表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/45

午後の部

 午後の部は、演劇部の独壇場である。関わりのない生徒にとっては、とても暇な時間だ。僕的には、たまに吹奏楽部の演奏による劇中歌が入るので、それがあるだけマシかなという感じ。今年の演劇は恋愛ものか…恋愛、か……。『愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない』とか劇中歌だったらいいのにな…。…んな訳ないよな…。


 暇な時間は終わった。会場は、異様な熱気が覆っている。合唱・新聞の順位発表である。

 合唱の表彰は、各学年の優秀賞1クラス、そして最優秀賞がそれ以外のクラスから1つ。それと、特別賞として伴奏者賞1人、指揮者賞1人もある。新聞は合唱の特別賞を除いた表彰と同じ。

 校長による長ったらしい講評が終わり、いざ順位発表…。

「えー、1年優秀賞……3組。」

ぅぉぉぉぉ…、と歓声らしきものが上がる。3組、てことは夢々子と代祐か。さて、次は2年部…。頼む、呼ばれないでくれ…。そうしないと、最優秀賞は獲れない。

「2年優秀賞……1組。」

よし。大丈夫だ。希望はある。希望しかない。

「3年優秀賞…3組。」

わぁぁぁぁぁーーー!!!ものすごい歓声だ。さすが3年生。

「それでは、最優秀賞……。」

うぉぉ!?と期待と不安の入り混じった声が響く。

「…の前に、特別賞ですね。」

あぁぁ…、と落胆と苦笑の混じった声。どうやらこれは夏中祭の表彰の定番のくだりらしい。よく考えたら、あの時の僕はバカだったのかな。魅穂が伴奏だからって、張り切って手をあげた。男子の中では、一番音楽のセンスはある(と思う)。けれど、指揮なんて経験ゼロだ。魅穂から手を取って指揮棒の振り方を教えてもらった、3週間前の昼休み。あれが僕の中の何かを呼び覚ましてくれた。あの優しい手つきを、忘れない。忘れたくない。それ以来、感情をこめて体全体で必死に手を振った。魅穂に誉められた、5日前の放課後。僕の中の竜は、最高潮まで昇っていった。天井を知らずに昇っていき、本番でついに僕の体から飛び出した。魅穂のピアノと絡み合い、最高の形で合唱を終えられた。僕は魅穂の為に、指揮者章を獲るんだ。熱心に指揮を教えてくれて、ここまで高めてくれた魅穂の為に。いつしか恋して破れた、魅穂の為に。バカらしいプライドかも知れないけど、ね…。

「では、伴奏者賞から…伴奏者賞、2年4組、田中魅穂さん。」

おぉ!!さすが魅穂。さて、指揮者賞…、頼むぞ…。

「次に、指揮者賞…2年4組、中崎田沢湖くん。」

よっしゃぁぁ!!わぁぁぁ!と周りからも歓声があがる。嬉しくて、立ち上がって後ろの人とハイタッチ。よし、やった、やったぞぉぉ!魅穂、ありがとう、本当に、ありがとう…。やべぇ、なんか涙出そう。途中で、先に呼ばれた魅穂に追い付く。

「あーれぇ?泣いてない?」

「泣いては…ないよ。けど、嬉しいよ…。その…ありがとう。」

「ふふ、あの時と変わってないね。ほんと素直に顔に出るし。こっちこそ、ありがとう。それと、おめでとう。」

小声でささやきあったこの会話が、僕の宝物になった。記憶の中に、きっとずっと残るだろう。

 ステージの上で、最優秀賞の発表を待つ。妙に冷静になった頭が、目の前にずらっと並ぶ新聞を見て感想を述べている。

「では、最優秀賞の発表にいきます。」

お、来たか。頼む、呼ばれて…。

「最優秀賞…2年4組。」

真っ先に3年の席から「ぅええぇぇ?」という驚きの声。それから2年4組の席で歓声が炸裂する。「うおおおおお!!」「ひゃぁぁぁ!!」ステージの上でも、隣の魅穂と笑いあった。これだよ、これを求めてたんだよ、この瞬間を…!!

「次に、新聞コンクール。1年優秀賞…3組。」

おおぉ、とざわめく。

「2年優秀賞…2組。」

ほぉ、2組か…。意外だな。

「3年優秀賞…3組。」

そして、会場のボルテージが上がる。2年4組総ナメを期待する視線、それを阻止しようと願う人達。ついに、発表される。

「では、最優秀賞…2年4組!」

よぁああし!!ふぉおおおおおおお!!きゃぁぁぁ!!様々な歓声が入り乱れ、表現できないような喜びに包まれた。

「良かったね、田沢湖。」

魅穂がささやいてくる。

「あぁ。…最高だ。」

 喜びに浸りながら、3枚の賞状を受け取る。拍手を受ける。僕はその時どんな顔をしていたかはわからない。ただ、4組全員で1つの思いを分かち合えたのは確かだ。…最高だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ