん。」

「起きてるよ。」

「もっちろぉん♪」

「何か話さない?寝れないし。」

「いいね。」

「話題ある?」

「うーん…無いなぁ…。」

少しの間沈黙。すると、夢々子が唐突に話題を出してきた。

「じゃあ、試しに聞くけど、2年男子で一番モテそうなのは?」

皆が笑う。みいさが笑いつつもひどいことを言う。

「顔だけでいえば島護さんじゃね?けど、あいつは絶対ダメでしょ。」

見夜も賛同する。

「うん。絶対ない。だって頭悪いしなんかいちいちウザイしさ。」

「今日太郎さんは?」

紀友が聞く。即座に夢々子が答える。

「それも無くね?なんか、その…無駄な一言が多いっつうか…。」

「あぁ、わかる。島護とはまた違うウザさっていうか…。」

「あれ、見夜ちゃん今呼び捨てしたくね?」

「あぁ!でも、どうせ本人達いないしいいでしょ。」

「んー、由斗さんは?」

「あの人単純に怖くね?」

「確かに。」

「凶暴一匹狼って感じだよね。」

「その例えめっちゃぴったりじゃん!」

夢々子が爆笑する。爆笑が終わると、見夜が話し出した。

「そう言えば、田沢湖さんってモテるのかな…。」

紀友が、その質問に答える。

「皆、これから言うこと全部秘密にできる?」

皆がうなずく。

「田沢湖さんが他人からモテるかどうかは知らないけど、田沢湖さんに好きな人はいると思うよ。」

「えぇ…。」

「そんなこと言ってたね…。」

「…。」

「あ。どうせならさぁ、皆好きな人言っちゃわない?」

紀友以外の全員の表情が固くなる。それを察して、紀友がしゃべる。

「とりあえず、好きな人いる人ぉー。」

紀友以外の全員が手をあげる。

「あれ、紀友ちゃんはいないの?」

「うーん、よくわかんない。多分いないよぉ。」

夢々子が、覚悟を決めた顔で言い放つ。

「全員、好きな人の名前と好きになった理由言ってこ?どうせこの話は秘密なんだし。」

「え、マジで?」

「うーん…まぁ、いいよ。」

この時点では、誰も想像していなかった。全員好きな人が同じだという衝撃の事実を。

 「じゃあ、言い出しっぺなんだし私から。」

夢々子が語り出す。

「んと…4月の代表委員会の時に、私時間に遅れそうになって、ものすごい勢いで教室に入ったわけ。扉開けて駆け込もうとしたら、目の前にイスが大量に積まれてあって、その中に突っ込んじゃった。イスに埋もれて身動き取れなくなってたら、真っ先にイス寄せて手を差し出して立たせてくれた人がいた。そして、今その人と同じ部にいる。これほど幸せな事はないと思う。私は、田沢湖さんが好きです。はい、以上。」

明らかに動揺しているのが、見夜とみいさだった。

「次は誰?」

「じゃあ、私が言うよ…。」

みいさが口を開いた。

「とりあえず結論から言っちゃうと、実は私も田沢湖さんが好きなんだ。何て言うんだろ…特に好きになったきっかけは無いんだけど、一緒に練習したり話したりしてるうちに、いい人だな、て思い出して。今まで話したことある男子の中で一番優しい人だと思った。んで、いつの間にか好きになってた。そういうこと。」

夢々子が口を半開きにしている。見夜は、驚きで震えているようにも見える。

「じゃ、じゃあ…次、見夜ちゃん。」

「う、うん…。えぇっと…その…私は…私も実は…田沢湖さん…なんだ。総体の時に、ダブルスしてて苦戦してたら、声掛けてくれたじゃん。あれで、「あぁ、いい人だな。」て。その頃からなんとなく意識してたのかな。けど、本当に心の底から惚れたのが、島護さんからホウキ投げつけられたとき。あの時に、「守ってやるのが先輩の義務だ」て言われて、本当に守ってほしいな、て思った。だから、田沢湖さんが好きなんだ。」

しばらく、沈黙が流れる。

「…そっか。皆同じ人好きなんだ。」

夢々子がつぶやくように言う。そのつぶやきもやがて夜闇に吸い込まれ、全員目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ