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神様はぼくらに日常を与えん  作者: 岬峠 国歳
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のんびりとした午後

 元気に明るく燦々(さんさん)と地を照らす太陽。ゆったりと風の(おもむ)くまま流れる白い雲。涼やかに流れ心地良い風。ゆらりゆらりと葉と葉が擦れて奏でる木々の合唱。地面に陰る屋根の模様は、どこか風情を感じさせる。

 何より、そんな風景を楽しみながら縁側で飲むお茶は、実に美味い。

「和むねぇ~」

「平和ねぇ」

 隣で一緒にお茶しているのは、幼なじみの夕澄屋(ゆうずみや)鈴良(すずら)。上は白衣(びゃくえ)、下は緋袴(ひばかま)という、想像するに(かた)くない巫女装束を身に(まと)っている。

 そう、巫女なのだ。彼女は。この八卦(はっけ)神社の神主の娘で、巫女さん。

 初めは珍しがって観察してしまうが、慣れればただの服程度に思える、『コスプレ』だ。コスプレ言うなーって、指摘されちゃうんだけどね。

 某県の某市の隅にあるこの町は元々は村だったのだけど、再建だの合併だので町になって前までは賑やかになって喧騒が絶えなかったのだけど、今ではすっかり静かで過ごしやすい所になっている。

 まぁ、ぼくがこっち来たのは半月前の話だから、あんまり知らないのだけど。ほとんどが鈴良に聞いた話だ。

「それにしても、もうすぐ学校か」

「うん。楽しみだね」

「うーん……ぼくとしては、まだこのままのんびりしていたいな。楽しみなのはそうだけど、学校ってどうも苦手で」

 前の学校……というか、中学ではあまりいいと思える思い出がないんだよねぇ~。

「大丈夫。わたしが着いているから。きっと楽しくなるよ」

「それならいいけどね。う~ん……はぁ。風が気持ちいい」

「はは。そうだね。風が気持ちいい」

 もうすぐ高校生。

 ここには桜の木はないけれど、外に出ればたくさんあるからな。強いて言えば、そっちの方が楽しみだ。


「なんじゃ?そちら、日向ぼっこかの?」


 まったりとした時間を気の馴染んだ幼なじみと満喫していると、年端もいかない幼い声が耳に入って来た。老人を連想させる喋り方で。

 見ると、6歳くらいの背の高さをした、女の子が素足で廊下をペタペタさせてながら寄って来た。

 髪は灰色君な淡い栗色で、鈴の付いた赤いリボンで左右留めてある。目は丸っこく大きなつぶらな瞳。服はノースリーブスの白いワンピースで、胸元のリボンがアクセントを付けてかわいらしい。

 さながら、ちょっと変な外人幼女って感じの風貌だな。

「影があるから、日向ぼっこと言うより、涼んでいるだけさ。コトハ」

「ふむ、誠か。ならば(わし)も涼むとするかの」

「おう。そうしろ」

 名はコトハで、ここの同居人だ。歳は当に100は越えているらしく、職業は神様らしい。

 ま、それを信じるかは別として、面白い奴ではある。

「……うむ。なかなかの心地じゃ」

 ぼくの左隣に座り、感想を述べる。

 外に投げたかわいらしい色白い足は地に着かず、パタパタと宙に交互させている。

 ますます子供っぽい。

 サラサラと、長い髪が風によって舞い踊る。

 思わずその小さな頭をなでていた。

「な、なにをするのじゃっ。神の頭を気安く触るなど、無礼千万にも程があるぞ!」

 と言いながらも、目を細めて気持ち良さそうに口元が緩んでいるのは、どこの誰なのだろうか。

「いいなあ、コトハ様。わたしもして欲しいかな」

「そないこと申されても、儂は申しておらん!此奴が勝手にしていることなのじゃ!」

「お前にもしてやるよ」

「わーい♪」

 鈴良の柔らかい髪に触れ、頭を優しくなぞるようにしてなでる。

 女の子の髪は命より大事って言うし、丁寧に扱わないとな。

「おぬしら……言うことを聞けーいっ!」

 今日もまったりと縁側でお茶飲み。

 良きかな、良きかな。

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