表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/45

振替休日

 夏中祭が終わった。土日フル登校だったので月火は振替休日である。田沢湖は、チャリでふらふらと住宅街の中の路地を散策していた。

 どれほどこぎ進んだか知らないが、住宅街の外れまで来ていた。(戻るか…。…!!)田沢湖の視線は、1点に集まる。(な、な、…この低燃費主義の時代に、大口径マフラーとGTウイングをひっさげたFD RX-7に出会えるとは…!こんな閑静な住宅街に、爆音を轟かせ滑り込むFD…!!体が痺れるようだ…。)

 なんだかとてもテンションが上がったので、久しぶりに海沿いの国道までチャリをこいでいった。潮の香りが心地よい。

 低めの防音壁に腰掛け、横にしばらく広がっている砂浜を眺めていると、聞き覚えのある声から話しかけられた。みいさと見夜だった。

「あれ、なんで田沢湖さんこんなとこにいるんですか?」

「いや、家いても暇だしどっか出掛けようかな、て思って。ここまで来た。」

「あれ、じゃあもしかしてこれから暇ですか?」

みいさが尋ねてくる。

「あぁ…うん、そうだね。」

(ほんとは帰ってからMAN WITH A MISSIONの新曲聞こうと思ってたけど…。)

「だったら…家…行っても…いいです…か?」

最後の方の声が小さくなって聞き取れず、聞き返す田沢湖。

「これから2人でどこか行こうか、て言ってたんで、田沢湖さんの家行っていいですか?」

「うん…って、えぇ!?」

(待て、僕の家に女子2人あげるだと!??)

「あれ、まずいですか?」

(まずい事有りすぎだよ色々と!男子10人位まとめて家に入れた事はあるけど、女子2人…!?誰かに見られたらどうするの…??)

「田沢湖さん、どうしました?」

見夜が不思議そうに聞いてくる。

「え、あ、いや、別に。うん、来ていいよ。」

(言っちゃったよ!来ていいって言っちゃったよ!!)

 

 こうして、田沢湖は家に女子2人をあげるという事態になった。

「うーわぁ、すごい部屋。」

みいさがそう言うと、見夜も、

「すんごいですね、色々。」

 田沢湖の部屋は、壁一面にラリーカーのポスターが張られており、ベッドの下の空間にはラノベがぎっしり詰まっている。CD立てにはB'z、BOOWY、高橋優、クリープハイプ、MAN WITH A MISSIONなどなど、大量のCDが挟まっている。さらに、事故現場などによく落ちているひび割れたホイールキャップがずらっと並んでいる。

 「そう言えば、田沢湖さん…好きな人って…いますか?」

見夜が唐突にそんなことを聞いてくるので、田沢湖は持っていたCDを取り落としてしまった。

「え!?い、いないよ。」

(表面上は、な…。)

「あの、けど、」

みいさが、不安そうな目で聞いてくる。

「紀友ちゃんから聞いたんですけど、あの合唱のときの伴奏の人いたじゃないですか。あの人のこと、田沢湖さん好きなんじゃないか、ていう話。本当…ですか?」

(あ、魅穂のほうか。魅穂は、その、ええと…。)

「あの人とは、そんな仲じゃないよ。ただ、なんとなく仲良いだけ。」

「そうなんですか。」

そして、2人揃って田沢湖に聞こえないような小声で「よかった…。」とつぶやいた。田沢湖は、なんとなく罪悪感を抱いていた。だって、嘘をついてしまったのだから。


 帰り際、2人からメールアドレスを教えてくださいとお願いされた。田沢湖はもちろん快諾して、自分のを教えた。(アドレス帳はこれで3人目か。そうだ、文化祭も新人戦も終わったし、さえりに久しぶりにメールするか…。)

 さえりからの返信は、10分後位にきた。

{文化祭、夏中でやりたかった!田沢湖の指揮で歌いたかったな…↓とりあえず、総ナメおめでとう!!}

田沢湖も、必ず返信する。最後に、お決まりの一言を沿えて。{いつか、戻ってこいよ!!}

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ