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複数アカウント

 キーワードを唱えると、一瞬で視界が変わった。前よりも視点が高くなっているのか見える世界が違って見えるが、自然とソレに違和感がない。先程まで白かった肌が黄色人種のように少し色黒くなっており、腕は少し太くなっていた。下の方に目を向けるとさっきは見えなかった足元が見えた。ちなみに服装はなぜか灰色貫頭衣で腰の辺りを黒い紐で縛っていた。


「なんと。念のために聞くがお主は真智子であってるかの?」


「はい、そうです。」


 リースの問に応える私の声は低い男の声だった。私が天使に望んだチートは文字通りの意味でのキャラクターチェンジ。ネットゲームをしたことがないという人にはあまり馴染みのない言葉かもしれない。


 キャラクターチェンジはCCと略されることが多く、ゲームで複数のキャラを持っておりプレイするキャラをチェンジ、切り替えすることを言う。

 例えばA、Bと複数のキャラを持っていた場合、Aというキャラで遊んでいた(操作していた)が、途中で遊ぶキャラをBというキャラに変えることをCCという。CCをする意味や利点はそのネットゲームにより違うが、キャラごとに特色が違い出来ることが違うので、ゲームをやりこめる範囲が違う。

 RPGだと普段は戦闘中、後ろから味方の援護ばかりしているキャラでは当然前に出て直接戦うには不安がある。そこでもう一人キャラを作っておけば、そのキャラで前に出て戦うことが出来る。前衛職も後衛職もやりたいし、前衛ばっかり後衛ばっかりしているとすぐにあきるという人は多いのではないだろうか? そのためにCCがある。


 私の望んだチートは現実世界ではありえないCC。つまり私は体を複数持っていることになる。とは言っても、どんな体が良いとかそこまでの指定はしていない。天使へは『健康で病弱ではない持病のない男の体がいいです。』としか言っていない。いくらあちらの不手際で死んでしまったので転生してチートをもらえると言っても、あまり我儘を言うのはどうかと私は思った。

 なんとなく、あの苦労していそうな天使へ無茶は言いづらかったというのもあるけれど。まぁ、案の定その程度でいいんですか? とは聞かれたけど。俺Tueeee! がしたいわけでもハーレム・逆ハーレムを作りたいというわけではない。だからCC以外の特別な能力もない健康で病弱ではない持病のない男の体を欲したわけで。それにCCだけでも十分破格なチートだと思う。


 天使から注意点としてどちらかの体が死ねば、当然に死ぬということを言われた。あくまで体が2つあるというだけで、私の生命が2つあるわけではないと。それから怪我をした時は普通に自然治癒はするが、自然治癒するのはあくまでその時使っている体だけで、使っていない体は治らない。使っていない体は常に時が止まっていると考えればいいらしい。経験値共有は多分その例外になるんだと思う。


「珍しい変身系のスキルかの? 持っている者は滅多におらんがいないこともない。雪月花も水原兄弟や水野、扇屋、不破が持っておったのぅ。色々と制限はあるらしいがの。」


 どうやら私のスキルは変身系のスキルと勘違いされたらしい。合ってるといえば合ってるんだけど、2つの体を使い分けているだけだから変身ではないんだけど。変身系のスキルを持っている者は滅多にいないとかいいつつ、雪月花には5人もいるとか。一体どういうチームなのやら。雪月花はチート集団なのかもしれない。


「変身ではないのですが、似たようなスキルだと思います。多分『真智子のギルドカード』は使えないと思います。」


 というより、さっきまで持っていたギルドカードが手元にないんだけど。イベントリというのかな、アイテムはどうやら共有ではないようだ。一旦CCをしてギルドカードを机の上に置いて、もう一度男に戻ってみるとしよう。


「キャラクター・チェンジ」


 キーワードを唱えると一瞬にして視界の高さが変わり、手には桜井真智子と書かれたギルドカードがあった。それを目の前の机の上へ置きCCを行う。先ほどの男の姿へ変わった私は机の上においてある真智子のギルドカードを手にとった。するとカードがすぐに黒ずんでしまい何も読めなくなった。これは一体?


「言い忘れておったが、本人の許可なくギルドカードに触るとカードが黒ずんでしまい何も読めなくなる。そうなると再び本人が触らぬ限り元には戻らん。例外として持ち主が死んでしまった場合、カードは赤く染まるが名前だけは確認出来る。死んでいる冒険者がいればそのギルドカードをギルドへ届け出れば、報酬がでることがある。これは亡くなった冒険者の身内が捜索依頼などを出していた時に限るがのぅ。」


 つまりこのカードは再び真智子になって触らないと中身がわからないままであると。ただの名前が記載されているだけのカードなら、ここまで厳重にカードの保護をしなかったと思う。どういう仕組みでなってるのかは気になるけれど。持ち主の死亡判定まで出来るとは。


「カードが黒ずんでしまったという事は、お主は真智子ではない別人ということじゃの。変身系のスキルを持つもので、変身後ギルドカードが認証されなくなった事など今まで一度もなかったのじゃがのう。実に興味深い。とりあえずその変身後の姿のためにもう1枚ギルドカードを渡すとするかの。」


「ありがとうございます。」


 手に持つ黒ずんだカードを一度机に置き、リースから新しいカードと針を受けとる。

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