2つの合宿~夜~forリーダー育成会
長ったらしい講話やら面倒臭い行事やらも終わり、夕飯も食べ終わって宿泊する部屋で一休みする田沢湖。凌祐も疲れた顔をしていて、布団に転がる。
「あぁ…疲れた…。」
「風呂終わったら今度は変なゲーム的なものするのか…。」
「『他校のリーダー候補との親睦を深め、自校に生かそう』か。もう親睦は深まってるっつの。」
「お前の場合は、な…。」
田沢湖は、既に他校の生徒と親しげに話すようになっていた。凌祐はそんな田沢湖に驚きつつも、自分も少しは会話を交わすようになっていた。
「そろそろ風呂じゃね?」
誰かが言う。
「んじゃ、行くか。」
男子がぞろぞろと部屋から出ていき、風呂へ向かう。
夜になった。こうやって人が集まって寝る夜は、どうしても寝られないもの。そして始まるのがいわゆる「恋話」である。
「おい、皆起きてるかー?」
清等河が聞いてくる。
「俺は起きてる。」
「僕も。」
全員起きていた。
「眠れねぇし、何か話さね?」
「よし、こういう時は例の話しかないだろ?」
すかさず凌祐が言う。
「アレか!」
なんとなく清等河がのってくる。
「アレ、て何?」
田沢湖が聞く。
「俺らは思春期でっせ?こういう時は…」
「「恋話!」」
ほとんどの人がそう言う。
「恋話といったら田沢湖だろ?」
「え!?」
いきなりの無茶ぶりに戸惑う田沢湖。
「お?いい話あんのか?」
「そいつは聞きたいなぁ。」
実は、田沢湖の恋にまつわる話は全て凌祐に話してある。親友だから、さえりとの事まで全て包み隠さずである。吹部から流れた噂も、もちろん話してある。
「さぁて、田沢湖。全て話してもらいましょーう。」
なぜか拍手。泣く泣く、田沢湖は話し始める。今までの恋愛の全てを。
「んじゃ、まずは僕が全部話すことは約束するから、今日聞いた話は誰にも言わないってことを約束してもらえる?」
「そりゃもちろん。」
「ああ。」
「えーとね、小学校から仲が良かった女子Mがいました。中1になると、なんとなくその女子Mが好きなんだな、て思いだしたんだ。んで、中2になってすぐに告白した。」
ふはっ、と凌祐が笑う。田沢湖が睨む。
「ごめんごめん。だってさ、俺は田沢湖の告白の言葉知ってるんだけど、それが直球すぎてさ…。」
「おぉ!」
「マジかよ!?」
「田沢湖、どうやって告ったの?」
「僕は、みす…」
「ん?名前言いかけたくね?」
「みすって誰?」
「まぁ気にしないで。えぇと…僕は女子Mが好きです。僕はお前にしか恋できない…て…言っ…た……んだよあぁもう恥ずかしいなぁ今思ったら!!」
「田沢湖、お前やっぱいい奴だな。ストレートにも程がある。」
「うぅ…。」
恥ずかしさの余り落ち込む田沢湖。それを凌祐は優しく、残酷に慰める。
「まぁまぁ。けれど、この話には続きがあるんだよな、田沢湖?」
こうして、全て話さざるをえない状況に追い込まれ、また田沢湖は話し出す。
「告白したけど、結局今まで通り普通に仲良いだけの関係に落ち着いちゃって。けれど、女子Mには弱味握られた的な感じになっちゃって。だってさ、お前にしか恋できないって言っちゃったんだよ…。だから、常に見張られてる感じで。」
「だがしかし、もう1つ恋心が芽生えてしまったんだろ?」
「マジかよ!」
「恋する男はつらいねぇ。」
「うぅ…。まぁその通りなんだけど、その…同じ部活にいた女子Sが、僕の話をよく聞いてくれたんだよ。その当時、僕は後輩の指導に悩んでて、その悩みの相談とかに乗ってくれたんだ。けれど、女子Sはもっととてつもない事態になってたんだ。だから、僕はそれに関わる相談に乗ってあげたんだ。」
「待て、その『とてつもない事態』て何だ?」
「んと…女子Sの父親の会社が人員整理してて、見事に飛ばされたんだよ、父親が。それで、女子Sとしては引っ越ししたくなかったんだ。で、家族と衝突して女子Sは家を飛び出して、その途中で僕に偶然会ったんだ。それから、一晩中語り明かした。その時に、」
「待て、一晩中!?まさか、一緒に寝ちゃったりとか…したわけ?」
「ん…うん、一応。」
「えぇー!?」
「ま、まま、マジかよ!??!」
「マジかー!」
「た、ただ一緒にいたら寝ちゃっただけだよ!で、でも、その…それで、その時に「守ってあげたいな」て思ったわけ。んで、結局女子Sは転校することになった。だから、出発の前の日に2人で会って、僕が告白しようと思ってさりげなくそういう話切り出したら、あっちから「好き」て…。それで、メールアドレス交換してから別れた。」
「いわゆる遠距離恋愛ってやつだな…。田沢湖、頑張れよ!」
「うん、ありがとう…。」
「この女子Sと遠距離恋愛中って話は、女子Mは知らないんだよな、確か。」
「そうだよ、凌祐。」
「けれど、ここから先がちょっとまずくなって来たんだよな?」
「うん…そうなんだ。2学期になったら、なんか後輩4人に手出したのではという噂が吹部を中心に流れ出して、女子Mにさりげなく問い詰められたんだよ。もちろん、そんな事実は無いから否定したよ。ただ、後輩と女子Mが同じ場所に居合わせてた時、女子Mがポロッとその噂の話しちゃって、僕は必死に誤魔化して逃げた。それが1、2週間前の話かな?そして、今に至る。」
こうして、田沢湖の恋愛の全ては明かされた。話し終わったら、どっと疲れが押し寄せてきた。気付くと、まぶたを閉じていた。




